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ソニー、小型2足歩行エンターテインメントロボット『SDR-4X』を開発――今度は歌って踊れます


2002年3月19日

転ばない、壊れない、そして起き上がるロボット

ソニー(株)は19日、家庭において想定される環境や場面に適応して行動する小型2足歩行エンターテインメントロボットの商品化に向けた試作機『SDR-4X』を開発したと発表した。

SDR-4X
ソニーの小型2足歩行エンターテインメントロボット『SDR-4X』。SDRはSony Dream Robotの略。2000年に発表された『SDR-3X』から本体デザインも大きく変わった。このデザインは社内外のデザイナー参加によるデザインコンテストを実施し、当選したものを採用したという。「デザインを人間に近くするとかえって不気味になるので、あえて宇宙人ぽいデザインにしました」(土井氏)。でも、ちょっと顔が怖いかも……。三つ目だし。下の2つの目にはそれぞれCCDカメラを搭載しており、上の“三つ目”の正体は測距センサー
後ろ姿
SDR-4Xの背面

『SDR-4X』は、2000年11月21日付けで発表された2足歩行ロボット試作機『SDR-3X』と同じく、同社が開発したエンターテインメントロボット用アーキテクチャー“OPEN-R”を採用している。OSは同社独自開発のリアルタイムOS『Aperios』を搭載している。

本体サイズは幅260×奥行き190×高さ580mm、重量は6.5kg(バッテリー/メモリー搭載時)。SDR-3Xは幅220×奥行き140×高さ500mm/5kgだったのでわずかに大きくなってはいるが、それでも人が抱えられる程度の大きさだ。関節自由度は、首部4自由度、胴部2自由度、腕部5自由度×2、脚部6自由度×2、手部5指×2の計38自由度。SDR-3Xには指がなかったが、『SDR-4X』は5本の指を持ちそれぞれが独立して動くため、ジャンケンもできるという。

SDR-4Xを抱っこ
抱き上げられると関節を柔らかくする制御が働く。なお、目と耳、胸にLEDを搭載しており、目は4096色(RGB各16段階の組み合わせ)、耳は1色16階調、胸は2色(同時点灯で3色)に光るようになっている。胸のLEDは動作/充電状態を表わすパワーLEDで、目と耳のLEDはそのときの感情を表わすものだという。「声に感情を込められるので、喜んでいる声や怒った声などを音声合成で出せるのですが、わかりにくい場合もあるので、ランプを使って感情を表現します。『風の谷のナウシカ』の王蟲は怒ると目が赤くなるでしょう。あんな感じです」(土井氏)
SDR-4Xの5本指
『SDR-4X』の手

センサーは、赤外線方式の測距センサー(頭部×1/手×2)、加速度センサー(体幹:X/Y/Zの3軸、両足:X/Yの2軸)、角速度センサー(体幹:X/Y/Zの3軸)、足底センサー(力センサー:片足4×2)、温度センサー(外部用×4、内部用×2)を搭載する。タッチセンサーは頭部に感圧ゴム、取手にシートスイッチ、手にシートスイッチ×2、両肩にタクトスイッチ×2を備えている。

各関節を駆動するアクチュエーターは、同社が新規に開発したロボットアクチュエーター“ISA(インテリジェントサーボアクチュエータ)”を搭載する。SDR-3Xで使用したISAは、ISA-S/ISA-M/ISA-MHの3種類だったが、今回SDR-4用にISA-4S/ISA-4M/ISA-4MH/ISA-4SSの4種類を開発、SDR-3Xで使用したISAと比較して、始動トルクで約30%、定格トルクで約15%、効率で約20%それぞれアップし、運動性能と応答性が向上したという。

基本構成図
『SDR-4X』の基本構成

またSDR-4Xは、さまざまな運動制御技術を備えている。まず“実時間統合適応制御”により、不整地面や傾斜面での歩行や、外力が加えられたときの姿勢保持などがリアルタイムで行なえる。具体的には、約10mmまでの凹凸面に対応した不整地歩行および約10度までの傾斜面での歩行と登板を可能にする“路面適応制御”、外力が加わった場合に転倒しないよう姿勢保持を行なう“外力適応制御”、転倒時に衝撃回避に適した姿勢保持を行なうとともに関節を柔らかく制御して衝撃を緩和する“反射適応制御”を搭載する。

さらに、センサーで感知した情報に基づき、状況に応じた歩幅、歩行周期、旋回角度などを可変し、必要な歩行動作パターンをリアルタイムで生成する“実時間歩行動作パターン生成制御”も備えている。そのほか、ユーザーがパソコンを利用して『SDR-4X』の歩行動作パターンやダンスなどの全身協調動作パターンを生成/編集できるソフト『SDRモーションクリエータ』も用意されている。ユーザーが入力したパターンに対しSDRが転ばないよう自動的に補正する機能を搭載しており、SDRが実動作可能な動作データとして出力される。

SDRモーションクリエータ
SDRモーションクリエータの画面。パソコン上で自分が入力したSDRの動作パターンをシミュレーションすることも可能

また、『SDR-4X』は人間とともに生活するロボットを目指して開発されたため、さまざまなコミュニケーション技術を搭載している。頭部に11万画素1/5インチCCDカラーカメラ×2を装備し、被写体までの距離を推定することが可能、床面や障害物までの距離を検出できる。その後、検出したデータを元に障害物を避けて通るための経路をリアルタイムで自動的に生成し、その経路データに基づいて障害物を避けながら歩行することが可能。さらに、マイクロホン×7を頭部に装備しており、音源の方向(水平/垂直対応)を推定できる。

