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パブリックなネットワークを取り巻くオランダの現状は?――World InfoCon モデレーター、エリック・クライテンバーグ氏にきく


2000年8月16日

エリック・クライテンバーグ氏は、オランダ政府に対して政策の提案を行なうセンター、“De Balie”(政治文化センター)で、ニューメディア・プロジェクト・コーディネーターを担当している。エリック氏は、先ごろベルギー・ブリュッセルで開催された“World InfoCon”のモデレーターとして活躍し、社会・文化に関するディスカッションの場を提供してきた。エリック氏に、“World InfoCon”の背景と成果、そしてアムステルダムのパブリックなサイバースペースの動向についてきいてみた。


“De Balie”(政治文化センター)、ニューメディア・プロジェクト・コーディネーターのエリック・クライテンバーグ氏

ポリシーメーカーを巻き込みつつ、サイバースペースで起こっている問題を討論

――World InfoCon のカンファレンスを通じ、モデレーターとして感じられたことは?

「情報に関するグローバルな構造について、様々な立場のスペシャリストが批判的に議論を交わせたのは大きな収穫であった。特に、(情報機関や企業による)プライバシーに関する問題点が明確に浮き彫りになったことは大きい。何よりも、スペシャリストやメディアアクティビスト、アーティストだけでなく、EUや国際機関のポリシーメーカーがともに同じ問題に関して意見を共有できたことは有意義だったよ」

「一方で、“World-Information.Org”(※1)も極めて興味深いエキジビションだったね。現実の世界が情報通信によってどういう状態になっているのか端的に示していた。コンセプチャルなアートプロジェクトや、告発するような展示といった、特別な人を対象とするものとは一線を画していた。啓蒙的なエキジビションとして多くのオーディエンスが興味をもって吸収してもらえるかたちであったし、現実、来場者の反応も良かった。メディア文化をよりパブリックなものに広げて行く上で、とても可能性に富んでいた。これから、アジア各都市で都市計画を啓蒙的に見せた“シティース・オン・ザ・ムーブ展”(※2)みたいに、ヨーロッパ各地でも展開すべきだよ」

※1 “World-Information.Org”:詳細レポートは、【World InfoCon Vol.5】グローバルなデジタルメディア社会の光と影を表現したエキジビション “World-Information.Org”を参照のこと

※2 “シティース・オン・ザ・ムーブ展”:'97年末にウィーンで開催されたアジアの巨大都市をモチーフにした大規模な美術展。その反響は大きく、以降、ヨーロッパ各地を巡回して開催され続けている

――このようなカンファレンスはヨーロッパで日常的に行なわれているのですか?

「パブリックなネットワークをどうつくっていくのかを考える場合、アイデアや経験を伝える場を提供し、それぞれが持っている物事をクリアにしてコミュニケートできることが必要。コンファレンスやプレゼンテーションのためのイベントなどは、共同作業の機会をつくるための回路として重要なひとつの手段となっている。また、このような場がパブリックな関心を伝え、それを集め、取り組みを拡大していく機会にもなる」

“デジタルスタッド”(※3)や“De Waag”(新旧メディア研究所)(※4)というメディア文化センターがアムステルダムに生まれたのも、“De Balie”でパブリックなデジタル社会をアムステルダムでどのように展開していくか議論してきた結果の現われだ。このように地域コミュニティーベースの問題の掘り下げは、メディア文化センターがあるところでは日常的に行なわれている。それぞれの地域で、企画者が持つ関心や問題点に応じて国際的なものも気軽に行なわれている」

※3 デジタルスタッド:'94年に生まれたインターネット上での都市コミュニティー

※4 De Waag:新旧メディア研究所。建物の名前から一般的に“De Waag”と呼ばれている。あらゆるメディアをパブリックな場でどう使って行くのかを研究する一方、マルチメディア上でのインターフェースの開発や情報化分野における知識ベースでのコンサルティングを行なっているメディア文化センター

パブリックなデジタル社会をどのように展開していくのか、議論して生まれた“De Balie”(政治文化センター)

「しかし、その中でもWorld InfoConは特別なものだったと思う。というのは、メディア文化のスタンスに立った国際的なカンファレンスは、スペシャリスト、メディアアクティビスト、アーティストなど、どちらかといえば対抗的な構成によって展開されてきたけれど、今回はポリシーメーカーを数多く招き、コミュニケーションをはかれる現場になったからだ。もはや情報通信分野における文化的な役割は、教育やあらゆる政策にまで影響を及ぼしている。そのような状況では、対抗的な立場にある彼らに関心を伝え、議論を深める場としてカンファレンスを機能させることが、パブリックな関心や問題意識を政策化してゆくことにつながる。そういうことが重要だからね」

公的機関に提案したプロジェクトが、ほぼ全て満額に近く通るオランダという国

――パブリックなネットワークを取り巻くオランダの現状は?

「オランダでのパブリックなサイバースペースを推進するための政策グループとして、'97年に“バーチャルプラットフォーム”を結成した。このグループは、私がいるDe Balieと、メディア文化センターであるDe Waag、V2_協会(ロッテルダム市)(※5)、それにネーデルランド・デザイン・インスティテュート(デザイン・シンクタンクNPO)が一緒になった団体だ。オランダ政府や地方政府に働きかけを続けてきたのだが、以前に比べてその結束が緩み始めている。なぜなら、それぞれのセンターが公的機関に提案したプロジェクトが、ほぼ全て満額に近く通るようになってしまったので、結束する必要がなくなってしまったのだ」

※5 V2_協会:メディアにおけるテクノロジーとアートとの関係を'82年より追求し続けている、ロッテルダムにあるメディア芸術センター。2年に1度開かれるダッチ電子芸術祭のオーガナイザーとしても知られている

「それぞれのメディア文化センターの活動が、行政当局にも認知され、政策づくりの現場に個々で関わるようにもなってきたし、情報通信分野の好況でビジネスの分野でもポピュラーな存在になりつつある。そんな関係の例を挙げてみると、毎年De Waagが“国際ブラウザーの日”(※6)というイベントを開催してきたのだけれど、今年は今までとうって変わって、ロイヤル・ダッチ・テレコムの協賛やネット系ベンチャーとのコラボレーションもあった」

ネットスケープのブラウザーのソースコードが開放された日を記念するもの

「パブリックなサイバースペースに関心を持ってきた、メディア分野やデザインのコミュニティーにいた人たちが、今やこの分野の担い手として活躍しているんだ」

筆者の手によるヨーロッパのパブリックなサイバースペースとメディアアートに 関するレポートが右記のURLでも読めます http://coolstates.com/

(岡田智博 coolstates.com)


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