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アップルが新しい音楽の楽しみ方を提案する『iPod』を発表──発表会詳報


2001年10月25日

米アップルコンピュータ社は23日(現地時間)、新しい音楽の楽しみ方を提案する新製品、『iPod(アイポッド)』を発表した。同製品の米国での発売日は11月10日、価格は399ドル(約4万8900円)だ。24日には日本でも発表され、米国と同じ11月10日に4万7800円で発売と決まった。iPodへの曲データ転送にはFireWire(IEEE1394)ポートを備えたMacが必要で、Windowsパソコンには今のところ対応していない。

新iBookに似た質感とホイールが特徴の『iPod』。随所にアップルらしいこだわりがちりばめられた同製品は、Mac以外の製品としては久々の大ヒットになりそうだ
新iBookに似た質感とホイールが特徴の『iPod』。随所にアップルらしいこだわりがちりばめられた同製品は、Mac以外の製品としては久々の大ヒットになりそうだ

ソフトのために作られたデバイスがあったら……

iPodの発表会は、米アップル本社内にある小ホールで行なわれ、世界中から100名近い報道陣が招待された。発表会の主役は当然、同社CEOのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏だ。ジョブズ氏は登壇するとまずは「今日は素晴らしい製品の発表がある」と予告した──「ただし、その製品はMacではない」。ジョブズ氏はまず、アップルが“iApplications(略してiApps)”と呼ばれるソフトで我々の生活をいかに変えようとしているかという説明を始めた。

ジョブズ氏は4つのマトリクスを使って、アップルが現在提供しているiAppsを紹介した。このうち、Photoと書かれているところは、実際にはMac OS X付属の『ImageCapture』が担っている
ジョブズ氏は4つのマトリクスを使って、アップルが現在提供しているiAppsを紹介した。このうち、Photoと書かれているところは、実際にはMac OS X付属の『ImageCapture』が担っている

撮る、見るだけだったデジタルビデオカメラの映像の編集を可能にする『iMovie 2』、デジタルビデオを商用タイトルのようなDVDに仕上げる『iDVD 2』、音楽を取り込んで、選曲して楽しめる『iTunes』。さらに次世代OSのMac OS Xには、デジタルカメラの映像を自動的に取り込んで、加工してくれる『Image Capture』というソフトも標準添付する。ジョブズ氏はこれらの製品をデモを通して紹介した。

これらiAppsには必ず、それと対になるデジタル機器がある。iMovieでいえばデジタルビデオカメラ、iDVD2ではDVDプレーヤー、iTunesではMP3プレーヤー、そしてImageCapture(Mac OS X)に対しては、デジタルカメラだ。ジョブズはiAppsがこうした製品のことを“知っている”のであって、個々のデジタル機器側でiAppsに対応しているわけではないと強調し「もし、iApps用につくられたデジタル製品があったら……」と問いかけた。

iAppsはデバイスについて“知っている”のであり、デバイスがiAppsを知っているわけではない、と強調するジョブズ氏。だが、もしそんなデバイスがあったら……
iAppsはデバイスについて“知っている”のであり、デバイスがiAppsを知っているわけではない、と強調するジョブズ氏。だが、もしそんなデバイスがあったら……

こうして誕生したのがiPodだ。いくつかあるiAppsのジャンルのうち、音楽(つまりiTunes)を選んだ理由としてジョブズ氏は「我々が音楽を好きだから」、「そして音楽はほとんどの人の日常生活の一部であって、それだけにマーケットも大きいと期待できるから」と語った。マーケットが大きいだけにライバルも多い。スクリーンにはシンガポールのクリエイティブメディア社、米ソニックブルー社、ソニー(株)といったメーカーのロゴが映し出される。「しかし、マーケットリーダーはいない。まだ、誰もこの分野で成功するレシピを見つけていないのだ」という。「だが、アップルにはそのレシピもあり、製品を成功させるのに必要なブランド力も持っている」とジョブズ氏は続ける。

携帯型音楽プレーヤー成功のレシピとは?

