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ソニー、2足歩行のヒューマノイド型エンターテインメントロボットを発表


2000年11月21日

ソニー(株)は21日、2足歩行エンターテインメントロボットを試作したと発表した。試作機の型番は『SDR-3X』。SDRはSony Dream Robotの略。本体サイズは全高50×奥行き14×横幅22cm、重量は5kgと小型軽量の2足歩行ロボットだ。試作機の開発発表のため、製品化の時期や価格は未定という。

2足歩行エンターテインメントロボット試作機『SDR-3X』。全高50cm、重量5kgと抱えられる大きさだ

OPEN-Rアーキテクチャーを採用

SDR-3Xは、基本アーキテクチャーとして、同社が開発したエンターテインメントロボット用アーキテクチャー“OPEN-R”を採用している。OPEN-Rは、4足歩行自律型エンターテインメントロボット『AIBO』にすでに採用されていることで知られる。同社独自開発のリアルタイムOS『Aperios』を搭載しており、ロボットを構成するハードウェアや動作ソフトウェア、音声認識/画像認識などの情報処理プログラムを機能ごとに細分化してモジュールとして扱えるアーキテクチャーのため、個々の機能の変更/交換が行なえ、多機能に対応する拡張性を備えている。

SDR-3Xは、AIBOの基板をそのまま搭載、画像認識ソフトや音声認識ソフトなども、AIBOと同じものを利用している。ハードウェアのモジュール化も可能だが、今回の試作機はソフトウェアのみモジュール化構造にしているという。

アクチュエータを独自開発

アクチュエータは、SDR-3X用として同社が新規に開発したロボットアクチュエータ“ISA”(インテリジェントサーボアクチュエータ)を搭載している。ISAは、電気エネルギーを駆動力に変換するモーター部、駆動力を関節の動きとして伝送するギア部、モーター部を高精度で制御する回路(制御チップ)は構成されており、小型/軽量ながら高出力を実現するとしている。出力重量は、既存のアクチュエータのおよそ4〜5倍という。なお、関節ごとに求められる大きさと駆動力が異なるため、同社は今回“ISA-S”(定格トルク6.2、サイズΦ24×49.5mm、重量73.5g)、“ISA-M”(定格トルク15.9、サイズΦ31×47.5mm、重量119.7)、“ISA-MH”(定格トルク24.0、サイズΦ31×52.5mm、重量143.2g)の3種類のアクチュエータを開発、膝関節など下肢には主にISA-MHを利用している。

2足での歩行や動作は、基本的にZMP(ゼロモーメントポイント:全身運動に伴い発生する慣性力重力の合力が路面に作用する点)がバランスを保てる範囲にあるかどうかを判断するZMP安定判別規範モデルに基づいた動作パターン生成と動的安定化制御によって行なう。


発表会場で歩行デモをSDR-3X。現在SDR-3Xは6体制作されており、発表会ではそのうち4体が登場した

胴部が2自由度のため、上体表現が豊か。前屈運動も行なえる

後ろに伸びをすることも可能。発表会のデモではラジオ体操並みの屈伸運動を披露

また、障害物のない平坦な場所を高速で歩行するとき、足を踏み出すごとに交互に左右に回転する力(ヨー軸モーメント)が発生するたが、SDR-3Xはヨー軸モーメントを上肢の動きで補償することで毎分15m(時速900m)の高速安定歩行が行なえる。傾斜面での歩行や全身運動時には胴部の姿勢検出センサー群および足の裏の接触センサーからの情報をフィードバックし、転倒しないように姿勢を制御する不整地路面適応安定歩行機能も搭載する。

背中の2つのバックパックには64bit RISCプロセッサー×2を搭載。上のバックパックには認識機能などの思考系プロセッサーを、下のバックパックには運動系を制御するプロセッサーを備えている。電源はニッケル水素バッテリーで胴部に内蔵、連続で約20分弱動作する。


CPUは背中のバックパックに搭載している

SDR-3Xの歩行動作は、直進前進/後退歩行が最高速度で毎分15m、左右横歩き歩行も最高速度で毎分15m、前進から左右への旋回歩行は1歩で最高90度旋回できる。不整地路面での歩行も可能。歩行以外の動作パターンとして、仰向け→起き上がる、うつ伏せ→起き上がる、片足バランス、ボールキック、ダンスが行なえる。


座っての屈伸運動も行なえる。人間より柔らかい? また、座りこんでも自分で起き上がることが可能

ボールを認識して蹴ることも可能。特にRoboCupを意識してのことではなく、このヒューマノイド型ロボットのリーグは今のところ考えていないという

音声で動作指示が可能

音声認識機能も搭載する。耳部(頭部の左右横)にマイクロホン×2を内蔵、音声でSDR-3Xの動作を指定できる。あらかじめ登録されている約20種類の言葉を音声認識でき、それらの音声指示に対して、音声合成による返答(約20種類を用意)も行なえる。音声合成の返答は口部に内蔵されているスピーカーから発声する。


