コラム / 塩田紳二のMicrosoft Espresso 第55回
“G4 Cube問題”と“良い会社”
2000年11月6日
やっぱり気になるG4 Cubeのアレ
10月19日(米国時間)アップルコンピュータは、今年の第4四半期の業績を発表した。前年同期と比較して、売上高は40パーセント増だったが、売上総利益率では28.7パーセントから25パーセントに減少した。アップルはこれに先立って、売り上げが予想を下回ることによる利益の減少を警告し、これによってアップル株が一時47パーセントも急落する自体となっていた。この警告の中で同社最高財務責任者フレッド・アンダーソン氏があげている売り上げ不振の理由は3つある。
〔「まず、9月の販売状況が全世界的な景気の失速により、予測に比べ鈍かったことがあげられます。2番目に、通常9月にピークとなる教育市場での需要が予測に比べて低かったことがあります。そして最後に、Power Mac G4 Cubeの販売開始直後の立ち上がりが予想に比べて鈍かったことがあげられます。」〕
注目は、最後の『G4 Cube』の話である。Macintoshユーザーの間では、このG4 Cubeの話題が爆発しているのだとか。話としては2つ。1つは、G4 Cubeの透明な匡体にある“線”の話。もう1つは、G4 Cubeの電源の異常。
G4 Cubeは、透明な直方体の匡体を持ち、多くのユーザーは、そのデザインに引かれて、購入したのだとか(個人的には、業務用の食品が入っている金属製の缶のようにしか見えないのだが)。だが、その透明なプラスティック部分(ポリカーボネート製だという)に“線”が入っており、かなり目立つのだという。しかも、すべての匡体に一様に入っているわけではなく、目立つものと目立たないものがあるらしい。ということもあって、買って箱を開けてみて、がっかりというユーザーが多いらしい。また、なかにはこの線がひどく目立つものがあり、“亀裂”ではないかというユーザーもいるのだとか。
それで、どんなものだが、実際に販売店にいって確かめてみた。よく見ると、G4 Cubeの上部左右にあるネジのような部分から外側へ側面にかけてミゾのようなものがある。また、本体上部手前のCD-ROMのスリットや奥にある排気口のような部分にもミゾの入っているものもあった。手触りからすると、これは、型に材料を流し込んで、両側からやってきた材料がここでぶつかって、本来なら、完全にくっつくはずなのに、液体が固まりはじめているためにムラになっているような感じである。
しかも、これはまっすぐな線ではなく、カーブしていたり(これは確かに亀裂のようにも見える)、本体側面の上のほうだけで止まっている。一番がっかりなのは、CD-ROM部分から手前にかけて入っているミゾで、これは、光線の具合にもよるがかなり目立つ。一般家庭向けの台所などで使う容器類などには透明なものが多い。筆者宅のバター容器の透明なふたがポリカーボネートだったが、こんなミゾは見あたらない。もっとも大きさが違うのだろうが、G4 Cubeは19万8000円もする商品である。それがこんな品質では、たしかにユーザーの落胆もわからないではない。おそらく、これは、コストを下げるために、あまり品質の良くない工場に発注したのだろう。だが、これは次の機種(来年もっと安くしたG4 Cubeが登場するのだとか)にならないと、直らないかもしれない。なぜなら、すぐに直してしまうと、それは結局“製造品質”だったということになってしまい、“製造上生じるもの”ではなくなってしまうからだ。
もう1つは、以前からMacintoshで発生していた“静電気”による障害。電源が勝手に入ったり、切れたりするとか。ひどい機種になると、本体を撫ぜるとアラジンの魔法のランプのように電源がオンオフするという(もしかして新しいユーザーインターフェースか?)。これについては、アップルの対応に腹を立てたユーザーが、G4 CubeをYahooオークションに売り出し、そのQ&A(http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/show/qanda?aID=19120296)がなんか、G4 Cube罵倒大会みたいになって、ちょっとした話題。
その他、アップルのホームページにある、技術情報の交換ページTech ExchangeあたりもこのG4 Cubeの話題で持ちきり。
筆者は、Macintoshユーザーではないので、こうした騒ぎとは無関係だが、こういう話を聞くとなんか「たいへんですねぇ」という感じである。そういえば、NHKのクローズアップ現代(10/18日放送)にマイケル・クライトンが出ていたが、G4 Cube使ってたなぁ。大丈夫なのかしら?
公取委の警告とアップルの対応
さて、こうした話題豊富なアップルだが、『iMac』などの販売で、販売店に圧力をかけたという話で、日本の公正取引委員会の調査が行なわれ、それが終了した。結果は、公取委のサイトにあるのだが、それによれば、
〔本日、アップル社に対し、上記行為はいずれも同法(筆者注 独占禁止法のこと)第19条((1)ア及び(2)の行為は不公正な取引方法第12項第1号〔再販売価格の拘束〕に、(1)イの行為は不公正な取引方法第13項〔拘束条件付取引〕に、それぞれ該当)の規定に違反するおそれがあるものとして、今後、このような行為を行わないよう警告を行った。〕
ということになった。
ところが、これに対するアップルコンピュータのリリースがすごい。なくなっちゃうと大変なので、冒頭部分を引用しておくと、
〔2000年10月3日−アップルは本日、公正取引委員会の調査が終了したことを受け、これを喜ばしく思っています。この調査の終結には、アップルが事業活動を日本の法律を遵守して行っているというわれわれの見解が反映されています。〕
となっている。
“違反するおそれがある”として“警告”されるような企業がどうして“日本の法律を遵守して”いると言えるのでしょう? 広辞苑によれば、遵守とは、“きまり・法律・道理などにしたがい、よく守ること”となっており、すくなくとも“警告”を受けるようなことをする行為をさしてはいない。まあ、外資系企業なので、社員はみんな、日本語を読めないのかもしれないが(失礼)……。
別にMacintoshやその利用者を貶めるつもりはないのだが、ニュースだけを聞いていてもアップルという会社のやり方には首を傾げざるを得ないところが多い。去年の10月にも、Power Mac G4のCPUクロックを出荷前に下げたにもかかわらず、値段を据え置いて、実質上の値上げを行ないユーザーや販売店からの反発を喰らって謝罪した。これについては、アップルのPower Mac G4の発表リリース、スペックの変更のリリースおよび謝罪のリリースを見ていただくと経緯が分かる(なぜか米国アップルサイトでは、謝罪リリースはNot Foundとなっている)。
このとき、ジョブズは、謝罪のリリースで
〔「アップルは、お客さまに感動をもたらそうと努力していますが、もう少しで大切なものを失うところでした。……中略……古くからある格言では、『良い会社でも失敗はあるが、優れた企業は失敗を改める』と言われています」〕
と語ったが、G4 Cubeのミゾは、がっかりで感動もなにもあったものじゃないし、いくら失敗を改めるといっても、こう何度も失敗するんじゃ“良い会社”とはいえないんじゃないかねえ? まあ、よくマイクロソフトも失敗するが、マイクロソフトの失敗でもこうひどくはないと思う。かといってじゃあマイクロソフトが“良い会社”というわけではないが……。
塩田紳二氏プロフィール
某“家電の巨人”メーカーでパソコンの開発に関わった後、フリーライターとして独立。ハード、ソフト両面での知識と経験と人間漫才のような企画力で雑誌、単行本、Web Zineで活躍中。
(塩田紳二)
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