発表会に登場したソニー執行役員上席常務デジタルクリーチャーズラボラトリー所長の土井利忠氏は、「AIBOもカメラを搭載しているが、カメラが1つしかないため、テーブルの端なのか絨毯の模様なのか判別できず、絨毯の模様で動けなくなってしまった。その制御をゆるめると今度はテーブルから落ちてしまう。今回のSDR-4Xはカメラを2つ搭載しており、立体視信号処理を行なう。映ったものを立体として捉えるのでテーブルの端と絨毯を見間違うことはない。また、マイクロホンを7つ装備してどの方向から音が聞こえたかを検出している」と説明している。

上記の視覚(CCDカメラ)や聴覚(マイクロホン)を利用して人間とコミュニケーションをとるための“マルチモーダルヒューマンインタラクション技術”も搭載する。“個人検出/識別/学習技術”により、複雑な背景の中から顔(正面顔)を検出、識別可能で、学習機能により最大10人までの顔を記憶できる。その人の声も記憶でき、音声で誰であるかを識別することも可能。また、複数語彙の連続発話による音声認識も行なえる。SDR-3Xは認識できる語彙が20語だったが、『SDR-4X』は、発話者とSDRとの距離が近ければ5万〜6万語を認識できるという。また、内蔵辞書に登録されていない単語を新たに学習し記憶することも可能。

CCDカメラで得た人や物の位置などを一時的に覚える短期記憶機能に加え、人との会話などを通じて顔や名前、さらにコミュニケーション時の情動的な情報などを記憶する長期記憶機能を搭載しており、その記憶に基づいてより複雑な対話、行動を実現するという。そのほか、音声合成機能として、喜びや怒りなどの感情を込めた規則音声合成が可能、スピーカーを通じて発声できる。また楽曲と歌詞をデータ入力することで、音声合成によるビブラートを含む歌声を生成できる。

CPUは64bitRISCプロセッサー×2。メモリーは64MB DRAM×2を搭載し、制御プログラムの供給媒体はメモリースティック(16MB)。本体にはPCカードスロット(TypeII×1)とメモリースティックスロットを装備する。歩行速度は不整地面で毎分6m(歩幅10cm/歩行周期は1歩に付き1秒)、水平/平坦路面で毎分20m(歩幅6.5cm/歩行周期は1歩につき0.2秒)。電源はリチウムイオンバッテリーで、連続駆動時間は約1時間。

ソニー土井氏
ソニー執行役員上席常務デジタルクリーチャーズラボラトリー所長の土井利忠氏

発表会の挨拶で土井氏は、「2000年11月21日にパラパラを踊るロボット(SDR-3X)を発表したが、その後鳴りを潜めていた。H社のロボットが派手に出ている中で何をしているんだと言われたが、深く潜行して開発を進めていた。単なる技術発表ではなく、商品化を前提として開発している。SDR-4Xは商品化のためのプロトタイプだ。単なる技術発表として歩いたり踊ったりするロボットを開発するレベルと、商品化を目指して開発するレベルとは大きな開きがある。ソニーの場合、展示用ではなく一般家庭で人間と共に生活できるロボットを目指しているので、ロボットを触ったときに人間がケガをしてはいけない。そのため関節に手などが挟まらないよう関節部は丸みを帯びた構造を採用している」

「また、歩くといってもデモステージを歩くわけではない。いろいろな床面があるし子供がロボットを押すかもしれない。その時に簡単に転ぶようではまずい。従って簡単には転ばないというのが要件となる。しかし、人間がたまに転ぶように、ロボットも転ぶ。しかしその度に壊れてしまうようではいけないわけで、倒れたときに壊れないというのが2番目の要件。この要件を満たすため、SDR-4Xは倒れるときにそれなりの制御を行ない受け身をとって転ぶようにしている。さらに、どんな格好で倒れても自分で起き上がるということも要件のひとつだ。“転ばない”“壊れない”“起き上がる”というのがロボット商品化の要件であり、これらがあるレベルに達したので今回の発表に至った」

「今までのヒューマノイドロボットのほとんどは実はリモコンで操作するロボットだったが、ソニーが目指すのはリモコンではなく自律ロボット。感情があり本能がありそれらが常に動いていろいろな行動、発話を自分で計算し作り出していくロボットを目指す」と語った。なお、近頃格闘を目的としたロボットの開発やバトルイベントなどが行なわれているが、「ソニーはバトルロボットには汲みしたくない。子供たちにファンタジーを与える方向にいきたい」と語った。

今回の『SDR-4X』は技術研究開発発表のため、製品化の時期や価格は公表されていないが、「このまま開発が順調に進めば、年末には商品化の発表ができるだろう」としている。なお、SDR-4Xの価格の目安は「高級自動車1台分」(土井氏)とのこと。

『SDR-4X』は、28日から31日までパシフィコ横浜で開催される人間共存ロボット博覧会“ROBODEX 2002”に出展される。

(編集部 桑本美鈴)


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