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VIA Technologies,Cyrixを買収へ


1999年7月5日

赤字続きのプロセッサ事業――誰がCyrix製プロセッサを作るのか?

 5月にPC向けプロセッサ事業から撤退し,同事業子会社としてのCyrixを売却すると発表していたNational Semiconductor(NS)は,6月30日,台湾のチップセットベンダーであるVIA Technologies(VIA)との間で,Cyrixの売却に関する基本的な合意に達したと発表した。現時点では,買収金額,買収日時,買収後のCyrixの運営形態などは決まっておらず,詳細は7月中に発表するとされているだけだ。

編集部注……【関連記事】 VIA Technologies Incが米サイリックスを買収することで合意

 特に,買収形態(Cyrixに対する出資のすべてを売却するのか)が明らかにされていないことから,NSは,売却後もCyrixの少数株主として残るのではないか,(そのためにもCyrixはVIAの独立子会社として運営を続ける)とウワサされている。またこれは,NSがCyrixベースのプロセッサコアを用いて,セットトップボックスや,情報家電といった非PC分野向けのプロセッサ(MediaGXやPC On a Chipのような統合化されたものになるだろう)事業を推進する意向を持っていることとも利害が一致する。

 CyrixがVIAに買収されて問題になるのは,誰がCyrix製プロセッサを作るのか,ということだ。VIAはファブレス企業であり,自社で半導体の生産ラインなど持たない。また,現在Cyrix製プロセッサを製造しているメイン州の工場についても,NSは売却の意向を持っている。その場合も,Cyrix同様,NSは少数株主として資本関係を残しておきたい意向だが,まだこちらの方は何も発表されていない。VIAに買収されたCyrixのプロセッサの量産を続ける保証はない。

 もう1つ問題なのは,売却された後のCyrix製プロセッサを誰が作るか,ということだ。Cyrix自身は,Intel互換のプロセッサを製造・販売に必要なIntelのライセンスを持っていない。NSに買収される前は,IBMなどIntelとクロスライセンスを持つ企業に生産を委託していた。Cyrixを買収したNSは,Intelとの間にクロスライセンス契約を持っており,NSが製造する以上問題はなかった。しかし,VIAは互換プロセッサの製造・販売に十分なライセンスを持っているわけではない。ライセンスを持つNSにしても,第3者にライセンスを供与する権利があるとは思えない。VIAが買収した後,どこに生産委託するか,あるいはメイン州のNS工場を誰が買うか,という問題がまた降りかかってくるハズだ。

 だが,何より大きな問題なのは,果たしてCyrixのPC向けプロセッサ事業が事業として成り立つのか,ということだろう。IntelはPCプロセッサ事業に注力することで,世界最大の半導体会社へ上り詰めたし,今も高額の利益を稼ぎ出している。しかし,そのIntelを除くと,どの会社もPC向けプロセッサ事業は軒並み赤字だ。業界2位のAMDでさえもが,巨額の赤字に悩んでいる。NSにしても,PC向けプロセッサ事業が黒字であれば,Cyrixを売却したりはしなかったハズだ。VIAにしても,Cyrixが赤字を垂れ流すようだと,再び問題となるだろう。ある意味,VIAがCyrixの買収に踏み切れたのは,米国で株式を公開しておらず,株主代表訴訟等の恐れがなかったからだとも考えられる。

VIAのメリット――プロセッサを自前で持てば、ロードマップを実現できる

 では,Cyrixの買収はマイナスばかりなのか。決してそうではない。チップセットベンダのVIAは,現行のPC100 SDRAMの駆動クロックを引き上げたPC133 SDRAM,そしてDDRテクノロジを用いたPC266 SDRAMを次世代メモリとして推進しようとしている。チップセットベンダがメモリ技術のロードマップを描くのは自由だが,果たして肝心のプロセッサなしに,ロードマップが成立するだろうか。いくらVIAが,現在のPentium III向けにまずPC133 SDRAMを推進し,その次の年にはPC266 SDRAMへ移行する,というロードマップを描いても,その時にIntelがPentium IIIの次のプロセッサへ移行していては,チップセットのロードマップなど意味を持たない。プロセッサのバスアーキテクチャが違っていては,チップセットを組み合わせることさえ適わないからだ。

 それどころか現実には,次のバステクノロジについて,Intelとライセンス契約の交渉を行なうことからまず始めなければならない。現在のP6バスは,まず最初にPentium Proプロセッサに使われたが,それからサードパーティ製のチップセットが登場するまで,非常に長い時間がかかった。その時間には,開発時間だけでなく,Intelとの交渉時間も含まれているハズだ。

 しかし,VIAが自前のプロセッサを持てば,こうした問題はクリアになる。確かに,先日開かれたComputex Taipeiで展示された最新のCyrix製プロセッサ(Gobi)は,370ピンソケット互換であり,Intelのライセンスを必要とする。だが,チップセットとプロセッサの両方を持つ以上,そして両者の組合せを前提にする以上,バスをIntel互換にすることは必ずしも必要ではない(ビジネスとしてはIntel互換を続けられたら,その方がベターだろうが)。プロセッサとチップセットを揃えることで,ロードマップを自分で描き,それを実現する能力をVIAは手にすることになる。

 もう1つ,VIAにとってのメリットは,より集積度の高い製品の提供が可能になることだ。現在,ローエンド向けには,チップセットのNorth Bridgeにグラフィックス機能を統合することが普及しようとしている。Intelの810がそうだし,VIAのMVP4,VIAがNorth Bridge技術を提供するS3のSavageNBなど,同様な製品が増えつつある。次のステップは,North Bridgeとプロセッサの統合になるだろう。IntelはTimnaという開発コード名で,すでにそうした製品の開発を進めているという。Cyrixを手にすることで,VIAもそうした製品の開発が可能になる。

元麻布春男氏プロフィール

 “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。


(元麻布春男)


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