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月刊アスキー遠藤編集長が聞くPocketGearの戦略。そしてMobile GearはLinuxを搭載!?――NECモバイル関連の責任者、成澤祥治氏インタビュー

2001年11月05日 00時00分更新

文● 聞き手:月刊アスキー 遠藤 諭 /構成:編集部 中西 祥智

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「Pocket PCってどうなんです? Mobile Gearはやるんですか?」

右が成澤氏、左が遠藤編集長
右が成澤祥治NECコマーシャルプロダクト事業部グループマネージャー、左が遠藤諭月刊アスキー編集長

日本電気(株)は10月5日、Pocket PC 2002を搭載するPDA『PocketGear(ポケットギア)』を発表した。しかし、編集者御用達と言われる『Mobile Gear(モバイルギア)』は、2000年11月以降、新製品の発表がない。

PDAおよびHandheld PC市場において、NECは何を目指すのか。それよりなにより、Mobile Gearはもうやめてしまうのか?

発売以来すべてのMobile Gearを購入し、また最近ではPalmマシン用のGPSモジュールを買いあさっていると言われる月刊アスキー遠藤諭編集長が、10月9日に東京・三田のNEC本社において、NECのモバイル関連の責任者である成澤祥治氏(コマーシャルプロダクト事業部グループマネージャー)にお話を伺った。

成澤祥治NECコマーシャルプロダクト事業部グループマネージャー
成澤祥治NECコマーシャルプロダクト事業部グループマネージャー。手に持っているのが『PocketGear』

Handheld PCは風前のともしび?

[月刊アスキー遠藤諭編集長(以下遠藤編集長)] 今回、PocketGearを出されて、ワールドワイドでPocket PCが盛り上がっていますが、僕のような、Mobile Gear系の、キーボード付きのちっちゃいマシンを使う人はですね、下からはPalmにあおられ、上からは某社のs30(日本アイ・ビー・エム(株)『ThinkPad s30』)に攻められ、横からもPocket PCに攻められてですね、ほとんど風前のともしびのような……。
[NEC成澤祥治氏(以下成澤氏)] いやいや、そんなことはあらへん(笑)。
[遠藤編集長] 先般も、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)のある方に、「キーボード付きのWindows CEマシンはなくなるんじゃないか」とお話ししたんです。
[成澤氏] いやいや、そんなことは……。
[遠藤編集長] その方はですね、「メーカーがやめたら、うちが作る」と言ってまして、そういうとメーカーさんがやめちゃうんで、言わないほうがいいんですが。
[成澤氏] ははは(笑)。
[遠藤編集長] そういう苦しい立場にあるんですが。そうは言ってもですね、PocketGearの話をしないと、このインタビュー的にはまずいと思うんですが……。あの、Mobile Gearはやるんですか(笑)?
[成澤氏] 今、Mobile Gearはですね、店頭では確かに、そんなに量は売れていないんですが、ランキングの中でも1番ビリにへばりついているような……。
[遠藤編集長] そうなんですか?
[成澤氏] 上から5番目とか6番目とか、けっこう低めに……。一時は、トップを独走って感じだったんですけど……。
[遠藤編集長] そうですよね。
[成澤氏] ただ、企業系では、けっこう今、順調なんですよ。前年比を下回ることがない。そういう意味では、コンシューマーからコマーシャルのほうへ、シフトしてきたということが言えると思うんですよね。で、かと言ってコンシューマーをやめるかというと、そんなことはありません。Handheld PCでは、ドコモへのOEM製品で『sigmarion』を出しています。同じOSを搭載している関係で、次期OSというのが、よく見えてくる……。
[遠藤編集長] 『Handheld PC 2002』というのが出るんですか?
[成澤氏] マイクロソフトも考えているみたいで、社長の阿多さん(マイクロソフト(株)阿多親市代表取締役社長)が、この前のPocket PC 2002の発表会場で「来年やります」と言っていたと思うんで。だから、そのつもりで今、準備しているところです。
[遠藤編集長] 昨年、成澤さんにお会いしたときに「Mobile Gearどうですか」と伺ったら、「まあなんとか、会社にはやめろと言われずに」とおっしゃっていたんだけれども……。
[成澤氏] そうそう(笑)。
[遠藤編集長] 企業向けが膨らんできて、よくなってきたと……。
[成澤氏] 膨らんでいると言えるほど、膨らんでいませんけどね。まあなんとか、企業系の部分に、というところですね。ユーザー企業のほうも、これからモバイルコマースなども含めて、「何かせなきゃあいけんねえ」という意識は、けっこう出てきた。そのために「提案してください」、ということを言ってきていますから。それで導入するかどうかは、別問題ですけどね。

