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「真のモバイル、ウェアラブルコンピューターによる革新が始まる!!」エド・ニューマンCEO――ザイブナー、『poma』および『MA V』を披露

2001年11月21日 20時46分更新

文● 編集部 中西祥智

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ザイブナー(株)は20日、ウェアラブルコンピューターに関するカンファレンス、第3回“Japan Wearable Conference(JWC)”を横浜で開催した。

JWCでは、同社の親会社である米ザイブナー(Xybernaut)社のエド・ニューマン(Edward G. Newman)CEOのほか、大学や企業のウェアラブルコンピューターの研究・開発者が講演した。

米ザイブナーのエド・ニューマンCEO
米ザイブナーのエド・ニューマンCEO

講演でニューマン氏は、「本当のモバイルはウェアラブルコンピューターであり、4~5年でウェアラブルコンピューターが社会を変えるだろう」と語った。

東京大学の廣瀬通孝博士
東京大学の廣瀬通孝博士

また、東京大学の廣瀬通孝博士は「今までは、植物のように動かないコンピューターの所へ行かないと処理ができなかった。しかし、ウェアラブルコンピューターによって、天動説から地動説へ変わったのと同じ変化が起こる。情報天動説は崩壊する」と強調した。

JWCでは講演のほか、ザイブナーのウェアラブルコンピューターやパートナー企業の製品が展示された。ザイブナーは、1月に(株)日立製作所などと共同で開発すると発表したウェアラブルインターネットアプライアンス『poma』や、米IBM社からOEM供給を受ける最新機種『Mobile Assistant V(MA V)』を披露した。両製品とも、米国で11月に開催された“COMDEX Fall 2001”に参考出展し、ニューマン氏によると「目玉といっても過言ではない」ほど注目されたという。

ウェアラブルインターネットアプライアンス『poma』
これがウェアラブルインターネットアプライアンス『poma』だ。ただし、この名称は米国で米ザイブナーが販売するときのもの。日本で日立製作所がこの製品名で発売するかどうかは未定
poma本体とヘッドマウントディスプレーを装着するとこうなる
poma本体とヘッドマウントディスプレーを装着するとこうなる。だが実際には、本体は腰などに付けるのだろう

pomaは、ニューマン氏によるとザイブナー初のコンシューマー向け製品。クロック周波数128MHzのSH-4プロセッサー、RAMとROMをそれぞれ32MB搭載する。ヘッドマウントディスプレー専用ポートとUSBポート(ポインティングデバイスを接続)、コンパクトフラッシュスロット(Type II)、携帯電話およびPHS専用コネクターを搭載する。本体サイズは幅75.2×奥行き24.5×高さ134mmで重さは約230g。

ヘッドマウントディスプレー
ヘッドマウントディスプレー。島津製作所の『Data Glass 2』。SVGAの画面が、鮮明に見える

ウェアラブルディスプレーは、(株)島津製作所の『Data Glass(データグラス)2』。解像度は800×600ドット(26万色フルカラー)で画角は30度、これは60cm先に見える13インチディスプレーに相当する。重量は70g。USBバスパワーで電源を供給する。

pomaのオプティカルポインティングデバイス
pomaのオプティカルポインティングデバイス。米ザイブナーの担当者は“オプティカルマウス”と説明したが、トラックパッドのオプティカル版とでも言うべきものだ。青く光る部分を指でなぞるとマウスポインターが移動する。そして、その少し上部の黒い部分がマウスボタンにあたる

ニューマン氏は、米国で2002年1~2月に発売したいとしており、国内でもその時期に発売されるだろうとしている。価格は米国で約1500ドル(約18万3000円)で、2002年中には音声認識機能を搭載するという。

また、ザイブナーは企業向けの新製品『MA V』も参考出展した。同製品はパートナー企業である米IBMからOEM供給を受ける。

ウェアラブルコンピューター『MA V』
ウェアラブルコンピューター『MA V』

MA Vは、Celeron-500MHzプロセッサー、ATI RAGE Mobility-M1グラフィックスチップ、32MBから256MBのメモリー、5GBから40GBのHDDを搭載する。コンパクトフラッシュスロット×1、USB×1、IEEE1394×1を実装し、搭載するリチウムイオンバッテリーで約2時間の駆動が可能。また、PCカードスロット(Type II×1)、USBおよびIEEE1394を1ポートずつ装備する『Power docking Port』を追加可能。Power docking Portには追加バッテリーを搭載しており、本体の駆動時間を約2時間延長する。なお、MA Vには米テキサス・インスツルメンツ社のDSP『TMS320C5416』も搭載しており、会場内では、日本IBM(株)が自社の音声認識ソフト『ViaVoice』による音声入力のデモも行なっていた。

