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【INTERVIEW】「10月からは中古車業者も巻きこんだ100台規模のプライスダウンオークションを始めます」──株式会社ジャック 副社長上山健二氏に聞く

1999年09月08日 00時00分更新

文● 編集部 三浦和也

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中古車の売買という市場で、積極的にインターネットを利用することで急成長している企業がある。「愛車の価格ご存知ですか? 安心の無料査定受付中」のウェヴ広告、「日本中古車査定センター」の看板でおなじみの株式会社ジャック(以下JAC)がそれだ。この7月から始めた“プライスダウンオークション”という耳慣れぬ名のインフラを武器に、さらに拡張するJACのインターネット戦略を副社長上山健二氏に直撃した。

株式会社ジャック 副社長上山健二氏
株式会社ジャック 副社長上山健二氏



発想の転換『プライスダウンオークション』

──JACさんは“中古車出張査定”として有名ですが、中古車の買取に目をつけたのはなぜですか?

「以前は、クルマを買い換えようとした場合、ディーラーで下取りしてもらいましたよね。そのクルマが中古車市場に出るまでに卸業者、オークション、そして小売り業者と、旧オーナーから新オーナーまでは4社も間に入っていたのです。当然それぞれがマージンをとりますから必然的に中古車が高くなる。そこでJACは93年から買取りを行なって在庫を持たずにオークションに流しました。2社分の流通を1社で行なったのです。そして、今年の春から小売りも始めました。“カートレット八王子”とみなとみらいの“カートレット横浜”そして“カートレット東名横浜インター”です。従来はユーザーどうしの間に4つあった業者をJACひとつにすることで、より高い買取りと、より安い販売が可能になったわけです」

(1)従来の下取り流通

旧オーナー
 ↓
ディーラー
 ↓
卸業者
 ↓
オークション
 ↓
小売業者
 ↓
新オーナー

(2)JACの買取り流通

旧オーナー
 ↓
JAC(買取りと小売り)
 ↓
新オーナー

──なるほど、中古車の流通革命を起こしたわけですね。このシステムの中にインターネットを採り入れたのはいつからですか?

「雑誌広告などにフリーダイヤルを載せて、電話依頼による出張査定買取を始めたのは93年からです。そして、97年からホームページ上で査定をできるようにしました。車種や年式などを入力していただくと、電子メールか電話/FAXで査定額をお知らせするという仕組みです。もちろん実車の状態を見ないと正確な金額は出せませんから、20万円くらいの幅を持たせて査定額を出すようにしています。正確な査定額は、実際に査定士が訪問して出させてもらえるようお願いしています。そして、この7月からはホームページ上で“プライスダウンオークション”を始めました」

──ふつう、オークションは値段がつり上がっていくものですよね。“プライスダウンオークション”というのはどういう仕組みですか。

「たとえば、150万円のクルマを、12時スタートで5分おきに5000円ずつ値段を下げていくのです。最終が21時までならば108回、合計50万円以上値段が落ちるわけです。値下げ幅はクルマによって変わる仕組みです。自分がほしいクルマがあったら、もう5分待って値段が下がるのを待って入札するか、ライバルに先に取られないように先手必勝で落札するか。自宅で手に汗を握りながらオークションに参加できるというわけです」

──すごいアイデアですね。だれが考えたのですか?

「うちの社長の渡邉です。じつは“インターネットで行なうプライスダウン形式のオークション”として特許申請中です。楽しみに待っているところなのですよ。週末に5分ごとに値段が落ちて行く“ワンデイオークション”と1週間で毎日値段が落ちて行く“セブンデイズオークション”のふたつでやってきましたが、このたび日曜日1日で終わるオークションひとつに絞って“プライスダウンオークション”として統一しました」

『カートレットみなとみらい』はよこはまコスモワールド駐 車場に隣接している。この駐車場の経営もJACが行な っているという
『カートレットみなとみらい』はよこはまコスモワールド駐 車場に隣接している。この駐車場の経営もJACが行な っているという



“インターネットは入り口”のつもりが・・・

──話はもどりますが、最初に始めたインターネット査定申し込みの効果はありましたか?

「ええ、いまでは月に1万件もの査定依頼があります。その中で買取りに至るお客様が月間500台近くになって、まだまだ増えています。全国の直営店での買取りがだいたい3000台ですので大きな割合です。最初は“あなたのクルマを買取ります”という広告を打っていたのですが、途中から“あなたの愛車の価値はいくら”というとっつきやすい表現にしました」

──売る気がない人も査定額しだいで気が変わることもある、ということですか?

「それもあります。思いのほか高くて“じゃあ、買い換えようか”と気が変わるお客さんは大変多いです。また、今は売る気がなくても半年後の車検のときには売ってくれるかもしれません。JACホームページから査定を申し込んでいただくときに車検の時期や連絡先も入力してもらっていますから、ウチの優秀な(笑)テレマーケティングの女性たちが車検の時期が近づくと“無料ですから査定させてください”と営業するのです」

──それは電子メールではなく、電話でですか?