ではジョブズの言う携帯型音楽プレーヤー成功のレシピとはなにか? まずはMP3に対応したMP3プレーヤーであること。さらにCD品質を達成し、人気のデータ形式(MP3、MP3 VBR(可変ビットレート)、WAV、AIFFに対応)をすべてサポートしていること、そしてよく聴く音楽すべてを記録して呼びだせなければならない──「1000曲も記録できればほとんどの人は満足するだろう」。

成功する携帯型音楽プレーヤーのレシピについて力説し始めたジョブズ氏
成功する携帯型音楽プレーヤーのレシピについて力説し始めたジョブズ氏

こうした成功のレシピによって製品の詳細も決まってきた。1000曲を持ち歩けるようにするとなると、記録媒体はハードディスクしかない。iPodでアップルは、1.8インチ(約45.7mm)で厚さ0.2インチ(約5.1mm)のハードディスクを採用している。

iPod内蔵のハードディスクは1.8インチサイズ、厚さ0.2インチ。容量は5GB。東芝製の『MK5002MAL』という製品とピッタリ仕様が重なる
iPod内蔵のハードディスクは1.8インチサイズ、厚さ0.2インチ。容量は5GB。東芝製の『MK5002MAL』という製品とピッタリ仕様が重なる

ハードディスクを使ったMP3プレーヤーという基本仕様をもとに今度は製品の特徴が決まっていく。1000曲のデータパソコンと受け渡しするならUSBではなくFireWireを採用するしかない。前者では約5時間かかる曲データ転送が、後者ならわずか10分で終了する。おまけにFireWireなら、データ転送だけでなく、電源の供給も可能だ。このためiPodにはACアダプターが付属するが、そのアダプターとiPodの間は、Macに接続するときと全く同じFireWireケーブルを用いる。

ACアダプターは新PowerBook G4/新iBook付属のものに似ているが、アダプターとiPod間はFireWireケーブルで繋ぐ
ACアダプターは新PowerBook G4/新iBook付属のものに似ているが、アダプターとiPod間はFireWireケーブルで繋ぐ

携帯性に優れているということはバッテリー駆動時間も重要だ。同機は3時間の充電でおよそ10時間動作する。製品のデザインはアップルが世界に誇るデザインチームが担当した。表面は新iBookと同じような光沢のある白で、裏面は鏡面仕上げの金属。驚くほどシンプルなデザインで、大きさもトランプのサイズと同じくらいしかない(というかロングサイズのタバコの箱に近いかも知れない)。

iPodはポケットにスッポリ収まる小型サイズが特徴
iPodはポケットにスッポリ収まる小型サイズが特徴

この“極めて優れた携帯性”はiPodの3大特徴の1つとなっている。特徴の2つめは使いやすさだ。ジョブズ氏はデジタル機器の特徴は「使いにくいこと」と皮肉を言い、iPodでは「よく言い伝えられているアップルらしい使いやすさ」を実践し、携帯音楽プレーヤーに一石を投じると宣告した。iPodの操作の最大の特徴はスクロールホイール、これを回して真ん中の決定ボタンを押すだけでほとんどの操作が行なえてしまう(ホイールの上下左右にはさらに4つのボタンがついている)。

iPodの最大の特徴は真ん中の決定ボタンとの組み合わせで、ほとんどの操作をこなすこのホイールにある
iPodの最大の特徴は真ん中の決定ボタンとの組み合わせで、ほとんどの操作をこなすこのホイールにある

液晶画面の表示はまるでiTunesのようで縦横自在にスクロールしながら、プレイリスト単位、アーティスト単位、あるいは曲名の順番で、記録されている曲を一覧表示する。さらに英語だけでなく、日本語を含む多くの言語にも標準対応しており、英語モードでちゃんと日本語の曲名を表示したり、操作用のメニューそのものを日本語に切り替えることもできる。

液晶画面がホイール1つで縦に横にスクロールし、操作していて楽しいのはMac OS Xとの共通点か!?
液晶画面がホイール1つで縦に横にスクロールし、操作していて楽しいのはMac OS Xとの共通点か!?
なんと標準で(英語版製品でも)日本語の表示に対応。メニュー表示などもすべて日本語に切り替えできる。この国際性もMac OS Xとの共通点だろう
なんと標準で(英語版製品でも)日本語の表示に対応。メニュー表示などもすべて日本語に切り替えできる。この国際性もMac OS Xとの共通点だろう

iPodの3つめの特徴は“Auto Sync機能”だ。今回、アップルはこのiPodと合わせてMP3 CDの作成や曲の“クロスフェード切り替え”(※1)、“イコライザー機能”などを搭載した『iTunes 2』を発表したが、iPodをMacに接続すると自動的にこのiTunes 2のデータとの同期が行なわれる。

※1 2つの曲を切り替える際に、1つの曲の音量を絞りながら、もう1つの曲の音量を上げて切り替える機能。

iPodと同時に発表されたiTunes 2には、iPodとのAuto Sync機能の他にイコライザーなども搭載されている。無料でここまでやっているソフトはなかなかないはず!?
iPodと同時に発表されたiTunes 2には、iPodとのAuto Sync機能の他にイコライザーなども搭載されている。無料でここまでやっているソフトはなかなかないはず!?