このような形で腰に装着する
このような形で腰に装着する

会場に展示していたMA Vは、SVGA(800×600ドット)表示が可能なタッチパネル搭載液晶ディスプレーに画面を表示していた。プレインストールするOSはWindows 98もしくはWindows 2000で、Windows XPは未検証。内部的には通常のパソコンと同等であるため、ドライバーさえ準備できればLinuxも動作するという。発売時期は未定だが、同社では年内には発売したいとしている。価格は、70万円から80万円程度。

この3ヵ月で革新が始まる!!

エド・ニューマンCEOは同日、記者会見を行なった。ニューマン氏は「ハードウェアの用意ができ、アプリケーションの準備もできた。このクォーター(3ヵ月)で、ウェアラブルコンピューターによる革新が始まる」と語り、ウェアラブルコンピューターが本格的に普及するとの考えを示した。

pomaをかざして見せるエド・ニューマンCEO
pomaをかざして見せるエド・ニューマンCEO

すでに、米ボーイング社や米FedEx社、独ダイムラー・クライスラー社、独シーメンス社などが、同社のウェアラブルコンピューターを先行して導入している。ニューマン氏によると、導入した企業では、1人あたり1日に1時間の労働時間の短縮などの実績を上げているという。

ニューマン氏は、ウェアラブルコンピューターを導入することで従業員の生産性が向上してコストが削減ができ、売り上げも向上し、利益が増大すると強調した。同氏は、2003年にはウェアラブルコンピューターの市場は、金額ベースで約6億ドル(740億円)になるとしている。また、現時点では名前を明かせないとしながらも、同氏は日本で7社(日立を含む)、ヨーロッパで3社、韓国とシンガポールでそれぞれ1社のパートナー企業が、同社のウェアラブルコンピューターを販売するだろうと語った。なお、米国では米IBMも、同社のウェアラブルコンピューターを販売するという。

「『WatchPad』が発売されれば、ザイブナーの特許を侵害することになる」
「『WatchPad』が発売されれば、ザイブナーの特許を侵害することになる」

ただし、そのIBMとシチズン時計(株)が10月に発表したLinux搭載腕時計『WatchPad』について、ニューマン氏は「発売されれば、(ウェアラブルコンピューターに関する)ザイブナーの特許を侵害することになる」と語った。WatchPadはIBMとシチズンが共同で開発した腕時計型コンピューターで、発売時期などは未定。同氏は「自分はIBMのスポークスマンではない」としながらも、「WatchPadは技術デモのみで、IBMが発売することはないだろう」との認識を示した。

オリンパス光学工業(株)のヘッドマウントディスプレー。左目の横に、小型カメラを搭載している
オリンパス光学工業(株)のヘッドマウントディスプレー。左目の横に、小型カメラを搭載している
対角9.6mmの小型液晶パネルを2基搭載した、三洋電機(株)のウェアラブルディスプレー
対角9.6mmの小型液晶パネル(640×480ドット)を2基搭載した、三洋電機(株)のウェアラブルディスプレー。まだ開発段階で、製品化するかどうかは未定。左右2基の液晶パネルに違う映像を表示しての3D立体視も検討しているという
同じく三洋電機が参考出展した、小型液晶ディスプレー搭載携帯電話のモックアップ
同じく三洋電機が参考出展した、小型液晶ディスプレー搭載携帯電話のモックアップ。iモードなどは本体の液晶ディスプレーで、通常のウェブサイトは小型液晶ディスプレーに表示する。小型液晶ディスプレーは実際に稼動しており、VGAの画面が数十センチ先に見えた
このように使う
このように使う。こちらも製品化は未定。同社では、ビジネスとして成立するかどうかを見極めるとしている

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