コラム / 塩田紳二のMicrosoft Espresso 第30回
MSは正直者か嘘つきか
1999年4月21日
不信を募らせる司法省
マイクロソフトもどうやら、反トラスト法裁判で司法省と和解交渉を持ったようだが、なんと2時間で終了してしまったとか。インテルが数日にわたったことに比べると、どうも最初から躓いていたようである。ひとつには、和解交渉が始まる前からマスコミに情報が漏れていて、政府側はこれをあまりよく思っていなかったという点がある。
インテルとFTCの場合、交渉の最中にニューヨークでは、「独禁法サミット」なるイベントが開かれており、ここにFTCの独占禁止部の長官であるWilliam Bear氏(テニスしながら、インテル和解の話をした例の人)は出席したが、そのときには「独禁法が知的所有権を守るための切り札となる」と主張していたという。政府側は、このように、和解交渉については、秘匿しておいたのだろうが、いつものようにMicrosoft側から和解交渉の件が漏れてしまったのだと思われる。これが相手の態度を硬化させた原因でもあるだろう。
こういう法律に絡む裁判では、違法かそうでないかを争うもので、日本の感覚だと「和解」などありえないが、米国では、和解することで、裁判が長期化することを防ぐなどのメリットを重視するようだ。
しかし、いくら和解交渉でも、現状のままということはありえない。政府側も和解で済ませるのだから、いろいろ条件を受け入れろと迫るに違いない。
今回の裁判も、最初から、マイクロソフトは対決姿勢で、和解交渉をするからといって、これが急に軟化するとはとても思えない。というのは、和解交渉の話が漏れたことや、いままでのさまざまな情報漏洩、そしてビル・ゲイツの言動は基本的に「言行一致」である(その意味では正直なんでしょうね)ことなどから、器用に2つの舌を使い分けるような会社ではないからだ。
マイクロソフトから態度を軟化させたような発言が出ないうちは、「和解」というようなことはありえないかもしれない。
誇張の範囲か嘘か
とはいっても、マイクロソフトに勤めている人皆が正直者でもないようだ。マイクロソフトは、IE5がIE4の3倍以上ダウンロードされ、出荷後5日で100万人を突破したと発表したが、IE4リリース当時、配布後2日で100万人からダウンロードしたと発表していたのである。マイクロソフトのいいわけは、IE4では、ActiveSetup用のモジュールをダウンロードした人を数え、IE5では実際に本体をダウンロードした人を数えたとか。こうした競争があるときには、たしかに多少の誇張が入るのはよくあることだが、3倍ってのは、ちょっと誇張しすぎである。
つまり、いままで言われていたIE4の出荷本数についての話は話半分どころか話1/3だったわけだ。あちこちの調査会社の資料などでIEのシェアが伸びているというものがあったが、これもどうやら割り引いて考える必要はあるかもしれない。
MSのソフトの良さとは……
それで、話題のIE5だが、どうも、IE3からIE4のときに比べるとマイナーチェンジ感が強い。裁判のせいだろうか? なんかおとなしくなった感じ。それで、例によってマイクロソフトが得意な、細かい所の使い勝手を上げた製品になったようだ。マイクロソフト自身は、いろいろ言っているけど、マイクロソフトのソフトの「良さ」って、細かいところにこだわった使い心地にある。
たとえば、Excelで選択枠の右下のハンドルを引っ張ると、セル内容がコピーされる機能など、たしかに見た目はかっこよく、便利は便利。でも、やっていることは単なるセルのコピーでしかない。それまでのソフトでは、カット&ペーストや、コピーコマンドを使ってコピーを作っていた(そういえば昔のExcelやマルチプランには直下のセルにコピーするコマンドがあったような気がする)。それを単にGUI化しただけである。
マイクロソフトがアプリケーションでメジャーになる以前、ほとんどのソフトは、いわば機能が剥きだしというか、荒削りっていうか、使い勝手より、新しい機能や速度を優先していたものが多かった。そこに、細かい使い勝手を持ち込んだのがマイクロソフトである。このExcelだって、表計算の基本的なコンセプトは、VisicorpのVisiCalc(最初の表計算ソフト。Apple ][で動作する)に始まり、Lotus社のLotus 1-2-3がだいたいの機能を完成させていた。
それに対して、グラフ作成が簡単というのが最初の「ウリ」だった(使ったことがあるひとは知っていると思うが、かつてのDOS版1-2-3は、グラフを作るのがものすごく面倒だった。いくつかのパラメーターは、セルに埋め込むため、試行錯誤が面倒だったのである)。マイクロソフトが得意とするのは、後発で、競合ソフトよりも使いやすいソフトを作ることである(あるいは、会社ごと買収して洗練させるとか)。このIE5は、そのマイクロソフトの本領発揮といった感じのソフトであるといえる。
ところで、IE5の特徴でもある「ラジオ」機能だが、これは、Windows Media Playerの機能を使ったもの。なんと、httpサーバーさえあれば(ローカルファイルでもいいが)、ストリーミング配信が可能なことだ(Media Playerが勝手に、バッファリングして再生してくれる)。これを使うと、単にオーディオのファイルをhtml内で指定してやるだけで、ラジオ局ができる(ただし、ほんとうにインターネット内で使うためには、オーディオファイルのほうを転送レートに合わせて調整しておく必要がある。このためのツールは、マイクロソフトのサイトにあるNetShowTools。
もっとも、LAN内で使うなら転送レートを気にする必要はない。うちでは、mp3のファイル(自分で作ったやつです。念のため)とその解説をhtmlにしてローカルのWebサーバーに置いている。家中のどのマシンでも、簡単に音楽が再生できるので、もはや各部屋にオーディオ機器やメディアを別々に置く必要がなくなった。しかも、CDを探す必要もない。便利な世の中になったものです。
塩田紳二氏プロフィール
某“家電の巨人”メーカーでパソコンの開発に携わった後、フリーライターとして独立。ハード、ソフト両面での知識と経験と人間漫才のような企画力で雑誌、単行本、Web Zineで活躍中。
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(塩田紳二)
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