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エプソン、家庭向けHDTV対応液晶プロジェクターを発表――ホームシアター市場へ参入

2002年01月21日 21時45分更新

文● 編集部 佐々木千之

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セイコーエプソン(株)は20日、都内で記者発表会を開催し、家庭向けにHDTV対応の高性能液晶プロジェクター『ELP-TW100』と、エントリーモデル『ELP-TS10』を発表した。これを機にホームプロジェクター市場に本格参入するという。価格はいずれもオープンだが、編集部による予想小売価格はELP-TW100が50万円弱、ELP-TS10が30万円弱で、2月中旬に発売予定。

新開発ワイド液晶パネル搭載の『ELP-TW100』

ELP-TW100は、HDTVの750pワイド映像に対応した、画面比16:9の前方投射型液晶3板式プロジェクター。新たに開発した0.87インチの高コントラスト(600:1。従来は400:1)ワイド液晶パネル(1280×720ドット)“ドリームパネル”、米Faroudja Laboratories(ファロージャ・ラボラトリーズ)社の“DCDi”(※1)回路を搭載した。光学エンジン部も高い色純度と高コントラスト比を目指してホームプロジェクター向けに新開発している。また、空気の流路抵抗を最小化してファンの回転数を最低限に下げ、騒音レベルを図書館内並み(40~30dB)の30dBに抑えた。さらに狭い部屋でも大画面が楽しめるよう、短焦点レンズを搭載して投影距離2.5mでスクリーンサイズ80インチ(16:1)を可能にしたという。

※1 DCDi(Directional Correlational Deinterlacing)はFaroudja Laboratories社がホームシアター機器向けに開発した技術で、インターレース画像とプログレッシブ画像を変換する際に生じるジャギー(直線画像などに見られるギザギザ)を大幅に低減する。

『ELP-TW100』
『ELP-TW100』
ELP-TW100に搭載するドリームパネルの概要。液晶基盤に溝を掘り、そこに配線をすることで、液晶表面をより平滑にし、光漏れを抑制する。これによって、黒が沈んで表現力が高まるとしている
ELP-TW100に搭載するドリームパネルの概要。液晶基盤に溝を掘り、そこに配線をすることで、液晶表面をより平滑にし、光漏れを抑制する。これによって、黒が沈んで表現力が高まるとしている
米Faroudja Laboratories社のDCDiによる効果
米Faroudja Laboratories社のDCDiによる効果

画質調整機能については、映像ソースやシーンに応じてあらかじめ設定した5つのカラーモード(シアター、ダイナミック、ナチュラル、PC、sRGB)を搭載するほか、黒レベル調整、白レベル調整、RGB独立のオフセット調整、ゲイン調整、ガンマ調整が可能。このほか、一般的な色温度調整とは別に、色温度を固定したまま緑レベルを可変して好みの肌色に設定できる肌色調整機能を備える。これらの調整項目は、最大36パターンを記憶できる。

ELP-TW100のコントロールパネル部分
ELP-TW100のコントロールパネル部分
ELP-TW100は後部に入力端子が集中している。右側に見えるのは吸気口で、排気は前方からとなる。排気音は低めの音で、排気の温度は手をかざしてみたが、ぬるい風が出てくるという程度だった
ELP-TW100は後部に入力端子が集中している。右側に見えるのは吸気口で、排気は前方からとなる。排気音は低めの音で、排気の温度は手をかざしてみたが、ぬるい風が出てくるという程度だった
色温度調節とは独立して、肌色の調整が行なえる
色温度調節とは独立して、肌色の調整が行なえる