ちなみにiPodは普通の(容量5GBの)FireWireハードディスクとして、書類データデジタルカメラの画像ファイルなどを入れて持ち運ぶのにも使える。

Macへの接続中はFireWireのアイコンが表示され、FireWire接続のハードディスクとしても機能する
Macへの接続中はFireWireのアイコンが表示され、FireWire接続のハードディスクとしても機能する

iPodは“プラグ、アンプラグ&プレイ”

iTunes 2はMac OS 9とXの両方に対応しているが、これはつまりiPodも両OSに対応していることを意味している。「これまではプラグ&プレイをうたってきたが、iPodではプラグ、アンプラグ&プレイをうたいたい」というジョブズ氏、iPodはクリスマスのギフトにも最適と宣伝した。世界中から招かれた報道陣はiPodのデモをただただ食い入るように見つめていたが、399ドル(日本では4万7800円)という価格に対してだけは、拍手が一瞬だけ鳴ってすぐに静まってしまった。

“Plug, Unplug & Play”。これがiPodの提案する新しい音楽の楽しみ方だ
“Plug, Unplug & Play”。これがiPodの提案する新しい音楽の楽しみ方だ
399ドル(日本での販売価格は4万7800円)。消費者がこの価格を高いととるか、目をそらす前にじっくりと製品の細かなこだわりに目を向けてくれるかがiPod成否の分かれ道だろう
399ドル(日本での販売価格は4万7800円)。消費者がこの価格を高いととるか、目をそらす前にじっくりと製品の細かなこだわりに目を向けてくれるかがiPod成否の分かれ道だろう

確かにただのFireWire接続のMP3プレーヤーと見ると、この価格はそれほど魅力的でないように見えるかも知れない。しかし、iPodはとにかく細部まで行き届いたこだわりに魅力がある。たとえば驚くほど滑らかに回るホイールや、ジョブズ氏の口上に負けない操作性の良さ。これからは、こうした触ってみなければ分からない“良さ”をどれだけアップルが消費者に伝えられるかが勝負だろう。

なおアップルは、今日招かれた100人近い報道陣の1人1人にiPodを1台ずつプレゼントし、iTunes 2を使った曲の転送の仕方を、数分間の講座で紹介して見せた。ここで、報道陣がもらったのはなんとiPod本体だけではない。なんと、講座で転送した曲が入った音楽CD全20枚もセットでくれたのだ。「アップル社は音楽の盗用には反対だ」。ジョブズ氏は発表会の最後にこういって声を高めた。だから、この発表会では5万ドル(約612万円)をかけ、参加者全員へのプレゼントとしてサンプルに使った20枚のCDを用意した、と語った。

「アップルは音楽の盗用に反対」と強調するジョブズ。シュリンクラップ状態のiPodにも、音楽の盗用は違法行為と注意をうながす警告が書かれている。「音楽は自由なスタイルで楽しめるべき」、「しかし、著作権を侵害するのは許されざる行為」とジョブズ氏
「アップルは音楽の盗用に反対」と強調するジョブズ。シュリンクラップ状態のiPodにも、音楽の盗用は違法行為と注意をうながす警告が書かれている。「音楽は自由なスタイルで楽しめるべき」、「しかし、著作権を侵害するのは許されざる行為」とジョブズ氏
かくして招待された報道陣にはiPodとMac OS X 10.1アップデータ、資料の他に20枚の音楽CDも配られた
かくして招待された報道陣にはiPodとMac OS X 10.1アップデータ、資料の他に20枚の音楽CDも配られた
報道陣にiPodとCDが配られた後で行なわれた、使い方の講習会の様子
報道陣にiPodとCDが配られた後で行なわれた、使い方の講習会の様子

23日夜に掲載した記事“アップルがまもなく新デバイスを発表――革新的デジタルデバイスとは?”の中で、「アップル本社内にあるカンパニーストアは、陳列スペースにかなり余裕があった。とはいえ、新製品がすぐにここに並ぶかははなはだ疑問だ」と書いたが、米国でもiPodが展示されるのはかなり先になる模様だ。

また、日本でも米国と同じ11月10日に4万7800円で米国と同じタイミング(時差を考えれば1日早い!)で販売開始と発表されたiPodだが、日本の店頭での展示がいつからになるかは分からない。なお、29日に発売のMacPeople誌ではほぼ原寸大の写真が掲載される予定だ。

iPodの裏側の貴重な? 画像
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(林信行)


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