オペレーターの音声での呼びかけに、音声合成で応えるSDR-3X。「コンニチハ。ワタシハSD-3X。シュミハサッカー」とのこと

画像認識は、頭部に内蔵した18万画素1/5インチCCDカラーカメラに入力されたカラー映像データに対し、特定の色領域を識別できる。これにより、例えば音声で指示された色のボールとゴールを認識し、ボール横へSDR-3Xが移動してボールを蹴り、シュートするといった連続動作が可能となる。


「黄色いボール」との音声指示を認識し、赤、青、黄のボールの中から黄色のボールを選んでシュートするSDR-3X

見事にゴール。ボールがゴールに入ったことを画像認識し、喜びを体で表現している

グリーン、レッド、ブルーのSDR-3Xが登場し、3体が揃って同じ動きをするダンスパフォーマンスを披露。本日公開されたデモの動作プログラムは、事前にロボットのメモリーに登録しておいたもので、リモートコントロールは行なわれていない。また、3体の動きが揃っているのはそれぞれ同期を取っているのではなく、プログラムのスタートタイミングをうまく合わせただけのものという

そのほか、インターフェースとしてPCカードスロット(TypeII)とメモリースティックスロット×2を背中部に装備しており、PCカードスロットにワイヤレスLANカードを装着することでリモートコントロールが行なえる。また同社は、SDR-3Xの動作をPC上でシミュレートするソフトも別途開発したという。

関節自由度は、首部が2自由度、胴部が2自由度、腕部が4自由度×2腕で8自由度、脚部が6自由度×2脚で12自由度、合計24自由度となっている。

●SDR-3Xの主な仕様

  • CPU:64bit RISCプロセッサー×2
  • メモリー:32MB DRAM×2
  • OS:Aperios
  • ロボット制御アーキテクチャー:OPEN-R
  • 制御プログラム供給媒体:メモリースティック(16MB)×2
  • 画像入力用センサー:18万画素1/5インチCCDカラーカメラ
  • 音声入力用センサー:マイクロホン×2
  • 距離検出用センサー:赤外線方式測距センサー
  • 加速度検出用センサー:2軸加速度センサー
  • 角速度検出センサー:2軸角速度センサー
  • 接触検出用センサー:コンタクトセンサー×8
  • 音声出力:スピーカー
  • 入出力部:PCカードスロット(TypeII)、メモリースティックスロット×2
  • 歩行速度:毎分15m
  • 本体サイズ:全高50×奥行き14×横幅22cm
  • 重量:5kg(バッテリー、メモリー搭載時)

サイズを小さくしたのは安く作れるから

本日都内ホテルで行なわれた技術開発発表会で、同社執行役員上席常務デジタルクリーチャーズラボラトリー所長の土井利忠氏は、「昨日ホンダが発表されたが、われわれも本日ヒューマノイドロボットを発表する。ホンダのロボットより小ぶりにまとまっている」

「OPEN-Rはあらゆるロボットに共通なアーキテクチャー、その1つの応用としてAIBOがある。今までロボット開発は、そのロボット固有のアーキテクチャーを開発し、1から作っていたが、それは無駄な作業。ロボットに共通な部分はいくらでもある。例えば、ロボットがピンクのボールを追いかける場合、ピンクのボールをサーチするビジョンソフトが必要だがこれはどのロボットにも共通なもの。サーチ後ボールを追いかけるプログラムは4足歩行、2足歩行、車輪走行によって異なるが、ボール認識プログラムは共通のはず。こういったソフトやハードの共通性を定義したのがOPEN-Rであり、ロボット業界全体の生産性を高めるものだ。これまで4足ロボットだけをやっていたが、2足ロボットもOPEN-Rで共通化できる。今まで実証できなかったが今回試作機を開発、発表できることとなった」

「ロボット事業は将来は大きなビジネスに育てていきたい。5年後くらいにエンターテインメントロボットの分野でかなりがヒューマノイドで占められるのでは。仕事をするロボットとエンターテインメントロボットと分けて考えてきたが、今後はそういった区別はなくなるのではないか。技術レベルが上がればエンターテインメント系ロボットも掃除などいろいろな仕事ができるようになるだろう。将来的に仕事に役立つロボットが開発できた際、それをビジネスにするかどうかはユーザーニーズを考慮しての企業判断となる。ソニーはロボットをビジネスの柱のひとつにしようとしている」と語った。

また、50cm/5kgのサイズに決定したことについては、「どちらかというとエンターテインメントを中心に考えているので、階段昇降などは念頭にない。サイズは小さいほうが安く開発できるので、なるべく小さくしたかった。いまのところ安くできる精一杯の大きさがこのサイズだった」と説明した。

価格の目安については、「絶対に言うなと会社から言われているので(笑)」としながら、「昨日のロボットは乗用車3台分という噂があるが、SDR-3Xは乗用車1台分くらいで収まると思う」と語った。


SDR-3Xを持つ土井氏。「AIBOのほうがポーズを取りやすいね。SDR-3Xは腰の当たりがやわらかいからなかなかポーズが決まらない」

なお、SDR-3Xは11月24日〜26日にパシフィコ横浜で開催されるパートナー型ロボット博覧会“ROBODEX 2000”に出展される。

(編集部 桑本美鈴)


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