「電子メールの場合もあります。でも、やはり電話のほうが強いですね。私どもは、クルマという高額の商品の場合、最初から最後までインターネットだけで、完結することには馴染まないのじゃないかと思っています。インターネットを入り口のひとつとして、ある段階で信頼感のある査定士や丁寧な接客に触れていただいて安心感をもって取引きをさせてもらうのがよいと思っています」

──インターネットだけではクルマの売買は成立しにくいと。

「その傾向はあると思います。なのでプライスダウンオークションの落札者には、近くのカートレットで実車を見ながら契約をする方法と、契約まで電子メールで済ませて納車になって初めて実車に出会う“ネット契約”を用意しました。私はネット契約はいないと思っていたのですが、社長の渡邉は絶対にいると。しかし、プライスダウンオークションを始めて最初の落札者がネット契約を選んだのです(笑)。2カ月ですでに3件もネット契約がありました。驚きです」

──それはJACさんのクルマの質を信用しているからできるのでしょう。

「最初はプライスダウンオークションに出品するのは売れ残りだとか、怪しまれることがありましたが、むしろ良いクルマを出しています。小売り店のカートレットに、プライスダウンオークションに出品されるクルマです、と表示して展示してあるのですが、先日、そのクルマを見て気に入ったお客様が店内にある45インチの大画面を見ながらオークションに参加しました。で、その人はオークションが始まって2分、まだ1回も値段が下がらないうちに競り落としてしまったのです」

──スタート価格でも十分魅力的な価格だったわけですね。

「現在は、3台とか10台の規模でプライスダウンオークションを開催していますが、この10月からは100台規模でやろうと計画しています。そして、年内には300台規模に広げたいと思っています」

──しかし、急激にクルマの台数を増やすと注目されにくいクルマはどんどん値段が下がってしまいませんか?

「参加するユーザーに比べてクルマが多いと何十回も値段が落ちてしまってオークションが成り立たなくなる恐れがあります。そこで、10月からは業者さんにも参加してもらえるような仕組みをとり入れます」

──逆にいえば、業者も参加するほど安いクルマをインターネット経由で買えるわけですね。

「そして将来は、ユーザーの愛車も委託という形でJACホームページのプライスダウンオークションに出品できるようにしようと思っています。さらに次の段階として、業者の方々にもクルマを出品してもらおうという計画です」

『カートレット八王子』は立体店舗になっている。カートレ ットはどこも金、土、祝祭日の前日は深夜2時まで営業 しているため、夕涼みをかねてクルマを見にくる人もいる
『カートレット八王子』は立体店舗になっている。カートレ ットはどこも金、土、祝祭日の前日は深夜2時まで営業 しているため、夕涼みをかねてクルマを見にくる人もいる



顧客情報とプライスダウンオークションで広がる可能性

──広がりますね。インターネットの世界をどんどん開拓してゆこうという計画ですか?

「ネットと地上も積極的に結び付けて行こうと思います。これから全国に展開して行く『カートレット』にもインターネット端末をおいて実車を見ながらネット上のライバルとオークションの駆け引きを楽しんでほしいし、新宿や渋谷など人が集まる場所にサテライトショップをおいてそこの端末から参加するなんてことも考えられます」

──コンビニやガソリンスタンドとの提携も視野に入っていますか?

「ええ、まだ何も話は進んでいませんが将来はそのようになるかもしれません。今は中古車を中心に新車などクルマを扱っていますが、毎月1万人分あつまる査定依頼情報を生かして違うビジネスに展開してゆくかもしれません。たとえばプライスダウンオークションというインフラが整えば、クルマだけでなく家具なんかがでてくるかもしれない・・・という展開です」

──インターネットというインフラをうまく組み込んでビジネスに結びつけるわけですね。インターネットビジネスを発展させるにあたって今後問題になる部分はありますか?

「やはりよく言われているように、家庭の通信費の高さでしょうね。仕事では会社からじっくりインターネットを見られる人も、家に帰ると時間を気にしてインターネットに接続しなければなりません。今後、インターネットで商取引が活発になるためには低料金の常時接続が必要でしょうね」

──最後に、プライスダウンオークションで目的のクルマを安く買うコツを教えてください。

「コツですか? 我われは、オークションに出品するクルマを選ぶのになるべく人気があるクルマを選ぶようにはしていますが、なかなか“あなた”がほしいクルマを選ぶことはできません。ところが、お客様のほうから積極的に“97年型のハイラックスサーフでボディはワインレッド、走行2万キロ以下だったら絶対ほしい”というようなリクエストを出していただければ、スタッフは何とか見つけようと努力します。電話でも電子メールでもどんどん指名のスタッフを相手に要望を出してください。好みのクルマがオークションに登場するのをじっと待っているよりもグッとチャンスは広がるはずです。あとはオークションで希望の価格になるのを待って落札してください」

  • JAC
  • 最新ニュース JACによるとプライスダウンオークションの開催は10月より日曜日のみになる予定。 時間は12時から20時まで、落札価格の先行予約は水曜日から土曜日まで可能となる。 また、9/15~10/31までの間にプライスダウンオークションでクルマを購入された方、もしくは中古車商談予約にこられた方のなかから抽選で20名に対し、3泊5日のラスベガス旅行が当たるプレゼントも実施するということだ。

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