でも、我々のほうから「どうですか、どうですか、入れませんか?」と言わなくとも、向こうから来るほうが多くなってきたと、そういうムードはありますよね。もう少し景気が良くなって、事業の環境が良くなると、拍車がかかるとは思うんですけどね。それは我々だけではなくで、他社さんも……。
[遠藤編集長] コンパックコンピュータ(株)さんなんかは、たしか、新聞の1面広告をやりましたよね。あれは、Windows CE業界においては、はじまって以来の一大事件、奇跡というか、尋常ならざることだと。社長さんも「『iPAC Pocket PC』に全力を入れていく」と、どこかでコメントされていたんですけど。それだけ法人からの需要が伸びてくると、事例としてはどういうものがあるんでしょうか?
遠藤諭月刊アスキー編集長
遠藤諭月刊アスキー編集長。手にしているのは、『Mobile Gear MC-MK22』
[成澤氏] けっこう、業種は多種多様ですね。
[遠藤編集長] 昔ながらの、保険のおばちゃんが持って、というのが想像できるけれども、そうじゃなくて、受発注ものとか?
[成澤氏] たとえば、客先に出向いて、その場でレシートを発行する、簡易POSとして使う、そういったものが、結構多いですね。
[遠藤編集長] どれくらい出ているんですか?
[成澤氏] そんなに多くはない。台数としては多くはないんですけれども、事例としては、十数事例あるんですよね。店舗アドバイザー用の端末とか、看護婦さん用に、患者さんのデータをPDAで持って歩いて、無線LAN使ってとか。
[遠藤編集長] 看護婦さんもPDAですかぁ。いずれにしろ、そういう業務用だとすると、銀行端末みたいにど~んと……。
[成澤氏] ど~んとはいかないですね。そんなに最初から、1000や2000、3000とね、膨大な数が入るというのは、またそれだけの仕組みが要りますし、機械を入れるだけじゃなくて、インフラの部分も含めて、いろいろ手をかけなければならないわけですからね。
[遠藤編集長] そういうアプリケーションって、現状では、スクラッチでソリューション的に開発しているんですか?
[成澤氏] ええ。我々(PocketGearでは)50のソリューションをそろえると宣言しています。業務中心なんですけれども、顧客に合わせてインターフェース作って、コンポーネントをそろえるんですよ。いくつか組み合わせて、ちょっと作りこめばいいというものを、今整備しつつあると。
[遠藤編集長] .NETがありますよね。また、今回のPocketGearでは、Javaを……。
[成澤氏] ええ、そうですね。
[遠藤編集長] 両方のところに、入っていく感じなんですけれども、これからの、そういう世界に行くっていうのは……。まあ、今回は乗せられたというだけかもしれませんけれど、それがちゃんと形になってくるのは、どのくらいで、なおかつ、本当に行くんですかね?
[成澤氏] いや、なかなか。「本当に行くんですかね」と言われると、なかなかとしか答えようが……。
[遠藤編集長] でも、いわゆる.NETの、ホテルに着けば、タクシーに乗れば、どこでも、どんな端末でも同じように利用できるというような……。
[成澤氏] いや、方向性としては、確かにありますよ、それはね。また、そういう方向に持っていこうという機運も、我々自身も含めて、ありますからね。ただ、どういう形で最終的なイメージになるかは別です。ともかく、トライする1つの方向であると、そういう認識で今動いていますけれどもね。それを、企業の中に、限られたシステムの中に、どう取り込んでいけるかということを含めて、考えています。

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