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ペンタックス、1000万画素CCDを搭載した久々の中級機『PENTAX K10D』を発表──感度優先AEなど独自機能も大幅に追加

2006年09月14日 11時30分更新

文● 編集部 小林久

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ペンタックス(株)は14日、中級者向けのデジタル一眼レフカメラ『PENTAX K10D』を発表した。価格はオープンプライス。予想実売価格はカメラボディーのみで12万円。10月下旬の発売を予定している。

K10D
K10D。装着しているレンズは別売の『DA 16-45mmF4ED AL』

また、“Limited”シリーズの薄型単焦点レンズの新ラインアップとして『smc PENTAX-DA 70mm F2.4 Limited』も発表。すでに販売されている焦点距離21mmと40mmのレンズと組み合わせて、広角、標準、望遠それぞれの撮影が行なえるようになった。最短撮影距離は70cm。“クイックシフトフォーカスシステム”により、AFでピントを合わせたあと、マニュアルで微調整を行なうといった使い方ができたり、2段スライド式のフードを同梱する点などもこだわりの部分だ。発売時期は10月下旬で、価格はオープンプライス。予想実売価格は5万円前後になる見込み。

smc PENTAX-DA 70mm F2.4 Limited
smc PENTAX-DA 70mm F2.4 Limited。描写は開放付近でやわらかく、絞り込むことでシャープにするようにしたという


単にCCDを高画素化しただけでは、高画質なカメラにはならない

ペンタックスが中級機を発売するのは、2003年8月に発表された『*istD』以来、約3年ぶり。『PENTAX K100D』で新搭載されたボディー内手ぶれ補正機構“Shake Reduction”(SR)を引き続き採用したほか、撮像素子も有効1020万画素のCCD(23.5×15.7mm、APS-Cサイズ、2チャンネル読み出し)にスペックアップした。

1000万画素のCCD
新たに搭載された1000万画素のCCD

同時に、CCDからのアナログ信号を22bit(420万階調)でデジタル化する高分解能なA/Dコンバーター、独自開発の画像処理エンジン“PRIME”(PENTAX Real Image Engine)、CCD前面のローパスフィルターにホコリが付着することを防ぐ“Dust Removal”(DR)なども新搭載した。ペンタックスでは「高画質を実現するためには、単にCCDを高画素化するだけでなく、システム全体の性能を向上させる必要がある」というスタンスでK10Dを開発しており、独自の“露出設定機能”の導入や、防塵防滴ボディーの採用など、操作感を含めた改善にも取り組んでいる。



SR機構は、K10D向けにチューニング
撮像面のホコリ取り機能にも対応

SR機構の動作原理は、K100Dと基本的に同等だが、マグネットとコイルのパワーアップや制御アルゴリズムの刷新など、より高精度で安定した動作を行なうための改良を加えた。これにより、K100Dでは2~3.5段分とアナウンスされていた手ぶれ補正効果がシャッタースピード換算で、2.5~4段分に向上。ペンタックスの広報部は「特に最低補正段数を2.5段に増やした点が精度に対する自信の表われ」だと話す。

新しくなったSRユニット 新しくなったSRユニット(CCD面)
K10DのSRユニット。コイルやマグネットがより強力になった(写真右)補正ユニット自体もK100Dから若干大型化している

手ぶれ補正機構が効果を発揮するのは、望遠撮影や薄暗いシチュエーションでの撮影などだが、実際には高速シャッター時の微妙なぶれに関しても有効だという。「レンズ本来の描写能力をよりいかんなく発揮するためには、わずかなぶれも防ぐ必要がある」というのがペンタックスの主張である。

ADコンバーター PRIME
K10DのA/Dコンバーター(左)と新たに開発された画像処理エンジン“PRIME”(右)

22bitのA/Dコンバーターと画像処理エンジンのPRIMEは、K10Dのために新規開発したもので、一般的な12bit精度のA/Dコンバーターに対して、約1000倍の情報を扱うことになる。絵作りや画像の変換を行なうPRIMEには、DDR2メモリー(最大800Mbps)も採用。チップを90nmプロセスで製造することで、高速なデータ転送と低消費電力化の両立も図ったという。K10Dでは、K100Dの毎秒2.8コマ(JPEG:5コマ、RAW:3コマ)に対して、毎秒3コマ(JPEG:無制限、RAW:9コマ)に連写速度が向上している。

ローパスフィルターに対するホコリの付着を防ぐDR機構に関しては、ローパスフィルターのコーティング処理とSRの振動を利用したホコリ落としという2段構えになっている。コーティング処理に関しては、同社のレンズコーティング(SPコート)と同様に、フッ素系の材料を使用(特性は異なる)。10nmの厚さでコーティングして、表面の凹凸をなくし、ゴミを付着しにくくしている。それでも付着してしまったホコリに関しては、撮像面を振り上げて叩きつける動作を適時行なうことによってふるい落とすことになる(起動時に常に行なうようにすることも可能)。落ちたホコリは下方の粘着シートに吸着させる。これにより、ホコリの再付着を防げるという。



