シャープ(株)は3日、液晶テレビ“AQUOS(アクオス) G”シリーズの新ラインアップを発表した。65Vインチ(※1)の大画面液晶パネルを採用した新モデル『LC-65GE』を含む8モデルで、価格はハイエンドのLC-65GEが168万円。45Vインチの『LC-45GE2』が69万3000円。ローエンドの『LC-22GD6』が21万円。7月15日から順次出荷を開始する。
※1 “V”は有効画面の対角寸法を基準としたサイズという意味で、ブラウン管では“プラス2インチ”相当となるずらりと並んだAQUOSの新製品 |
65Vインチの液晶パネルは、32Vインチの実に4倍
『LC-65GE』 |
最上位のLC-65GEのパネル面積は、32Vインチモデルのほぼ4倍で、実際に商品化されるデジタルハイビジョン液晶テレビとしては世界最大のサイズになるという。液晶パネルは、“ASV”(Advanced Super View)方式の低反射ブラック液晶で、解像度は1920×1080ドット。デジタル放送のハイビジョン画質(1080i)を“フルスペック”で表示できる。コントラスト比は800:1、輝度は450カンデラ/平方メートル、視野角は上下左右とも170度。液晶パネルの生産から、最終的な製品の組み立てまでの製造作業は同社の亀山第1工場で行ない、月産300台を予定している。
チューナー部分は別ユニットで提供されており、アナログの地上波に加えて、BS/110度CS/地上デジタルの受信が可能。HDMI、i.LINK、DVI-Iなど端子類も充実している。
画質面では、動画応答性を高める“QS”(Quick Shoot)技術を採用し、スポーツなど動きの速い動画のスムーズな再生が可能なほか、バックライトの蛍光管を改良し、色の再現性を高めた。
同社の従来製品では、バックライトの蛍光体に赤・青・緑の3色が用いられていたが、今回より長い波長(700nm)の“真紅”を追加した新しいバックライト(4波長バックライト)を開発して搭載している。これにより、色再現性がNTSC比で79%向上したという。
4波長バックライト | PDPに対して、ドットあたりの面積は半分程度になる |
“真紅”の波長を追加した理由としては「人間の目の“錐体”には赤の光を感じとる細胞が多く含まれており、色の違いをより強く感じ取れるため」(シャープAVシステム事業本部液晶デジタルシステム第一事業部副事業部長兼第一技術部長の西原 通陽氏)だという。バックライトには直管式の蛍光管を36本使用している。
また、同社の45Vインチ以上の液晶テレビに搭載されている画像処理チップ『1チップデジタル高画質LSI』を採用し、エッジの表現やコントラスト、色合いの調整などを10bitの画像処理で調整している。音質にもこだわり、同社独自の1ビットデジタルアンプやスピーカーネットに高開口率(約50%)のステンレス素材を採用した、2ウェイスピーカーを搭載する。
環境に合わせて最適な色や明るさが選択される機能 | 環境保護に対する取り組み |
ディスプレー部のサイズは、スピーカーとテーブルスタンドを装着した状態で幅1572×奥行き435×高さ1160mm。重量は73.5kg。チューナー部は幅432×奥行き303×高さ95mmで、重量は7.3kg。発売は8月1日。
ミッドレンジモデルは、2つのデザインを選択可能
下位の7モデルの製品名と価格は下表のとおり。45Vインチの『LC-45GE2』は“フルスペック”のハイビジョン対応。32Vインチ以上のモデルは“4波長バックライト”と1ビットデジタルアンプや高開口率スピーカーを搭載する。
製品名 | パネルサイズ | 価格 | 発売日 | 形状 | 解像度 |
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LC-45GE2 | 45Vインチ | 69万3000円 | 8月1日 | サイドスピーカー | 1920×1080ドット |
LC-37GD6 | 37Vインチ | 52万5000円 | 7月15日 | サイドスピーカー | 1366×768ドット |
LC-32GD6 | 32Vインチ | 37万8000円 | 7月15日 | サイドスピーカー | 1366×768ドット |
LC-37GD7 | 37Vインチ | 52万5000円 | 8月1日 | アンダースピーカー | 1366×768ドット |
LC-32GD7 | 32Vインチ | 37万8000円 | 8月1日 | アンダースピーカー | 1366×768ドット |
LC-26GD6 | 26Vインチ | 29万4000円 | 8月1日 | サイドスピーカー | 1366×768ドット |
LC-22GD6 | 22Vインチ | 21万円 | 8月10日 | サイドスピーカー | 854×480ドット |
液晶パネルはASV方式の低反射ブラック液晶で、解像度は45Vインチのモデルが1920×1080ドット、26V~37Vインチの各モデルが1366×768ドット、22Vインチのモデルが854×480ドット。視野角170度、輝度は450カンデラ/平方メートル(22V型のみ500カンデラ/平方メートル)といったパネルの仕様は基本的に同等。チューナーはディスプレーと一体型で、アナログの地上波放送に加えて、BS/110度CS/地上デジタル放送の受信が可能。チューナー部分は別ユニットで提供されており、アナログの地上波に加えて、BS/100度CS/地上デジタルの受信が可能。
2005年に訪れる3つのパラダイムシフトとは?
発表会では、シャープ(株)取締役AV事業システム本部長の奥田 隆司(おくだ りゅうじ)氏が登壇し、液晶テレビ市場と同社の戦略に関して説明した。
シャープ取締役でAV事業システム本部長の奥田 隆司氏 |
奥田氏は、冒頭で2005年には国内のテレビ市場で「3つの大きなパラダイムシフトが訪れる」とした。1点目は「国内の液晶テレビの出荷台数は2005年度に430万台に達し、390万台のブラウン管テレビを上回る」点。すでに金額ベースではブラウン管テレビを上回っている液晶テレビだが、これで名実ともに逆転することになる。2点目は「ワイド液晶テレビの需要が4:3を上回る」点。ワイド液晶テレビの260万台に対して、4:3テレビの出荷数は170万台にとどまる見込み。そして最後が「32インチ以上の液晶テレビとプラズマテレビの販売台数の差がさらに開き、3.5倍の差となる」点である。
同氏は「2005年は、1996年に一度ピークに達した大型テレビの買い替え需要が高まってきている」と指摘。2008年までに50%を超えるとされる地上デジタル放送の放送比率の中、さらに市場が拡大していくという予想を述べた。
これらの現状を踏まえた今後の戦略として、奥田氏は「“超大画面”の液晶テレビの拡充を進める」と述べ、今回投入した65Vインチモデルに加え「既存の45Vインチモデルを年内には50Vインチにシフトしていきたい」とした。そのために、2006年10月には亀山第2工場の第8世代のラインを稼動させる予定。また、液晶解像度に関しては“フルスペック”(1920×1080ドット)化を進め、30インチクラスの製品のフルスペック化も「できれば2005年度に出していきたい」とした。
薄型テレビの市場では松下電器産業のプラズマテレビが最近好調だが、シャープは「65Vインチでも619Wと、PDPに対して10%程度低い消費電力」と「6万時間を超える超寿命設計」、「ノンハロゲン材の使用など環境面での配慮」などをアピールポイントに、全世界で1500万と言われる液晶テレビの市場で「液晶のシャープにふさわしい商品をラインアップし、シェアナンバー1を確保していきたい」とした。