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東芝、初のPocket PC『GENIO e』を8月発売──SDIOとCFの両スロット装備

2001年07月16日 17時26分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(株)東芝は16日、同社初となるPocket PC端末『GENIO e(ジェニオ イー)』を発表した。SDIOカードとコンパクトフラッシュの2種類のスロットを標準で備えたことが特徴。SIパートナーと協力し、主に企業向けに販売する計画。

『GENIO e550』『GENIO e550』反射型TFTの発色は鮮やかだ

東芝初のPocket PCはデュアルスロット仕様

本体のみのスタンダードモデル『GENIO e550』と、1GBのマイクロドライブがセットになった1GB MDモデル『GENIO e550/MD』の2モデルを用意し、e550が8月20日、e550/MDが9月下旬に発売予定。価格はいずれもオープンだが、予想店頭価格はe550が7万円前後、e550/MDが10万円前後。

GENIO eの上部にあるSDIOスロットとコンパクトフラッシュスロットのアップ
GENIO eの上部にあるSDIOスロット(上)とコンパクトフラッシュスロット(下)。コンパクトフラッシュスロットにはしなやかなプラスチック製のふたが付いているが、SDIOスロットにはない(SDIOスロットがある側がディスプレー方向)

GENIO eは、幅77.5×奥行き125×高さ17.5mm(突起部除く)で重さ約180gの筐体に、3.5インチのフロントライト付き反射型TFTカラー液晶ディスプレー(240×320ドット、6万5000色表示)、CPUとしてStrongARM SA1110-206MHz、32MBのRAMと32MBのROMを内蔵している。インターフェースとして、SDIOスロット(※1)とコンパクトフラッシュ(TypeII)スロット、IrDAポート、ステレオヘッドホン出力、クレードル用コネクターを備える。東芝では「SDIOとCFの2種類のスロットを備えたPocket PCは初めて」としている。OSは『Microsoft Windows for Pocket PC(Windows CE 3.0)』。

※1 メモリーカードだけでなく、BluetoothカードなどI/O機能を持ったSDカードをSDIOカードというが、そのSDIOカードに対応したスロットがSDIOスロット。

参考展示していたBluetoothカード
参考展示していたBluetoothカード。通常のSDメモリーカードより長く、アンテナ部分が飛び出す

バッテリーはアドバンストリチウムイオン充電池(※2)を内蔵しており、連続画面表示8時間となっている。搭載ソフトウェアは、Pocket PC標準の『スケジュール帳』、『アドレス帳』、『Pocket Word』、『Pocket Excel』、『Pocket Internet Explorer』、『受信トレイ』、『MediaPlayer 7.1』のほか、辞書ソフト『辞スパ(英和・和英・国語辞書)』で、本体ROMに内蔵している。このほか添付のCD-ROMで、路線探索ソフト『JRトラベルナビゲータ』、画像ビューアー『EasyViewer for Pocket PC』、東芝オリジナルの壁紙、USBのセットアップツールを用意する。

※2 東芝が開発した、従来のリチウムイオン充電池と比較して、より柔軟な形状にすることができるリチウムイオン充電池。

GENIO e550のサイドパネルのカラーバリエーション
GENIO e550の両サイドには取り外し可能なプラスチック部分“サイドパネル”がある。ブルーが標準添付だが、レッド、イエロー、ブラック、グリーンの4色セットをオプション(2000円)で用意しており、ユーザー自身で交換できる
サイドパネルをはずしたところ
サイドパネルをはずしたところ。手前は付属のスタイラスペン
ターガスジャパン(株)が発売予定の折り畳み式キーボード『ストアウェイ・ポータブルキーボード for Toshiba』
Palm機でおなじみ、ターガスジャパン(株)が年内発売予定の折り畳み式キーボード『ストアウェイ・ポータブルキーボード for Toshiba』

企業ユーザー向け需要を狙う

東芝本社で行なわれた発表会には、東芝専務取締役でモバイルコミュニケーション社社長の溝口哲也氏と、GENIO eのSIパートナーとして伊藤忠テクノサイエンス(株)(CTC)代表取締役社長の後藤攻氏、日本ユニシス(株)代表取締役社長の島田精一氏、さらにモバイル向けデータベース『Oracle9i Lite』を本日付けで発表した日本オラクル(株)代表取締役社長の新宅正明氏、GENIO eのCPUとフラッシュメモリーを提供しているインテル(株)代表取締役社長のジョン・アントン(John Anton)氏らが出席した。

インテルのアントン社長、東芝の溝口専務、日本ユニシスの島田社長、伊藤忠テクノサイエンスの後藤部長、日本オラクルの新宅社長
(左から)インテルのアントン社長、東芝の溝口専務、日本ユニシスの島田社長、伊藤忠テクノサイエンスの後藤部長、日本オラクルの新宅社長

