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【INTERVIEW】子供がネットのコミュニティーに参加するのは、閉じ込もりとは正反対の行動――不思議ネット主宰・五藤氏に聞く


1999年6月25日

1日に始まった子供向け教育ウェブサイト“不思議ネット”が、好調なスタートを切った。ウェブページと電子メールを使って、各分野の専門家、“アドバイザー”と子供達をつなぎ、さまざまな質問に答えてもらうことで、“不思議”を解決するというもの。不思議ネットについては、末尾で詳述する。

今回は、不思議ネットを運営する(株)学習環境研究所の五藤博義氏に、お話を伺った。同氏は、(株)ベネッセコーポレーションで自宅学習教材を提供する“進研ゼミ”用の教材制作などに取り組み、'97年7月に学習環境研究所を設立、現在に至る。


MMCAのモデルプロジェクトとしてスタート
−−不思議ネットの構想を思い立ち、現在の運営に至る経緯を教えていただけますか。

学習環境研究所代表、五藤博義氏
学習環境研究所代表、五藤博義氏



「大学卒業後、現在に至るまで小学生向けの教材制作に携わり、どうしたらより効果的に子供達に教材を活用してもらえるかを考えてきました。近年、教育においてコンピューターの占める位置が重要視されるようになってきました。そこで、コンピューター、特にインターネットを活用した多対多の教育コミュニティーが構築できないか、と検討を続けて、'97年、'98年と実証実験を重ねました」

−−スタートに至った直接のきっかけというのがあるのでしょうか?

「この実験は、こねっと・プラン推進協議会(事務局:日本電信電話(株))のモデルプロジェクトとして(財)マルチメディアコンテンツ振興協会のマルチメディアコンテンツ制作支援事業に採択されたことによるものです。'97年には17校の小学校で約370名が、'98年には小学校16校および個人会員、合計で約700名が参加しました」

「実験を通して、子供達にアドバイスをしてもらう“アドバイザー”もさまざまな分野から集まりました。2年間の実験を通じてノウハウを蓄積し、アドバイザーの陣容も整ったので、1日にスタートさせました」

120名のアドバイザーが活躍
−−アドバイザーの集まり具合はどうですか。また、報酬についてはどのようにお考えですか。

「現在、約120名の方が在籍しています。企業に勤める方や研究者、教師、主婦など、実にさまざまなジャンルの人がいます。また、それでこそ多岐にわたる子供達の“不思議”に答えられると思っています。子供の側から、特定のアドバイザーに絞って質問することもできます。どのアドバイザーに聞けば最も効果的な回答を得られるかを、自分で判断することも学習の1つと考えています」

五藤氏は「不思議ネットは、極めて能動的な学習システムです」と語る
五藤氏は「不思議ネットは、極めて能動的な学習システムです」と語る



「学校などの教育機関と違い、不思議ネットには指導要領というものは存在しません。そこでアドバイザー向けに独自のマニュアルを作成し、配布していま
す」

−−アドバイザーには、教員の方が多いのですか?

「教職員の資格を持っている方はほとんどいないので、どのように子供に接したらいいか、どんな形でアドバイスするのがいいかを解説しています。特に、ネットワークという互いの顔が見えない環境での学習指導において、なにが大切かをポイントに解説してあります」

「アドバイザーへの報酬については、実験のときは完全にボランティアでした。今も金銭は特に支払っておりません。ただ、アドバイスの数に応じて何らかの報酬を支払うことも検討しています。もっとも、アドバイザーに立候補するような人は大抵ボランティア精神が旺盛で、“報酬なんていらない”という人がほとんどなんですよ」

問題が与えられる学校や塾とは違う
−−不思議ネットは、現在の教育の中で、どんなポジションを占めるのでしょうか。

「現在、塾というものが学校教育に欠かせない存在として認識されています(*)。これは、学校ではカバーしきれない部分を補助するものとして、塾の存在意義が見出されているものです」

編集部注:学習塾について、有馬朗人文相が'98年10月、日本経済新聞の取材に対して、「小学校時代にずっと塾通いなどというのは絶対に良くない」と発言した。しかし、その約8ヵ月後の今年6月、弊害を指摘しつつ塾の存在意義を容認する発言をしている。文相のこの発言の“変化”は文部省も塾の存在意義を認めつつあることを示すものとして報じられた。

