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世の中節電――Pentium 4時代のPentium IIIの価値


2001年4月17日

Pentium 4の値段がどんどん下がる

インテルは、Pentium4普及の速度を速めるようである。当初、Pentium4の普及はゆっくりという話だったが、Pentium4の値段を大きく下げ、急速な普及を促すことにするらしい。

確かにいままでインテルは、新しいアーキテクチャのCPUが出ると、それを急速に切り替えるために、急な値下げなどを行なってきた。もっとも、ライバルがいなければ、ゆっくりとやるのだろうが、最近のAMDのAthlonなどの価格を見るに、あんまり悠長なことも言ってられない状態なのだと思う。

ただ値段を下げるだけなら、会社の経営者でなくとも考えつく話だが、経営者の側から見れば、どうやって利益を確保するのかというめんどうな問題がある。インテルが値段を下げるからには、なんらかの対策がそこにあるわけで、単にライバルの製品が安いからといって、見込みもなしに値段を下げるというのは自殺行為に等しいわけだ。

Pentium 4

Pentium 4の正式発表以前、インテルはPentium IIIはすぐに収束させず、しばらく進化を続けるといったことを言っていた。たしかにいくら急いだところで、製品を作るには時間がかかるし、たとえば、Pentium 4では放熱の問題もあるので、いまのMicroATXマザーを使った、超コンパクトデスクトップマシンなどはすぐには作れそうもない。

では、いったいどういう考えがあって、Pentium 4を急に安くしていくことができたのだろうか? それには、インテルのモバイル版のPentium IIIが大きな意味を持っているような気がする。

確かに、モバイル版のPentium IIIは、同クロックのデスクトップ用Pentium IIIよりも高い。それは、モバイル版にはSpeedStepがあり、さらにコア電圧が低くなっているからではある。

CPUに使われているCMOS半導体は、簡単に言えば、クロックが高くなればなるほど消費電流が大きくなる。このため、コア電圧を下げていかないと、消費電力(つまり電圧×電流。学校で習ったでしょ?)が小さくならない。またもう1つ、電源電圧が高いほど、高いクロックで動きやすくなる特性もある。だから、クロックアップする場合には、電圧設定を高くするとうまくいくわけだ。

ということは、低電圧で高速で動くCPUというのは、普通の電圧ならより高いクロックで動くものになるわけで、だから値段も高いわけだ。

いままで、インテルのモバイルプロセッサは、デスクトッププロセッサと比べるとかなりクロックに差があった。これは、作ることができないというよりも、それよりもデスクトップ用の高クロック製品のほうが優先度が高かったからである。

トランスメタショック!

さて、昨年のトランスメタのCrusoe発表以後、インテルのモバイルプロセッサ戦略も方向転換があった。いままでクロックを上げることを前提としていた方向から、超低電圧版のモバイルプロセッサを開発するという“消費電力重視”の方向に変わったことである。トランスメタの戦略は、インテルの手が薄いこの部分を突いてきた。それが日本メーカーなどの支持を得たので、インテルとしても方向転換せざるを得なかったのである。米国では、ノートパソコンは増えつつあるものの、比率は日本ほど高くない。その市場を見れば、モバイルプロセッサなど、あまり開発費をかけないで製品化したいわけで、それがデスクトップとモバイルプロセッサのクロック差であり、消費電力ではなく、クロック重視の方向だったわけだ。

しかし、状況が変わった。ここに来て超低電圧版のCPUは出るし、クロック差もデスクトップのPentium IIIとほとんど同じ1GHzまで到達している。もっとも、Pentium 4のモバイル版はまだ出ておらず、デスクトップの最大クロックとは多少の開きがあるものの、同じPentium IIIとしてはほとんど差がなくなってしまった。

さらに今年導入される0.13μmプロセスを使って、より低消費電力化を行うというのがPentium IIIの方向なのである。

そこでインテルが考えついたのが、ノートパソコン以外にもモバイル用のプロセッサを使うという方向だ。

モバイルプロセッサで超小型デスクトップを

トランスメタのCrusoeを使ったシン(Thin)サーバーという話があって、それに対抗するかのようにインテルは、モバイル用プロセッサを使うサーバーの仕様である“UltraDense”をIDFで発表している。ある意味これは、モバイル用プロセッサを非モバイル用途に対しても販売するということでもある。

UltraDense Server
IDF 2001 Springで紹介された、Mobile Pentium IIIを搭載したUltaraDense Server

たとえば、デスクトップマシンに使ったとして、放熱がヒートシンクだけでファンなしで済むならば、よりコンパクトな匡体が実現可能だろう。サーバーも全部が全部、高速でなければならないわけではないだろうし、1GHzもあればかなりのことができる。インターネット側で使われるサーバーも、いまはCPU負荷よりも、ネットワークのほうがボトルネックになりやすい状態。そんなわけで、従来デスクトップ用のPentium IIIが持っていたサーバー分野に、小型化や低消費電力という付加価値を付けたうえで売り込むことが可能なわけだ。

Pentium 4が急激に安くなり、FSBが100MHzになったCeleronが850MHzまでクロックが上がった状態では、Pentium IIIの存在価値はあまり無いような気がしたのだが、モバイル用途と低消費電力用途という方向があったわけだ。もちろん、この方向は、トランスメタを抑えるという意味もあるのだろうが、存在のあやふやなPentium IIIのポジジョンをはっきりさせるという意味もある。

折りもおり、カルフォルニアでは電力危機。いままでエナジースターの枠外であったサーバーマシンの消費電力にも敏感な状態ができつつある。それでなくとも、米国は、世界の二酸化炭素放出量の4分の1を1国で出しているのである。ここで環境保護団体が、サーバーの消費電力にでも目を付けて騒ぎ出せば、それほど性能が必要ないサーバーは、低消費電力に向かう可能性も十分ある(もっとも、それでどれだけの効果があるのか疑問だが、こういう騒ぎは得てして根拠なしで大騒ぎになるもの)。インテルはかつて、米Redhatに出資して、Linuxに世間の目を向けさせたが、今度は環境保護団体に巨額の寄付とか、あるいは“地球にやさしい”グリーンPC(って、かつてはやったよね)って提案を始めるとか。そこまではないか……。

塩田紳二氏プロフィール
某“家電の巨人”メーカーでパソコンの開発に関わった後、フリーライターとして独立。ハード、ソフト両面での知識と経験と人間漫才のような企画力で雑誌、単行本、Web Zineで活躍中。

(塩田紳二)


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