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Rambus特許問題を考察する


2000年6月20日

 6月16日,Rambusは東芝と,SDRAM(SDR SDRAM),DDR SDRAM,DDR FCRAM,およびこれらのメモリーと直接接続されるメモリーコントローラーI/Cについて,特許ライセンス契約を締結したと発表した。米国での報道によると,RDRAMのロイヤリティー(製造されるIC1個あたりに支払うライセンス料)が1〜2%であるのに対し,その他のメモリー,特に競合するデバイスであるDDR SDRAMに対するロイヤリティーは,それより明らかに高いという(ちなみにコントローラーI/Cは3〜5%だと報じられている)。

Rambus特許の適用は、メモリーデバイスだけでない

 現在Rambusは,日立製作所に対し,SDR SDRAM,DDR SDRAMおよびにそのインターフェースを用いたチップ(Dream Castに使われているSH4など)が,同社の特許を侵害していると提訴している。東芝がSDR SDRAMやDDR SDRAMに関するロイヤリティーをRambusに支払うことを認めたということは,いわばSDR SDRAMやDDR SDRAMのインターフェースがRambusのものであることを認めたようなもの。裁判に与える影響は大きい(日立は反トラスト法違反で逆提訴しているが)。

 Rambusは,東芝と締結したのと同じようなライセンス契約を5〜10社との間で話し合っているとしているが,同社の特許はメモリー,ならびにコントローラーを広くカバーするものと言われており,SDR/DDR SDRAM,RDRAMといったメモリーデバイスだけでなく,チップセット,グラフィックスチップなど,すべてが特許の対象になる。現時点では,ライセンス契約に同意したのは東芝だけであり,日立との特許紛争に決着がついたわけではないが,もし他社も東芝同様ライセンス契約が必要になるとすれば,DDR SDRAM陣営が言っていた,「ライセンスが必要なRDRAM,ライセンスフリーのDDR」という図式は崩れることになる。

 ではライセンス契約が必要になることでDDR技術を用いたチップセットやグラフィックス,DDR SDRAMの価格は上がるのだろうか。影響が全くないとは言わないが,それほど大きなものではないかもしれない。というより今回のニュースで分かったことの1つは,RIMMが高いのはロイヤリティーのせいではない,ということだ。現在RIMMの価格は,128MBで4万円前後(PC800 ECCなし)。PC100 SDRAMの4倍近い価格になっている。しかし,ロイヤリティーが1〜2%に過ぎないということは,ロイヤリティーがRIMM高値の直接の要因でないことは明らかだ。では何が価格を決めるのかというと,おそらく市場,ということになるのだろう。

 ライセンス料,ロイヤリティー,歩留まりなど,コストに影響する要因は数多いが,コストと価格に直接の関係はない,というのがDRAM価格(というより半導体価格)の特徴だ(コストは価格を決める1つの要因ではあるだろうが)。もしRambusより高いロイヤリティーが必要になるとしても,SDR SDRAMの価格がRDRAM並みになる(300%のロイヤリティー)とは到底考えられない。また,現在のDDR SDRAMを搭載したグラフィックスカードの価格を考えれば,ライセンス契約をしても,なおDDR SDRAMの方が安価でおかしくない。

東芝がライセンス契約に先陣を切った理由は?

 ここで見方を変えて,なぜ東芝は先頭を切ってRambusとSDRAMに関するライセンス契約を結んだのだろう。現在,東芝のDRAM市場シェアは,6位前後といわれている(三星電子,現代電子,Micronの3強をInfineonが猛烈に追い上げていて,それに続くのがNECで,東芝はその後だと言われている)。しかも,DRAMに対する設備投資にはそれほど積極的ではないとも言われている。その一方で,東芝は比較的早い時期からのRambusライセンシーであり,Play Station 2にメモリーを提供しているのは同社だと言われている。

 このあたりを詮索しても,すべては推定に過ぎないので,もう少し現実的なことを考えよう。一番,分かりやすい理由は,需要があるから,ということだ。現在,Intel以外のチップセット,ほとんどすべてのグラフィックスチップは,DDR SDRAMでデザインインが進んでいる。少なくとも筆者は,Direct RDRAMを使ったグラフィックスチップの話など聞いたことがない(過去のプロダクトであるLagunaやMPACT等は除く)。こうしたチップがDDR SDRAMを必要とする限り,DDR SDRAMには市場がある,というわけだ。

 仮にDDR SDRAMにロイヤリティー(それもRDRAMより高率の)が生じるとしても,なおDDR SDRAMにはRDRAMよりDRAMメーカーにとって有利な点がある。それは,メモリーチップのデザインが自由になる,ということだ。RDRAMにはRambusインターフェースをつかさどるRambus ASIC Cell(RAC)という部分が存在する。RACはRambusがデザインするものであり,原則的にDRAMメーカーは手を出すことができない(これにより,相互接続性を保証する,というのがRambusのシナリオだったのだが,i820のRIMM本数の騒動を見ていると,ちょっと怪しい気もしてくる)。DDR SDRAMにはRACのようなものは存在しない。

 RACの有無が一番問題になりそうなのは,マスクのシュリンクだ。昔は,DRAMの世代の途中で大幅にマスクに手を入れることはあまりなかったが,最近は同じ製造ルールを用いた同じ世代の間でもダイサイズのシュリンクを図るのが常識化している。というより,積極的なシュリンクなしにはDRAM事業で利益を出したり,生き残るのは難しいとも言われている。しかし,DRAMメーカーが手を出せないRACが存在して,DRAMメーカーが自分たちの都合でシュリンクできるのだろうか。1〜2%のロイヤリティーより,この方が大きな問題かもしれない。

 いずれにせよ,すべての同期型メモリーはRambusのもの,ということになってしまうのか,他社の反応,日立との裁判の行方が注目される。

元麻布春男氏プロフィール

 “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。


(元麻布春男)


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