ELP-TW100の主な仕様は以下の通り。スクリーン輝度700ANSIルーメン、コントラスト比600:1、レンズはマニュアルフォーカスの1.35倍ズームレンズ、レンズのF値1.7~2.0、焦点距離29~37mmで、投射スクリーンサイズは30~300インチ(投射距離0.9~13m)。映像入力はDVI-I、D-sub15ピン、コンポジット(RCA)、コンポーネント(3RCA)を備える。対応するビデオ入力信号は525i、625i、525p、625p、1125i、750p、DVDコンポーネント、コンポジット、S信号(コンポジットとS信号ではNTSC、PAL、SECAMをサポート)。パソコン画像信号は1280×1024まで対応する。サイズは幅348×奥行き274×高さ104mmで重さは約4.2kg。消費電力は240Wとなっている。

525p対応のエントリーモデル『ELP-TS10』

ELP-TS10は画面比4:3に対応した、前方投射型液晶3板式プロジェクター。データプロジェクター用に開発した0.9インチの高コントラスト(500:1)ポリシリコンTFTパネル(4:3、800×600ドット)を搭載する。ELP-TW100同様、騒音レベルを図書館内並みの31dBに抑えた。レンズも同じ短焦点レンズを搭載して投影距離2.5mでスクリーンサイズ80インチ(4:3)を可能にしている。なおビデオ映像投射時は画面比を4:3と16:9で切り替えられる。

『ELP-TS10』
『ELP-TS10』
ELP-TS10の入力端子部分。ELP-TW100と違い、音声入力を備えている
ELP-TS10の入力端子部分。ELP-TW100と違い、音声入力を備えている

画質調整機能は、映像ソースやシーンに応じてあらかじめ設定した5つのカラーモード(シアター、ダイナミック、ナチュラル、PC、sRGB)を搭載。スクリーン歪みの補正機能では、縦方向だけでなく横方向の歪みも補正可能で、スクリーンに対して正面にプロジェクターが置けない場合に対応する。2つの映像ソースを一度に表示する“ピクチャーインピクチャー”機能も備えている。また、ELP-TW100と異なり、本体にスピーカー(モノラル)を内蔵する。

ELP-TW100、ELP-TS10に搭載する光学エンジン
ELP-TW100、ELP-TS10に搭載する光学エンジン

ELP-TW100の主な仕様は以下の通り。スクリーン輝度700ANSIルーメン、コントラスト比500:1、レンズはマニュアルフォーカスの1.35倍ズームレンズ、レンズのF値1.7~2.0、焦点距離29~37mmで、投射スクリーンサイズは30~300インチ(投射距離0.9~13m)。映像入力はDVI-I、D-sub15ピン、コンポジット(RCA)、コンポーネント(RCA×3)、音声入力はRCA×2、ステレオミニジャックを備える。対応するビデオ入力信号は525i、625i、525p、625p、1125i、750p、DVDコンポーネント、コンポジット、S信号(コンポジットとS信号ではNTSC、PAL、SECAMをサポート)、パソコン画像信号は1280×1024まで対応する。サイズは幅348×奥行き274×高さ104mmで重さは約4.2kg。消費電力は240Wとなっている。

初年度からシェア30%を目指す

セイコーエプソンは'89年に初めて、液晶3板式のプロジェクター『VPJ-700』を発表後、ビジネス/データプロジェクター市場向けに製品開発を行なってきた。国内のビジネス向けプロジェクター市場においては6年連続で販売シェア1位(2001年上半期時点で28.5%)、世界市場においても2位(同 13%)と「たいへん良い評価をいただいてきた」(エプソン販売(株)の降旗國臣代表取締役社長)という。ビジネス向けプロジェクターは、製品もその価格もこなれてきたため、市場としてはここ数年間、対前年比で約40%ずつ伸びてきており、IT関連機器の売り上げが落ちている中で、今年も同様の数字を期待しているという。

エプソンのデータプロジェクター製品の歴史
エプソンのデータプロジェクター製品の歴史
エプソン販売(株)の降旗國臣代表取締役社長
エプソン販売(株)の降旗國臣代表取締役社長
国内のデータプロジェクター市場の実績と予測((株)富士キメラ総研調べ)
国内のデータプロジェクター市場の実績と予測((株)富士キメラ総研調べ)(家庭向けは除く)
2001年前期国内のデータプロジェクター市場の販売シェア
2001年前期国内のデータプロジェクター市場のメーカー別販売シェア