感度を考慮して露出を決定できるモードも追加

撮影機能では、一般的な“プログラムAE”(P)、“絞り優先”(Av)、“シャッター速度優先”(Tv)、“マニュアル”(M)の露出モードに加え、新たに“感度優先”(Sv)、“シャッター速度&絞り優先”(TAv)を追加した点が興味深い。新たに追加された、SvとTAvの2つのモードは、シャッター速度と絞りだけでなく、感度も考慮に入れて適正な露出を決めていくモードだ。

上部から見たところ
上部から見たところ。左にあるのがモードダイヤル

Svは電子ダイヤルを回すことで感度を変更できるモードで、カメラが適正と判断した露出よりやや速いスピードでシャッターを切りたい場合などに便利だ。感度の調整は、1/2EVまたは1/3EVステップで設定可能。オート感度の設定とは異なり、ユーザーが意識的に数値を指定できる点、メニューに降りずにカメラを構えたまま微調整できる点などが特徴となる。

一方、TAvはマニュアルでシャッター速度と絞りを決めると、それに合った感度がカメラによって自動的に選択されるモード。ピントの深さ(被写界深度)や、被写体の動きの表現(動感)などを決め打ちした絵作りを行なうことができる。

Svモード TAvモード
SvモードとTAvモードの違い

また、従来のペンタックス製カメラに搭載されていた“ハイパープログラム”(Pモードでカメラが選択したシャッター速度、絞りを前後の電子ダイヤルで変更できる機能)、“ハイパーマニュアル”(Mモードでシャッター横のグリーンボタンを押すとカメラが適正と考える露出値が自動的に設定される機能)も利用できる。



このほかにも撮影の信頼感を高める工夫が盛りだくさん

本体にはRAWボタンも新設し、JPEGを基本とした撮影でも1カットのみ(あるいはもう一度RAWボタンを押すまでの間)、RAW+JPEGモードで撮影できる機能も搭載した。これにより、ここだけの1枚を高画質に残したり、複雑な光線条件の状況でとりあえずRAWで撮っておき、後処理でホワイトバランスを微調整するといった使い方も可能になった。RAWからJPEG形式の変更は付属の現像ソフトだけでなく、カメラ内でも可能でホワイトバランスや色合い、コントラストの調整だけでなく、増感/減感幅も設定できるようになっている。

画質面ではパソコンを利用した場合のほうが良好とのことだが、パソコンに不慣れな層でも現像機能を手軽に利用できるようにするため追加した機能だという。

RAWボタン
RAWボタン
本体72ヵ所、バッテリーグリップ38ヵ所をシーリングすることで、防塵防滴性能も高めた。霧の中や水辺などでも躊躇なく撮影できるようになっている

JPEG撮影時のホワイトバランスは、ケルビン単位で最大3つまで指定できるほか、アンバー/グリーン/ブルー/マゼンダの各方向に対して微調整することも可能だ。デジタルプレビューの仕組みを応用し、変化の度合いを目で確認しながら色を決められるのも便利だ。

WB WB
ホワイトバランスの調整画面

ファインダーは、固定式のペンタプリズムファインダーで、視野率95%/倍率95%と広い。AF測距点数は11点(中央部9点はクロスタイプ)。フォーカシングスクリーンはガラスプリズムを採用したモデルでは初めて“ナチュラルブライトマットII”となった。周辺のマットのざらつきが大幅に軽減され、クリアーで抜けがいい見栄えになったという。ISO感度の上限は、K100Dは3200までだったが、1600までとなった。これは基本感度がISO 200からISO 100になったためだという。

正面 背面
正面。マウントの内側(右下)にある金色のピンが超音波モーター用の接点背面。液晶パネルは2.5インチの広視野角タイプ。画素数は約21万
側面 側面
左側面右側面

なお、現時点で対応レンズは発表されてないが、K10Dではボディーマウントに超音波モーター用の接点が新設されている。この接点は、過去に発売された“パワーズーム”用の電気接点が置かれていた位置と共通。このため、一部制限はあるが、従来のパワーズームを使うことも可能になった(K100Dなどでは接点が省略されていた)。

K10Dの本体サイズは幅141.5×奥行き70×高さ101mmで、重量は710g(本体のみ)/790g(装備重量)。電源は今回から専用のリチウムイオン充電池(D-LI50)となっており、CIPA測定基準で約500枚の撮影ができる。また、付属ソフトの『PENTAX Photo Laboratory 3』と『PENTAX PHOTO Browser 3』はバージョン3.10となり、Intel Macintoshへのネイティブ対応や米アドビシステムズ社が提唱するRAWフォーマット“DNG形式”への対応が行なわれた。

別売で縦位置グリップ『D-BG2』(価格2万4150円)も用意されており、これを使用することでD-LI50をもうひとつ追加することができる。本体サイズは幅140×奥行き73.5×高さ43mmで、重量は235g(電池別)。本体と同様の防滴/防塵性能を持つほか、バッテリーを入れず、縦位置グリップとしてのみ利用する場合はSDメモリーカードの収納ケースとして利用可能だ。

縦位置グリップ
別売される縦位置グリップ

なお、ペンタックスでは10月15日に大阪府のホテルグランヴィア大阪、10月21日に東京都の原宿クエストホールで、K10Dの体験会を行なう予定。大阪会場では写真家の谷口泉氏、東京会場では同じく写真家の河田一規氏によるトークショーも行なわれるという。

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