「しかし、現在問題視されている学級崩壊などの要因として塾が槍玉に上がっているのも事実です。学校に比べて、個人の学習能力や進捗状況に応じてきめ細かいサポートが提供できる塾には確かにメリットはあります。しかし、“塾にさえ行っていればいい”といった風潮を生んだり、高額な月謝が経済的負担となったりしています」

−−不思議ネットは学校と塾のいずれとも異なる存在とお考えなのですね。

「そうです。不思議ネットは、学校、塾、いずれともスタンスが異なります。受動的な学習は存在しません。子供がそのとき“不思議に思った”こと、その感覚を最大限尊重して、その疑問に必ずアドバイザーが回答やアドバイスを与えます。質問を投げ掛けたのに、リアクションがない、ということは絶対に起こらないようにしていくつもりです」

「不思議に思ったことを解決することで、子供は“次”に進みます。新しい“不思議”を探すことができるのです。学校や塾で次々と課題ばかり与えられる受動的な学習とは根本的に違います」

コミュニティーへの働き掛けは実は閉じ込もりと逆の行動
−−プライベートな質問にはどう対応するのでしょうか。

「現在、不思議メーラーでコメントを書きこむ際の匿名は認めていません。発言に責任を持って欲しいということと、中傷や個人攻撃に対するブレーキとしての機能を持たせるためです。しかし、参加する子供が増えれば、書き込みが多様化することも予想できますし、たとえば両親の不和など、プライベートな書き込みをする子が出てきてもおかしくありません。この点については、会員が増えてきたら対処するつもりです」

−−インターネットやパソコンにのめりこんで、ますます閉じ込もる子供が増える懸念はありませんか。

「確かに、子供が1人でパソコンに向かっているというのは、ネガティブな印象を持たれるかもしれません。しかし、不思議ネットには、現代社会が失いつつある、大人達がその知識や経験を子供達にフィードバックする“コミュニティー”が広がっているのです。不思議ネットを利用することで自分の中に閉じ込もらずに、考えていること、感じたことを外へ出すというサイクルが確立すると考えています」

「バーチャル組織で運営」
−−現在、何名のスタッフで運営しているのですか。

「専任スタッフは私を含めて3名です。意外に少ないと思われるかも知れませんね。しかも、スタッフはほとんど顔を合わせることはなく、それぞれの仕事場で個別に仕事をしています。たとえば、今日お話をしているこのマンションの一室は不思議ネットのサーバーを置いてありますが、ここで普段仕事をしているスタッフは1人だけです」

「運営そのものも、インターネットと電子メールなしには考えられないんです。ちょっとした会議や打ち合わせも、電子メールで済ませてしまいます。バーチャルな教育コミュニティーを、バーチャルな組織が運営しているという感覚ですね」

−−コスト面で黒字になるにはどの程度の会員が集まる必要があるのでしょうか。また、現在会員はどの程度集まっているのですか。

「最低3000から5000人は必要でしょう。徐々に増やしていくつもりです。焦りはありません。会員は現在、100人を若干上回る程度です」

−−今後の方針についてお聞かせ下さい

「とにかく、1人でも多くの子供達に参加してもらいたい。そのためのシステム整備を順次行なっていきます。会員数が増えてきたら、それをいくつかのブロックに区切って、アドバイザーよりもさらに親密に子供達に接する“ペアレント”を設置することも計画しています」

「今はまだ公表できませんが、秋にはさらに新しいことが発表できると思いますよ。不思議ネットに注目していてください」

専用ブラウザーでアクセス

不思議ネットトップページ
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不思議ネットでのコミュニケーションには、専用のメールソフト、『不思議メーラー』を使用する。名前はメールソフトのようだが、不思議メーラーはブラウザーソフト。パソコンにインストールすると、不思議ネットのサーバーへのアクセスと、書き込みログファイルのダウンロード、書き込みに対するコメントなどが送信できるようになる。

不思議ネットに参加している他の子どもたちと意見交換もできる。小学3年生から6年生まで参加可能となっている。料金は月額1000円。入会すると、不思議メーラーのほか、ゲームや学習コンテンツが収録されたWindows 95/98対応のCD-ROM『不思議CD-ROM』が送付される。

また、保護者や学校の教師向けに、最新の教育関連情報や、“学年別漢字配当チェックツール”などのソフトウェアを提供するホームページ“不思議倶楽部”が開設されている。

インタビューの間、終始熱っぽく語る五藤氏からは、教育にかける意気込みがビンビン伝わってきた。マンションの一室から始まったバーチャルな教育コミュニティーの行く末に期待したい。

(編集部 白神貴司)


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