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NEC、スムーズな動画再生が可能なシンクライアントシステムを発表――導入コストも従来比40%削減

2006年11月06日 18時29分更新

文● 編集部 橋本 優

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日本電気(株)(NEC)は6日、シンクライアントシステム『VirtualPCCenter』を発表するとともに、動画再生の高速処理や高品位な音声通話を実現するVoIP(Voice over Internet Protocol:IPによる音声通話)などが特徴の小型クライアント端末『US100』などを発表した。US100の本体価格は5万2000円で、出荷時期は12月15日。またノートパソコン型クライアント端末“US50”(22万円から)も併せて発表した。

手のひらサイズの“US100”

『US100』
『US100』
ディスプレーにアタッチ
専用の取り付け金具で液晶ディスプレー背面にアタッチすることもできる

VirtualPCCenterは、同社サーバー“Express 5800”シリーズと、IPテレフォニーサーバー“UNIVERGE SV7000”、そして新たに開発されたクライアント端末である『US100』『US50』を組み合わせたシンクライアントシステム。US100はその要ともいえるクライアント端末で、本体サイズは幅155×奥行き104×高さ34mm、重量は370g。液晶ディスプレーの背後にマウントして使用することも可能となっている。特徴の1つである動画再生はMPEG-1/MPEG-2(音声はAC3)に対応する。米ServerEngines(サーバーエンジン)社と共同開発したシステムLSI“NetClient”により、パソコン並みの動画再生能力を実現しているという。

従来のマルチメディア処理 US100でのマルチメディア処理
左が従来のシンクライアントシステムのマルチメディア処理で右がUS100でのマルチメディア処理

従来のシンクライアント端末の場合、動画再生などの処理(デコードなど)はサーバー側がソフトウェアで行なっており、サーバー側に多大な負荷がかかるとともに、ネットワークの帯域も大幅に消費していた。US100ではクライアント側がNetClientにより再生処理を行なうことで、処理の高速化とCPUの負荷低減を実現。さらにデコード前の圧縮されたデータをネットワークで送信するため、ネットワーク帯域も節約できる。その結果、動画をスムーズに再生することが可能になった。なお、今後Windows Media Video(WMV)への対応も予定しているという。

VoIP処理
VoIPでの音声データのやりとりはサーバーを介さない

また、US100はUNIVERGE SV7000と連携することで、サーバーの負荷状態に依存しない高品位なVoIPによる音声通話が可能。UNIVERGE SV7000は接続に関する処理だけを行ない、実際の通話は端末同士がデータを直接やりとりするため、サーバーの負荷が高まっても音声品質に影響が及ばないという。

テレビ電話
ちなみにテレビ電話機能については発売時は非対応で現在開発中とのこと。会場では開発中のアプリケーションのデモンストレーションを行なっていた

最大消費電力は13Wで、低消費電力であることも特徴の1つ。クロック周波数400MHzのARM系CPUを搭載し、OSは独自開発のシンクライアント用OSを採用。インターフェースはUSB 2.0×4、DVI-D、音声入出力などとなっている。

B5ノート型クライアント“US50”

『US50』
『US50』

US50は12.1インチのTFT液晶パネルを搭載するB5サイズノート型シンクライアント。サイズは幅270×奥行き217×高さ37.2(最薄部26.2)mm、重量は約1049gとなっている。CPUには超低電圧版Pentium M 753-1.20GHzを採用し、HDDは搭載せず、データの保存は不可能。OSにはWindows XP Embeddedを採用し、接続可能なサーバーOSはUS100と同じ。なお、US100のような動画再生機能やVoIP機能は実装していない。発売は11月15日。

従来比最大40%の初期導入コストを削減

US100、US50ともにICカードリーダーに対応しており、サーバーへのログオンなどをセキュアーに行なうことができる。さらに会社のクライアント端末で行なっていた作業を中断して外出する、といった場合でも、外出先に持っていった別のクライアント端末でサーバーに接続し、作業を続行する、といったことも可能となっている。

『SigmaSystemCenter』によるコスト削減の例
『SigmaSystemCenter』によるコスト削減の例

これらの新製品に対して同社は、サーバーに接続しているすべてのクライアントを常時管理下に置ける集中管理ソフト『SigmaSystemCenter』を提供する。情報漏えい対策や不正侵入検知、ウイルス対策、セキュリティーパッチの一斉配布など、セキュリティー機能を実装するとともに、人事異動や組織変更などによる環境移行も集中管理することができ、コストの面でも従来のシンクライアントやパソコンなどと比べて優位だという。同社の提示した例だと、100台のクライアントを3年間稼動させる場合の1台あたりのコストは、パソコンが81万円(うち運用管理費は71万円)、従来のシンクライアントシステムが68万円(同39万円)なのに対し、SigmaSystemCenterとUS100との組み合わせでは49万円(同30万円)にまで下げることができるという。

さらに同社は初期導入コストを下げるため、最大20台のクライアントを接続できるサーバー環境『Express5800/VPCC仮想PCサーバ』を提供する。必要なハードウェアとソフトウェアをプレインストール済みで、導入コストを従来のシンクライアントシステムと比較して最大で40%削減できるという。価格は191万6000円から。そのほか、管理サーバーに必要なハードウェアとソフトウェアをセットにした『Express5800/VCPP管理サーバ』も用意する。価格は39万1000円。

NECは“NGN”にフォーカス

小林一彦氏
NEC執行役員専務である小林一彦氏

都内で開かれた発表会には、同社執行役員専務である小林一彦氏が出席し、説明を行なった。同氏は次世代ネットワークである“NGN(Next Generation Network)”について「日本が先頭を切って」世界をリードしていくとし、そのためにNECはNGNに注力してくことを強調した。

また、現状のシンクライアントの問題点として、マルチメディア処理性能の低さと端末1台あたりの導入コストの高さを指摘。たとえばパソコン1台の相場が10万円前後とすると、シンクライアントは端末そのもののコストのほかにサーバー側のハードウェアやソフトウェアなどのコストにより、約3倍のコスト(100台構成時で約39万円)がかかるとした。その点VirtualPCCenterでは100台構成時で19万円となっており、導入しやすいことをアピールした。

今回の製品は日本だけでなく欧州、北米にグローバルで展開していくという。同氏によると、現在シンクライアントシステムはパソコンを含むクライアント端末市場の10%を占めているとし、その数は1000万台になるという。その上で、1台を20万円と考えた場合に市場規模は2兆円にもなるとし、その中から今後3年間で約1500億円の売り上げを目指したい、という考えを示した。

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