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コラム / 元麻布春男のソリッド・ステート・サバイバー 第35回

「Rio PMP300」でMP3問題などについて考えた


1999年1月26日

音楽CDの「ご注意」が変わった理由

 『このCDは,一定期間貸与非許諾商品ですが,この期間経過後も権利者の許諾無く賃貸業に使用すること,個人的な範囲を超える使用目的で複製すること,また,ネットワーク等を通じてこのCDに収録された音を送信できる状態にすることは,著作権法で禁じられています』。

 この一文は,最近購入した音楽CD(「DIVE/坂本真綾」ビクターエンタテインメント,'98年12月19日発売)に書かれていた注意書きを,そのまま抜書きしたものだ。おそらく,このCDに限らず,最近の音楽CDにはみなこの注意書きが加えられているのではないかと思う。もちろん,目新しいのは,「また」以降の節。これがMP3フォーマットのことを指しているのは明らかだ。

 厳密には,MP3がポピュラーになる前から,音楽CD等のデータをネットワーク配信可能にすることはできた(たとえばWaveフォーマットの曲データをそのままサーバに置いておくなど)。ただ,有効な圧縮技術を併用なしには,音のみといえど,かなりかさばるため,あまり現実的ではなかった。MP3という劣化の少ない,それでいて圧縮効率の高いフォーマットが普及したおかげで,上記のような注意文が必要になったというわけだ。

 それはともかく,MP3の利用方法は,当初はPCベースのものに限定されていた。が,ここにきてMP3の専用プレイヤーとでも呼ぶべきものが登場してきている。最初に登場したのが韓国SAEHANの「MPMan」,そして昨年12月にPC業界で馴染みの深いDiamond Multimediaも「Rio PMP300」をリリースした。Rio PMP300は,後発なだけにMPManに比べて価格が低く設定されており,同じ32Mbyteタイプで1万円以上安い。今回,このRio PMP300を試用する機会を得たので,使ってみた感想を書いてみたいと思う。

Rio PMP300写真
Diamond MultimediaのMP3プレーヤー「Rio PMP300」

「Rio PMP300」のフラッシュメモリについて

 Rio PMP300の基本的な使い方は,MP3フォーマットにエンコードされた音楽データファイルを,パラレルポート経由でRioにダウンロードして聞く,というものだ。このために「Rio PMPマネージャ」と呼ばれる専用ソフトが添付されているが,使い方はストレートで,特に迷うところはない。記録できるのは本体のみで32Mbytes,オプションのスマートメディアを利用することで,16Mbytesあるいは32Mbytesの増設が可能だ(基本的には3.3Vのスマートメディアが使える)。

「Rio PMPマネージャ」のスクリーンショット
「Rio PMPマネージャ」のスクリーンショット

 ここで,記録できる音楽の量を「Mbytes」単位で表示するのが,MP3プレイヤーのMP3プレイヤーたる由縁で,エンコード時に設定するBit Rateによって,30分未満しか収録できなかったり,4時間あまりも収録できたりするわけだ。もちろん,Bit Rateを上げれば音質が向上する代わりに,収録可能な時間が減る。

 本体標準内蔵の32Mbytesで音楽CD約1枚分の収録を行うには,Bit Rateをだいたい64Kbps程度に抑えねばならないのだが,この時の音質は,カセットテープよりは良いものの,MDにはちょっと負ける印象を受けた。Bit Rateを128Kbpsまで引き上げると,おおよそMD並の音質になるが,そうすると標準内蔵メモリだけでは30分程度の収録しかできなくなる。

 ではというわけで,メモリを足そうと考えても,現時点で32Mbytesのスマートメディアはまだ発売されていない。また,内蔵メモリとスマートメディアにまたがって曲を収録可能なよう考えられているためか論理フォーマットが独自で,現時点でスマートメディアの最大用途であるデジタルスチルカメラとの互換性はない。

 同時にこのことは,たとえば曲データを収めたスマートメディアを,PCのない場所で交換する,といったスマートメディアのリムーバブル性を生かした使い方を難しくしている。1枚当り容量との相談(いつ64Mbytesタイプのスマートメディアが登場するか)にもなるが,せっかくスマートメディアを使うのだから,内蔵メモリはヤメにしてスマートメディア1本に絞り,出先でPCなしでも曲データの交換を可能になればベターだ。いちいち曲データの交換にノートPCが要るというのは,手軽にメディア交換可能なMDに負ける(SAEHANはIOmegaのClick!を使うようだが)。

 またこれなら,うまくやると一般のスマートメディアリーダーで,曲データのダウンロードが可能になる(エクスプローラで,MP3ファイルをドラッグ&ドロップすることで,曲データのダウンロードができる)。上述したように,RIO PMPマネージャの使い勝手が悪いというわけではないが,たとえば汎用のUSB対応のスマートメディアリーダーが使用可能になれば,ダウンロード時間を短縮することも可能だ。

 45分のCDをMDにコピーするのには必ず45分かかるのに対し,MP3の場合エンコードとダウンロードにかかる時間は,プロセッサやCD-ROMドライブの性能に依存する。逆にいえば,高速なシステムであれば,MDより短時間でデータの転送が完了することもあり得る(一度エンコードし,ハードディスク上にあるデータなら,USBを使うことで,より短時間でデータ転送が終了するハズだが,シチュエーションに応じてBit Rageを可変できるのがMP3の面白さだと考えると,ハードディスクにMP3データをファイルとして貯めこむのはマイナスである)。

 後継機種には,64Mbytesスマートメディアの採用と,USB対応(メディアの論理フォーマット対応を含めて)をお願いしたい。

買ったのは「聴く権利」ではないのか?

 もう1つ,Rioを使ってみて実感したのは,音楽というものの売り方だ。

 現時点で音楽は,CD,カセットテープなど,様々な入れ物に収められたパッケージとして販売されている。だが,冒頭に記したように,著作物として複製や賃貸に制約が設けられていることを考えると,音楽CDは本当に“モノ”なのか,という疑問が生じる。つまり,本当に購入しているのは,音楽を聴く権利なのではないか,ということだ。

 音楽を聴くということに関して,それが「ファイル」という実体のないデジタルデータであろうと,円盤状のポリカーボネートに刻まれたピットの列であろうと,あまり関係がないことはMP3の例を出すまでもなく明らかだ。購入者本人が聴く分には,それがどんなフォーマットであろと,構わないハズである。

 音楽CDだけでなく,ゲーム機のソフトも含め,売られている「ソフト」は,いったいモノなのか2次使用の権利なのか,どうも曖昧なままにしておかれ過ぎた気がする。

 レンタルや中古の問題も,ソフトの種類によって認められたり認められなかったり,というのでは,今後も係争が絶えないだろう(ゲームソフトが映画と同じで,メーカーに流通を管理する頒布権があるというゲーム機メーカーの主張は,「興行」というビジネスが実在しない以上,苦しい気がするが)。

 MP3のようなネットワーク配布可能なフォーマットの登場は,もはやパッケージに頼らずに「ソフト」を流通する仕組みが,音楽の分野にも及んできたことを意味する。CDやビデオも,PCソフトの多くのように,販売するのは「使用権である」と割りきらざるを得ない日(中古やレンダルを管理できる反面,メーカーはメディアコンバート等に責任を持たねばならない)がやってくるのも,そう遠くないような気がする。

元麻布春男氏プロフィール

 “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。


(元麻布春男)




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