コラム / 元麻布春男のソリッド・ステート・サバイバー 第93回
日立が和解! Rambus特許問題を考察する(その2)
2000年6月27日
前回,この欄でRambusが東芝との間に,SDRAM,DDR SDRAM,DDR FCRAM,およびこれらのメモリーと直接接続されるメモリーコントローラーICについて,特許ライセンス契約を締結した,という話題を取り上げた。その中で,現在Rambusが日立製作所との間で特許について係争中であることに触れたのだが,6月23日,両者は和解したと発表した。それによると,日立はRambusから特許ライセンスを取得,ライセンス料を支払うとともに,四半期ごとにロイヤリティーをRambusに支払うことが定められているという。ロイヤリティーの料率は公開されていないが,DDR SDRAMおよびDDR SDRAM対応メモリーコントローラーICに関するロイヤリティーは,RDRAMおよびRDRAM対応メモリーコントローラICに関するロイヤリティーよりも,それぞれ高く設定されているとのことだ(SDR SDRAMに関しては,性能的に競合するものではないため,低く設定されているようだ)。
Rambus特許の有効性を必ずしもすべて認めたわけではない日立
そもそも,Rambusが日立を特許侵害訴訟で訴えた背景には,日立がRDRAMの量産に消極的であったことが理由だとされている。しかし,和解を発表したプレスリリースには,日立がRDRAMの量産を行なうことに同意したとは,一言も書かれていない。素直に読む限り,日立はRambusにライセンス料とロイヤリティーを支払って,SDR SDRAMとDDR SDRAMおよびそれらに対応したメモリーコントローラーを内蔵したチップを製造する,としか受け取れない。だが,これは訴訟の本来の狙いとは少し違っているように思える(ひょっとするとSDR SDRAMとDDR SDRAMに関するライセンス付与の条件にRDRAMの量産を義務付けるのは,反トラスト法に触れる可能性があるのかもしれない)。
それはともかく,今回の和解に関して日立は,和解が必ずしもRambusの特許の有効性を認めたものではない,との立場をとっている模様だ。また,今のところメモリー業界4強(Samsung,Hyundai,Micron,Infineon)が,Rambusの特許について最終的にどのような態度にでるかも不明だ。それでも,Synchronous DRAMのインターフェースに関するRambusの特許がかなり強力であることは認めざるを得ないようである。
仮にSDR SDRAMおよびDDR SDRAM,あるいはこれらに対応したメモリーコントローラーに,Rambusの対するライセンス料とロイヤリティーの支払いが不可欠だとすれば,選択肢は,ロイヤリティーが低い代りにRACが必要なRambusか,RACが不要な代りにロイヤリティーが高いDDR SDRAMのどちらか,ということになる。メモリーメーカーにとってはどちらも一長一短,ということなのかもしれないが,RambusとしてはDirect RDRAMのシェアが高まること,特にまだライセンスを取得したものの量産に踏み切っていないメーカーの早急な量産立ち上げを願っているに違いない。
IntelはDirect RDRAMの早期立ち上がりを願うが……
このRambusと同じ願いを想っているのは,Intelだろう。RambusインターフェースにSDRAMを接続するためのMTHに関するマザーボード回収を表明したIntelだが,当初第3四半期にリリースするとしていた新しいMTHの開発をキャンセル,i820/i840チップセットは,事実上Direct RDRAMのみをサポートしたチップセットになってしまった(MTHのキャンセルと,Rambusの特許訴訟戦略がリンクしている,とまで考えるのはうがち過ぎというものだろうが,IntelはRambusにチップセットに関してロイヤリティーを支払うことになるのだろうか?)。
加えて,今年の第4四半期に登場する予定の次世代IA-32プロセッサーであるWillametteも,少なくとも当初は,提供される対応チップセット(Tehama)はDirect RDRAMのみをサポートすると公言されている。当面はハイエンドから投入されていくとしても,Direct RDRAMの価格が下がらなければ,メインストリームへの広がりはあり得ない(あるいはDirect RDRAM以外のメモリーをサポートしたチップセットを投入するか,だが)。
もう1つ忘れてはならないのはローエンド向けに,CPUにメモリーコントローラーやグラフィックス機能まで1チップ化したTimnaだ。これらの機能を持ちながら,現行のCeleronと同じ370ピンソケット(ただしピン互換性はない)にTimnaがおさまる最大の理由は,メモリーインターフェースに16bit幅のDirect Rambusを採用したことにある。ただ,Direct RDRAMの価格が高いため,MTHとセットで販売されることになっていた(上述したMTHのキャンセルにもかかわらず,Timna用には新たに同様な変換チップが開発される予定。これによりTimnaのリリース時期は今年の第4四半期から,来年の第1四半期へとスライドした)。
しかし,できればTimnaもDirect RDRAMに直結した方が良いに決まっている。変換チップ(MTHとは呼ばないらしい)を用いるのは,コスト高になるばかりか,性能にもマイナスであるからだ。特にグラフィックスを統合したTimnaの場合,メモリーSDR SDRAMであるかDirect RDRAMかによって,グラフィックス性能にも影響が出てくるハズ。RDRAMの量産が早期に立ちあがって低価格化し,変換チップが不要になれば,それに越したことはない。
日立が和解の道を選んだことで,SDR,DDRにかかわらずSDRAMインターフェイスも,Rambusの特許が必要な可能性が強まった。果たして4強がどのような対応をとるのか,DDR対応のチップセットやグラフィックスチップを開発中のベンダーがすんなりとライセンス料とロイヤリティーの支払いに応じるのか,ここ2〜3ヵ月中に答えがでるものと思われる。
元麻布春男氏プロフィール
“DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。
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(元麻布春男)
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