溝口専務は挨拶の中で、「PDAは今年度世界で1000万台の需要が予測されている。特に米国ではPDAがブレイクしたと言えるが、なかでもPocket PCが急速に伸びている。東芝はモバイル市場を大きく立ち上げたいと考えているが、モバイル市場の中でPDAは核になる商品だ。東芝が持つノートパソコンで培った液晶やリチウムイオン充電池の技術、また開発中の3Gの動画対抗携帯情報端末の技術も、PDAにどんどん使っていきたい。日本のPDA市場を米国を追い越せるように努力する。新製品も次から次へと出していきたい。SDIOカードについても、Bluetoothカードを秋に予定しているが、それ以外にもどんどん供給していきたいと考えている」と、PDAに対する積極的な姿勢を見せた。

GENIO eの位置づけ。第3世代PDA“Network Companion”と呼んでいる
GENIO eの位置づけ。第3世代PDA“Network Companion”と呼んでいる

また今回発表したGENIO e550の位置づけについては、「メインターゲットは法人およびビジネスコンシューマー。ビジネスマンの必携ツールとして大きく育てていきたい。1GBのマイクロドライブをセットにしたモデルも用意したが、企業内のデータベースなど大きなデータを扱えるようにしたいと考えている」と述べた。公式には“企業向け製品”とうたっているわけではなく、個人向けにも販売するということだが、価格の高さ(スタンダードモデルで7万円程度)などから、まずはビジネス市場を狙っていく構え。続いて挨拶したCTCの後藤社長、日本ユニシスの島田社長らも、GENIO eを使ったビジネス向けシステムを構築していくなどと述べた。

日本オラクルの新宅社長は「オラクルのシリコンバレーの社員は新しい物好き。以前は7割がPalm機を所有していたが最近はみんなiPAQを使っている。開発環境の違いが大きいようだ。また、オラクルは本日『Oracle9i Lite』という、PDA向けのデータベース製品を発表したが、今後もこうした先進の技術をビジネスで使えるようにしていきたい」とした。

インテルのアントン社長が示した、『StrongARM SA-1110プロセッサ』の概要
インテルのアントン社長が示した、『StrongARM SA-1110プロセッサ』の概要

インテルのアントン社長はGENIO eのCPUとして採用された『StrongARM-206MHz』を紹介し、ノートパソコン用プロセッサーやチップセットの開発における東芝との協力関係を、PDA向け製品でも引き続いて行なっていくと述べた。

なお、GENIO eの企業向けシステム開発のパートナー企業としては、CTC、日本ユニシスのほか、(株)エヌ・ティ・ティ エムイー、兼松コミュニケーションズ(株)、東芝エンジニアリング(株)、東芝情報機器(株)、東芝パソコンシステムズ(株)、日本通信(株)、(株)野村総合研究所、三井情報開発(株)の計10社となっている。

発表後の質疑応答では、なぜPocket PCを選んだのかという質問が出たが「いろいろな評価を行なったが、マイクロソフト社が進める“.NET”が成功していくだろうと考えたことや、米国のPDA市場でiPAQが伸びていることなどから、将来性があると考えた」(溝口専務)とした。

世界市場への取り組みと携帯電話機能内蔵型については「米国では2001年第2四半期に、iPAQの売上げがPalm機を上回るなど売れ行きが好調だ。まず(今回発表した)分離型の英語版を秋以降、米国とヨーロッパの英語圏向けに順次販売していく。また米国ではキャリアーから、通信機能を内蔵した一体型の要求が強く、来年度中に投入していきたい」(溝口専務)とした。日本での一体型投入時期については明言を避けたが、「日本のキャリアーはいま3Gにかかりっきり」とのことで、どうやら米国投入よりも遅れる見込み。

なお、個人向けのエンターテイメント機については「e550を企業向けに限定しているわけではないが、エンターテイメント向けとしてはそうした機能を付ける必要があるし、価格ももっと下げないといけないと考えている」(溝口専務)と、個人向けには別のモデルを投入する意志を明らかにした。

かつて東芝は今回と同じ“GENIO(ジェニオ)”という名を持ったPHS機能内蔵携帯端末を発売したが、消費者の支持はあまり得られなかった。今回の“新”GENIOでターゲットを企業向けとし、当初から10社ものSIパートナーと協力するとしたことは、動きの激しいPDA市場において、買ってくれるかどうかわからない一般消費者よりも、確実な需要の見込めるビジネス市場をつかみ、PDA市場への橋頭堡としたいという意思の表れと推測される。グローバル市場に売っていきたいという溝口専務の言葉もあり、東芝のPDA市場に対する真剣さが見て取れる。

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