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【INTERVIEW】夢はSF映画のコンピューター──日本IBMのウェブ情報活用ツール

2000年09月07日 20時44分更新

文● インタビュー/構成 編集部小林久

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日本アイ・ビー・エム(株)は、同社が8月28日に発表した『ThinkPad i Series 1620』から、Internet Explorer対応のアドインソフト『mySiteOutliner』(マイサイトアウトライナー)のプレインストールを始めた。同ソフトは、同社のユーザー向け会員サービス“Club IBM”の会員向けに無償提供されている。

mySiteOutliner。Internet Explorer 5.1以降のアドインソフトとして動作する

mySiteOutlinerは、“サイトアウトライン”という独自の概念に基づいて開発されたウェブ巡回/検索ソフトだ。あらかじめ指定したサイトを定期的に巡回し、サイト内のテキストやリンク情報の差分を取得。その内容をオフラインで確認できる仕組みになっている。単なる巡回ソフトと異なるのは、何千何百という膨大な数のサイトを検索して、自分の知りたいキーワードの検索が行なえる点だ。たとえば、オークションサイトに自分の欲しい商品が情報されたかの可否や掲示板サイトから自分に関係した情報だけを抽出するといった使い方ができる。

ソフトには、最近急激に増えた語句(ホットワード)や更新頻度など、各サイトの分析を行なう機能も付け加えられており、複数のニュースサイトで、今一番ホットな話題を調べることもできる。ひとりで目を通すことが難しい何百という膨大な数のサイトから、必要な情報だけを引き出せるわけだ。

ASCII24編集部では、製品開発に関わった、同社PS・e事業部 PSe-ビジネス製品企画部長の中垣勝博氏、ソフトウェア開発研究所Webツール第二Webツール開発部次長の中川達氏、ES事業パワー・システムソフトウェア所属の川口佳文氏、東京基礎研究所テキストマイニング ソリューションプロジェクト担当の武田浩一課長にお話を伺うことができた。

見せ方にこだわったウェブ活用ツール

[編集部] 巡回ソフトの一種と考えていいのでしょうか。
[中垣] ちょっと違いますね。このソフトは“見せ方”すなわち“マイニング”に重点を置いたソフトです。巡回したページを見られるのではなく、その中身を引っぱり出す。たとえば、画像の表示はできないんですよ。
[編集部] ジャンル的にはどういうソフトになるんでしょうか。
[中垣] サイトアウトラインという名前がそのままソフトの本質を表しています。ジャンル的には今までにないものだと思います。機能的には“ななめ読み”と“欲しい情報の検索”ができるソフトと考えるとわかりやすいかもしれません。

私は現在135サイトを登録していますが、これをひとつずつ毎日見ていくのは難しい作業です。しかし、mySiteOutlinerを使えば、そのサイト全部を巡回して後から必要な情報だけを取捨選択してくれる。スタートレックでスポックがコンピューターに問いかけるシーンがありますよね。理想はあれに近いんです。キーワードを打ち込むとその意図を汲み取って、即座に答えが帰ってくる。そんなフルオートの情報検索です。

たとえば、私は掲示板サイトを登録して、IBM製品の評価が書かれている部分だけを取ってきています(笑)。サイトからダウンロードするのはテキスト情報のみで、しかも差分だけを取るので通信時間も短くて済みます。100や200のサイトならモデムでやっても5~10分もあれば十分でしょう。
製品企画を担当した中垣勝博氏
[編集部] もともとはサーバー向けの技術だったそうですが。
[武田] 当初はビッグポータルを対象に大和(神奈川県大和市にある同社の東京基礎研究所)で開発した技術でした。株価情報などを定期的に取ってきて、後で処理するといった感じで。ただし、ソフトがデータ自体を加工してしまうため、著作権上の問題が生じてしまいます。商用サイトで公開するには、リンク先のサイトの承認を得たり、自社のサイト内の情報に限定するなどの配慮が必要になる。しかし、コンシューマー向けなら、これらの問題をクリアーできます。
製品の元となるデータマイニング技術の開発に携わった東京基礎研究所の武田浩一氏
[編集部] それに中垣さんが目をつけたわけですね。
[中垣] ええ。'98年ぐらいのIBM総合フェアに出展されていて、何とか日の目を見させられないかと考えたんです。中川と川口は『ホームページビルダー』など、コンシューマー向けウェブ製品を開発する部隊に所属しています。そこで、mySiteOutlineの開発を、ホームページビルダーなど、IBMのウェブアプリケーションを手がけている彼らに持ちかけたんです。巡回エンジンなどは『翻訳の王様』と同じものを使っているはずです。
[編集部] 実際に開発を担当されたお二人が一番苦労したのはどの部分ですか。
[川口] GUIの仕組みが違うのに苦労しましたね。コンシューマー用のアプリケーションでは、サーバーソフトと違って、ボタンを押したらイベントが発生するという具合に新たにデータの流れを考え直さないといけないですから。それから、コアとなるエンジン部分は同じでも、本格的なデータベースを持ってこれないので、簡易版のデータベースを新たに設計しなおさないといけなかった。
製品開発に当たった中川達氏(写真上)と川口佳文氏(写真下)
[中垣] 開発は、モバイル用のDB2持ってきちゃえばとか、勝手なことばっかり言ってましたけど(笑)。
[編集部] 画面は明るくポップな感じですね。
[川口] 最初はIBMブルーの味気ない感じだったんですけどね。
[中垣] それを地味だよ、オレンジにしなよって変えたんです。自社のウェブサイトを見てるのか、ソフトを起動しているのか区別つかないぐらいなら徹底的に派手にしたほうがいいからと。
[中川] GUIのデザインは結局3回ぐらい作り直しましたか……。今回、基本的な部分は大和デザインに頼んだのですが、レイアウトや色合いなどは細かく吟味しました。
[川口] 初心者でも使いやすくするため、操作性にも気を使いましたし、見せ方も力を入れました。せっかく取ってきた情報なんだから、わかりやすく表示させたいですから。
頻出後情報など、取得したテキストの分析ができる。配色はオレンジ主体のポップな印象だ
[編集部] 初心者でも使いやすくとおっしゃいましたが……。
[川口] たとえば、サイト情報はユーザーが手で登録しなくても、サーバーから自動的にダウンロードできる仕組みになっているんです。
[中川] 初心者をターゲットにした製品なので、スムーズに設定できる人ばかりじゃない。そこで、お勧めサイトのデータを“Club IBM”から、自動的に追加できるようにしたんです。URL情報の固まりをXMLファイルにして1週間に1回取ってくる仕組みで、更新データがあるとフラグが立って、新しい情報を追加するかどうかをユーザーに聞いてきます。
[編集部] Club IBMの会員だけのものにしておくのはちょっと惜しい気がしますね。
[中垣] まだ、詳細は決まっていませんが、将来的に一般ユーザーが体験版をダウンロードできる体制を作りたいと思っています。ソフトの特徴は言葉では説明しにくいので、見て、触って、なるほどと思ってほしい。通常の巡回ソフトとはひと味違ったソフトだということがわかっていただければと思います。

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