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「“ダイナブック”の香りは受け継いでいる」――“パソコンの父”アラン・ケイ氏が来日


2001年10月26日

パーソナルコンピューターという概念を考えだし、理想のパソコンとして“Dynabook(ダイナブック)”を構想したアラン・ケイ(Alan Curtis Kay)氏が25日、東京・麹町で講演し、また合同インタビューに応じた。

アラン・ケイ氏
アラン・ケイ氏

ケイ氏は、(財)デジタルコンテンツ協会の主催するセミナー“パーソナルコンピュータの革命は終わったのか?”で講演し、パソコンやオブジェクト指向プログラミング、グーテンベルクの活版印刷の発明と比較したパソコンの位置付けなどを語った。

インタビューでケイ氏は、現在も子供向けのプログラミング言語『squeak(スクイーク)』を開発中であり、「大人をはるかに凌ぐくらい、子供の頭脳が考えられる環境をsqueakで」提供することを目指し、そのsqueakは「Dynabookの香りは受け継いでいる」と語った。ケイ氏は、40年以上もDynabookという理想を追求している。

ケイ氏は、理想的なパソコンの形状について、以下のように語った。

「1960年代、私たちは3つの形状を考えた。まず、タブレットサイズにしてみたらどうかということ。これは画素数が問題になった。100万画素程度で、タブレットサイズにきれいに表示できるかというと、それは難しい。そこで、次に考えたのがヘッドマウント、頭につけるというものだった。これは60年代後半から考え始めた。米マクダネル・ダグラス(McDonnell Douglas)社が開発した、瞳孔の動きを追尾して、そこに画像を作り出すというものは、きちんと追尾するということが難しかった」

「3番目は、ニコラス・ネグロポンテ(Nicholas Negroponte)氏(MITメディアラボ初代会長)の考えた、位置センサーを内蔵する腕時計型のコンピューターだ。人工衛星によって、世界中どこにいてもその位置を把握し、音声認識などで、ウェブなどにもアクセスできる。そして、たとえば照明器具などを指差すと、位置センサーがそれを認識して、照明が点く。これら3つの形態と、そのバリエーションを考えた」

「PDAや携帯電話などでは、ディスプレーの画素数の問題がある。おそらく、将来最も可能性があるのは、単行本サイズよりももう少し大きいノートパソコンで、そこから電話を引き出して使うというような形になると思う。携帯電話のような端末を、耳まで持っていきたいと思う人は、だんだん少なくなってくる。ディスプレーが付くと、なおさら難しくなる。スピーカーを耳まで持って行くのにはどうすればいいのか。これが次の課題になるだろうが、それはインダストリアルデザインの問題だろう」

「マイクロソフトのタブレットPC、あれはなかなか良かったと思う。だが、キーボードがなかったのが致命的だった。キーボードをなくすのは難しい。キーボードと、ディスプレーの価格がどこまで下がるかということ、重さがどこまで軽くなるかということ、どういう形態になるかは、その3つがポイントになる」

また、現在のsqueakと、構想当初のDynabookとの違いについて、ケイ氏によると「付け加えたところもあり、割愛したところもある」。Dynabookと違うことは、32bitのカラーグラフィックスや3Dグラフィックスを扱えることだという。

セミナーで披露したsqueakのデモ
セミナーで披露したsqueakのデモ。動画が流れ、画面上を3Dオブジェクトが動きまわった

なお、squeakによる子供への教育については、「重要なことは学習環境にそれを置くこと、子供たちがどういうニーズを持っているのか、どういうことを求めているのかを知らなければならない」とし、以下のように説明した。

「いい教育戦略は、子供たちのことをよく知ることによって、子供が知りたいことと子供が知るべきことが、同じだと導いていくことだ。だが、子供にやる気を起こさせるのは難しい。子供用のコンピューターというのは難しい。結果があまり出ないのに、資金を提供し続けるスポンサーが、よくいてくれたものだと思う」ケイ氏は、「本当の子供用のプログラムを作りたかった」と語った。

また、「1つ言いたいのは、教養のある、教育のある人とは、どういう人かということだ。本当に教養が身につけば、「私は教養がある」とは言わなくなる。ある点を過ぎると、本当に世界のことを何も知らない、これから学ぶことが多すぎると、分かってくる。そして、その一点を過ぎると、教育のある人は生涯学習者になる。ここまできたら教育終わり、はい教養人というわけではない。教育とは1つの旅のようなものだ」と、生涯教育についての自説も披露した。

「本当の子供用のプログラムを作りたかった」
「本当の子供用のプログラムを作りたかった」

セミナーでケイ氏は、パソコンが一般に広まってから現在までを、「実に退屈な20年」と評した。ケイ氏によると、「本当に革命が起こるのは、21世紀のいつか」であり、その時には自分も、このセミナーに参加している人も、だれも生きていないだろうと述べた。

(編集部 中西祥智)


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