本日発表した新製品は、セイコーエプソンが初めて家庭向けに開発した製品で、データプロジェクターで培った光学系技術と、カラープリンターで培った色表現技術を結集し「エプソンだからできる“最高画質の実現”と“使いやすさの追求”に徹底的にこだわった」(セイコーエプソン(株)岩谷勝弥常務取締役兼映像・デバイス応用機器事業部部長)という。今回、ホームプロジェクター市場に本格的に参入する背景として、BSデジタルハイビジョン放送開始やDVDプレーヤー/ソフトの普及などの“高品位映像の一般化”、大型テレビやPDPなど“大画面ニーズの高まり”、5.1chサラウンドシステムなど“音響への関心増大”、ブロードバンドコンテンツの登場やコンボドライブ(DVD-ROM/CD-R/RWドライブ)の普及とHTPC(※2)普及のきざしといった“PCの映像機器化”を挙げ、「ホームプロジェクター市場は今後毎年およそ60%ずつ急速に伸びると見ている」(降旗社長)という。

※2 HTPC(ホームシアターPC):DVDドライブ、高画質グラフィックスカード、高音質サウンドカードなどを搭載し、DVD-Video再生に特化したパソコン。まだ市販のパソコンでHTPCというジャンルのものがあるのではなく、愛好者が自作している。

セイコーエプソン(株)岩谷勝弥常務取締役兼映像・デバイス応用機器事業部部長
セイコーエプソン(株)岩谷勝弥常務取締役兼映像・デバイス応用機器事業部部長
2001年前期ブランド別世界シェア
2001年前期ブランド別世界シェア
国内のプロジェクター市場の実績と予測(データプロジェクター、ホームプロジェクター合計)
国内のプロジェクター市場の実績と予測(データプロジェクター、ホームプロジェクター合計)

エプソンは国内のホームプロジェクター市場を、3管式のCRTプロジェクター(販売価格100万円以上)、液晶/DLP方式(画面比率16:9)プロジェクター(50万円以下)、液晶/DLP方式(画面比率4:3)プロジェクター(30万円以下)の3つのカテゴリーに分類しており、上位モデルのELP-TW100を販売価格50万円以下のカテゴリー、下位モデルのELP-TS10を30万円以下のカテゴリー向けとして発売する。調査会社によると国内ホームプロジェクター市場規模は、2001年に2万台、2002年は3万2000台と予測されているが、今回の2機種を合わせて年間1万台、シェア30%を目指すという。なお、日本での発売後、世界市場にも販売する計画だが「世界市場では特に欧州からの引合いが強く、海外では欧州をメインに出荷する」(岩谷常務)としている。

エプソンが示した、他社液晶プロジェクターとの比較表。表中の水色は最高性能であることを示す
エプソンが示した、他社液晶プロジェクターとの比較表。表中の水色は最高性能であることを示す

現在の国内ホームプロジェクター市場は、(株)東芝、三洋電機(株)、シャープ(株)、ソニー(株)、松下電器産業(株)、プラスビジョン(株)、三菱電機(株)、ヤマハ(株)など家電メーカーを中心に各社の製品がひしめき合っている状況。エプソンはデータプロジェクターにおいては3割近い(28.5%)シェアを持ち、ビジネス系では非常に強いが、ホームプロジェクターというAV家電市場で、“エプソン”というブランドがどの程度通用するかが問われる。同社の計画通り(1万台)であれば、2001年から2002年のホームプロジェクター市場の増加分1万2000台のほとんどをエプソンが占めることになる非常に強気の目標となっている。発表会後の質疑応答の際に質問も出たが、これまで同社が成功したカラーコピー(Intercolor、InterLaser)やインクジェットプリンター(Colorio)と同様に、製品シリーズのブランド名を付けたり、各種広告によるマーケティング戦略が目標達成のためには必要となるのではないだろうか。

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