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NECとPackard Bellの物語


1999年2月23日

NEC、赤字決算で社長交代

 日本電気は2月19日、平成10年度(平成10年4月〜平成11年3月)の業績予想を大幅に下方修正すると共に、金子社長の引責辞任ならびに後継として西垣専務の社長昇格を発表した。発表によると、平成10年度の売上高(連結ベース)は、4兆7000億円で前年度比マイナス4%、税引前損益も2200億円にのぼる損失が見込まれている。

 この業績予想修正の理由として同社は、昨年秋以降の国内景気の低迷、アジア・中南米の経済危機、急激な円高の進行と並んで、米国子会社であるパッカード・ベルNECに対する抜本的なリストラ策の実行に伴う特別損失(750億円)を挙げている。

 もちろん筆者は日本電気の決算の詳細や、資産状況を語れる専門家ではない。おそらく、それは他の専門家が新聞や経済誌等で解説してくれるハズだ。筆者がつべこべ言うことは何もない。筆者がウーンと唸ってしまうのは、今や不肖の息子と化したパッカード・ベルNECについてである。

一時はシェアNo.2だったPackard Bell

 筆者にとってPackard Bellという会社は、今まで1度も製品を購入したことがないという意味で、直接のコンタクトがあった会社ではない。だが、その名前をいつ知ったか、という点ではかなり古い。おそらく1980年代末ではなかったかと思う。

 筆者にとって当時のPackard Bellに対するイメージは、入門者向けに、PC、ディスプレイ、プリンタ、モデム、アプリケーション、さらにはプリンタ用紙までセットして、SOHO向けに販売する会社、というものだ。悪い言い方をすれば、初心者ブランドということになる。

 当時、Compaq、HP、IBMという、現在のPC市場で覇を競う大手ベンダーは、大企業相手に高価で高級なPCを売っていた時代である。こうした大手ベンダーのPCを個人やSOHOが購入しても、ほとんど相手にされない印象が強く、アフターケアも悪かった。ハッキリ言って彼らの眼中に個人客はなかったのである。

 そのような時代だから、とにかく初心者が必要とする可能性のあるものを全部セットにして、それなりの価格(決して市場で最も安い、というわけではないのだが)で販売する、ということには一定の需要があったようだ。同じような商売をするメーカーに、後に韓国の大宇電子に買収され、今は(たぶん)消えてしまったLeading Edgeがあげられる。一種のニッチビジネスとして、彼らの商売は成り立っていたのである。

 その後、Leading Edgeの没落とは対照的に、Packard Bellが市場調査において、シェア上位にランクされる時代が訪れた。1995年前後のことではなかったかと思う。Windows 95やInternetのブームにより、個人やSOHOの市場が急激に立ち上がったにもかかわらず、Compaq、HP、IBMといった大手が、個人やSOHOも重視した路線へ路線変更している最中で、市場に真空地帯が生じていたのである。

 この間隙をついて、Packard Bellのシェアはベスト5どころか、2位にまでなったことがあったように記憶する。どうも、この特別なピークの時期と、NECがワールドワイドのパートナーを探していた時期が、たまたま重なったようだ。絶好調のPackard Bellを見初めてしまったのである。

ValueStar NXやMate NXをなぜPBNECが直販しない?

 だが、元々Packard Bellは、市場シェアとは別に、決してHP、Compaq、IBMと同列に扱われるような超一流ブランドではなかったと思う。ましてや、技術力で知られるメーカーでもなかった。Compaq、HP、IBMといった技術もブランド力もある大手が、本気でコンシューマー市場に取り組むと、たちまち苦戦を強いられることになった。

 1996年に日本電気が出資して以来、パッカード・ベルNECが本体に貢献したこと(黒字を出したこと)は、ほとんどないのではないかと思う。昨年、CEOを解任し、NEC色を強めたものの、まだ赤字から脱却できず、またしても大リストラの対象になっている。

 では、パッカード・ベルNECはどうあるべきなのだろうか。余計なお世話だが、筆者の考えはこうである。まず、国内については、パッカード・ベルの名前を外し、NEC色を前面に押し出す。そして狙うのは、“NECダイレクト”である。せっかく、NECとパッカード・ベルNECで、PCハードウェアの共通化等を図っているのに、現在のようにマシン名が異なっていては、いつまでたってもブランド力が育たない。

 ここは、ValueStar NXやMate NXといった、より馴染みの深いPCを、直販でも売るべきだろう。言っちゃ悪いが「Avanza」なんて、ほとんどの消費者が知らないだろう。それをValueStar並の知名度にするには、ValueStar並の広告を打たなければなるまい。そんな余裕はどこにもないハズだ。パッカード・ベルNECは、ValueStarやMateを直販する会社にするのがベストではないかと思う。

 パッカード・ベルという名前を後退させるのは、海外でも同じだ。確かにPackard Bellという名前は、ある程度の(かなりの?)知名度があるが、それは必ずしもプラスイメージばかりではない。日本に比べNECブランドは浸透していないとはいえ、NECというブランドは、少なくともPC用ディスプレイの世界では一定の知名度とプラスイメージを持っている。こちらを強く押し出したほうが、長期的には良いのではないか、というのが筆者の意見である。

元麻布春男氏プロフィール

 “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。


(元麻布春男)


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