コラム / 元麻布春男のソリッド・ステート・サバイバー 第91回
フリーウェイ倒産の衝撃!! その背景を考える
2000年6月5日
6月1日,赤い基板のマザーボード等で知られる(株)フリーウェイが,東京地方裁判所に民事再生手続き開始を申請,事実上の倒産となった。負債総額は約50億円だという。
フリーウェイの倒産がある意味衝撃的だったのは,同社がTWOTOPの親会社であるからだ。TWOTOPといえば,PCパーツショップとして,秋葉原でも比較的古い部類に入る。が,それよりTWOTOPといえば,店内の混雑ぶりが有名で,それゆえ筆者など足が向かなくなってしまったほどだ。また,早い時期からインターネット通販に取り組んだことでも知られており,その成功ぶりが,やっかみ半分で語られることも多かった。オリジナルPCのViPシリーズは,ヨドバシカメラでも扱われていたほどで,間違いなく秋葉原サクセスストーリーの主役の1人だと思われていた。それだけに,突然の倒産から受けた衝撃は大きかったと言わざるをえない。
PCブームの恩恵を受けていない“秋葉原のPCショップ”
もう1つ,意外感があるのは,現在わが国が一種のPCブームにあることだろう。平成不況のさなかにあって,PCの販売台数は増加を続けている。報道では,昨年のPCの販売台数は,初めてTVを抜いたのだという。にもかかわらず,ブームになったこの1年以内に店を閉めた秋葉原のPCショップは,TWOTOP以外にも,かなりある。結局,秋葉原のPCショップの多くは,“ブーム”の恩恵を受けていないのである。
現在のブームを支えているのは,おそらく最近1台目のPCを購入しているユーザーなのではないだろうか。こうしたユーザーの多くは,最初からPCを実用の道具と考えており,かつての,たとえばDOS/Vブームを支えたような,ホビー色の強いユーザーとは,PCの使い方も消費行動も異なっているのだと思う。以前のホビー色の強いユーザーは,自分が必要とするかどうかにかかわらず,PCそのものを楽しみ,探求するユーザーであった。
しかし,現在1台目のPCを購入しているユーザーの多くは,最初から特定の目的(おそらくはInternet,ということなのだろう)をもってPCを購入しており,PCそのものや,特定の目的以外の用途にあまり興味を示さないのだと思う。こうしたユーザーが求めるのは,目的を達成可能な上で極力安価なPC(完成品のPC,あるいは大手PCベンダー製のPC)であり,TWOTOPに代表される,PCのパーツを主力とした秋葉原のPCショップには,あまり縁がなさそうだ。
では,最近1台目のPCを購入しているユーザーは,どこでPCを買っているのだろう。もちろん,秋葉原の大型店で購入しているユーザーもいるだろうが,ブームを支えている消費者の多くは,秋葉原以外でPCを購入しているのだと思う。たとえば郊外の駐車場付き大型家電量販店チェーン,あるいは首都圏でいえば新宿や池袋といったターミナル駅の量販店が,ブームの消費を支えている可能性が高い。
郊外型の量販店は,秋葉原より地価が安いというだけでも有利な上,駐車場を持つところが大半だ。PCのような大型商品を購入するのに駐車場の有無は大きい。誰だって,買ったものはすぐにでも持ちかえり試したいのである。秋葉原にも公営の駐車場があるにはあるが,駐車の順番待ちが渋滞を引き起こしている様子は,秋葉原に行ったことのある人ならよくご存知だろう。
ほかにもユーザーの行動が変っていると強く感じるのは,大型店には必ずといってよいほどあるPC関連の雑誌や書籍の売り場に人がいないことだ。もちろん,情報の入手元としてInternetが台頭していることが影響しているのは確実だが,それだけではない減少ぶりを感じる。PCの販売台数が記録を更新し続けているにもかかわらず,雑誌や書籍がこれほど売れないというのは,現在PCを購入しているユーザー層の行動が,昔とは異なっているからに違いない。
PC専門店は苦戦。米国でも同じ傾向が……
以前,たとえ価格で負けても,秋葉原は情報で負けない,という『秋葉原不滅論』が言われたことがあった。情報量ということなら,今も秋葉原が日本で(ひょっとすると世界で)ナンバーワンであることは間違いないと思う。だが,もしユーザーがそうした情報に重きを置かなくなったとしたら,今の秋葉原に何が残るだろう。
もう1つ付け加えなければならないのは,PC専門店の不振,という日本に限らない傾向だ。筆者は米国以外に出かけることはほとんどないため他の国は分からないが,米国でもPC専門店は苦戦している。以前は,全米規模のPC量販店といえば,ComputerCityとCompUSAの2大チェーンがしのぎを削っていた。しかし,ComputerCityの親会社であるTandyは,ComputerCityをCompUSAに売却してしまった。そのCompUSAも最近メキシコ資本に買収されており,決して好調ではない。
米国でのPC量販店の不調の原因としては,必ず通信販売の影響,特にインターネット通販の影響が言われる。筆者はこれを否定するつもりはないが,すべてがそうだとも思わない。全米規模の大型チェーン店で勢いがあるところ,と言われて真っ先に思いつくのはBestBuyだ。また,カリフォルニア地域限定ということなら,Fry's Electronicsも,相変わらず繁盛している。
この2つに共通しているのは,PCも扱う大型総合家電販売店である,ということだ。PCの利幅が薄いのは,何も日本だけの話ではない。ひょっとすると,日本より米国の方がより厳しいと言えるかもしれない(その代り固定費は安いかもしれないが)。PCだけでなく,白物家電からAV機器まで手広く扱う方が,有利という見方もできる。日本でも,郊外を中心に展開するヤマダ電機や家電のコジマ,あるいはターミナル駅中心に出店するヨドバシカメラといったところは,みなPCも扱う大型総合家電販売店だ。PCも商品としてある程度の成熟をみた結果,主役が専門店から大型総合店に移りつつあるのかもしれない。
元麻布春男氏プロフィール
“DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。
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(元麻布春男)
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