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米インテルのバレットCEO、IT業界関係者向けイベントで講演──モバイルPentium 4は来週登場

2002年03月02日 23時02分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米インテル社のクレイグ・バレット(Craig Barrett)CEOは1日、インテル(株)が開催した報道関係者、IT業界関係者向けイベント“インテル インダストリ フォーラム2002”において講演を行なった。バレット氏はIT業界の不況は正常なビジネスサイクルの範囲内だとし、いまこそ次代の成長に向けて技術革新・再構築を進めるべきと述べた。またモバイルPentium 4-M搭載のノートパソコンを10数機種を展示し、月曜日には購入できると明らかにした。

米インテルCEOのクレイグ・バレット氏。落ち着いた口調で革新の必要性を語った
米インテルCEOのクレイグ・バレット氏。落ち着いた口調で革新の必要性を語った

バレット氏の講演は、米国で2月25~28日に開催された“Intel Developer Forum Spring 2002”の初日に同氏が行なった基調講演の内容をほぼ踏襲したもので、昨今のIT産業の減速や景気後退にあたって、技術革新や産業構造の再構築の必要性を訴えるものとなった。またこのイベントに、日本のIT業界のトップが出席することを踏まえて、日本のIT産業の将来に向けて注力すべき点を挙げながら、今後も「国際的なリーダーシップをとるチャンスは大いにある」とエールを送った。以下講演の概要をお伝えする。

バレット氏が示した産業発展のグラフ。最初の“非合理的な発展期”から、“混乱期”を経て“合理的な成長期”に進むというもの
バレット氏が示した産業発展のグラフ。最初の“非合理的な発展期”から、“混乱期”を経て“合理的な成長期”に進むというもの
上の産業発展曲線に合致している例として、鉄鋼業界を挙げた
上の産業発展曲線に合致している例として、鉄鋼業界を挙げた

バレット氏はまず、産業は急成長した後失速し、その後再び成長に転じるという産業発展のモデルを示し、鉄鋼業界の成長曲線とIT業界の成長曲線を比較した。コンピューター業界と通信業界はまさにこの発展モデルの失速状態にあるのであって、不況だからといって必要以上に悲観的になる必要は無いという。

コンピューター業界と通信業界はまさにいま、混乱期にあるという
コンピューター業界と通信業界はまさにいま、混乱期にあるという

現在、世界では5億台のコンピューターがネットワークに接続され、5億マイル(約8億km)の光ファイバー網を通して10億台のデジタル機器が使われており、インターネットの普及が生活の基本的なやり方まで変えようとしているという。IT業界においては、これまで別々の発展をしてきたコンピューター業界と通信業界がインターネット/デジタル通信の普及によって融合しつつあり、これまで10年間も大きな発展を遂げてきたが、これからの5年、10年は今まで以上の成長が見込めるとした。半導体業界の進歩の指標として“ムーアの法則”があるが、光ファイバーなどを使った通信速度の向上の進歩のスピードはムーアの法則を上回っており、コンピューターと通信が融合していく今後が“楽しみな時期”になるという。

バレット氏は、かつては独占的な技術に固められていたためにコンピューター業界に参入できる企業は限られていたが、オープンな技術が標準となったことで容易にシステムを作ることができるようになって多くの企業が参入し、結果として技術革新のスピードが非常に速くなったと述べた。また、今はどこの国からもインターネットに接続できるようになり、もはやインターネットを利用しないビジネスは考えられず、やり方がまったく変わってしまったとした。

その上で、現在のような厳しい業界の状態においても、さらなる飛躍のために新しい製品・技術の開発が必要であり、創造のため・普及のための投資や、他社との協業を行なう必要があるとした。「いま革新を止めては、今後の成長はない」と述べた。

バレット氏が示した、日本が注力すべき点
バレット氏が示した、日本が注力すべき点

日本が次代のリーダーシップを取るチャンスは十分

バレット氏は、日本のIT産業に対する提言を行なった。米国や日本はこれまで高い生産技術を持ち、製造業が産業を牽引してきたが、台湾や中国が高い生産能力を持ちつつある現状では、製造のインフラを海外に移し、新しい製品の創造や技術革新に注力すべきであり、またそうせざるを得ない状況にあるのだとの考えを示した。この“受け入れざるを得ない変化”のため、いまは個人にとっても社会にとっても大きな変革の時期なのだという。

その上で「1国の競争力はITに依存する時代になった」とし「日本は次世代ワイヤレス技術やブロードバンドインフラの技術、およびそこで利用されるサービスやコンテンツの面で強いポジションを持っており、今後のリーダーシップをとるチャンスは十分にある」とした。そしてバレット氏は居並ぶ日本のIT業界の関係者に「(日本がリーダーシップを取る上での)懸念材料は、技術革新を十分なスピードで行なえるかどうかだ。前進し続けなければ、台湾、中国、インドなどの成長の著しい国々に勝つことはできない。このような変化は国境を越えて広がっており、止めることはできないのだから」とメッセージを送った。

ペプラー氏とくつろいだ様子で語るバレット氏
ペプラー氏とくつろいだ様子で語るバレット氏。ペプラー氏が持っているパソコンについて「まさかアップルじゃないでしょうね?」と尋ね、「昔は使っていましたが、今は違います」との答えに「卒業して本物のコンピューターを手に入れて良かったですね」とのジョークも
デモでは、サイバーリンク社のDV/MPEG画像編集ソフト『PowerDirector』などを使って、Pentium 4のパフォーマンスをアピールした
デモでは、サイバーリンク社のDV/MPEG画像編集ソフト『PowerDirector』などを使って、Pentium 4のパフォーマンスをアピールした

講演後は、DJタレントのクリス・ペプラー氏が登場し、バレット氏と対話しながら、Pentium 4の能力を示すデモや、モバイルPentium 4-M搭載ノートパソコンのデモが行なわれた。また講演会場に隣接した製品展示会場では、モバイルPentium 4-Mを搭載したノートパソコンが10数機種も展示された。モバイルPentium 4-Mについてバレット氏は「来週発表する」としていたほか、途中から登場したインテル(株)のジョン・アントン(John Antone)社長は、モバイルPentium 4-M搭載ノートパソコンが「月曜から購入できる」と発言し、来週早々の正式発表は間違いないようだ。

インテルのジョン・アントン社長も登壇
インテルのジョン・アントン社長(左)も登壇
ステージに勢揃いした、メーカー各社のパソコン事業のトップ
バレット氏を中心としてステージに勢揃いした、メーカー11社のパソコン事業のトップ(ソニー、東芝、日本電気、富士通、コンパックコンピュータ、ソーテック、デルコンピュータ、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、松下電器産業)

0.13μmプロセスと300mmウエハーへの移行へ積極投資

さらに続いて行なわれたプレス関係者とのQ&Aセッションでバレット氏は、今後の設備投資計画について「今年は55億ドル(約7300億円)を投資する。0.13μmプロセスの製造キャパシティーを増強するほか、現在オレゴンのFabのみで行なっている300mmウエハーでの生産を、ニューメキシコのFabでも開始する。また、2003年半ばの生産開始を目指して90nm(0.09μm)プロセス技術へも投資する」とした。

またプロセッサー関連ではItaniumに関連して「Itaniumを搭載したコンピューターは20社が発表しており、今年中に発表予定の次世代Itanium“McKinley”もすでにサンプル出荷を行なっている。これまでのItaniumの経過については満足している。また現在5つのItaniumプロセッサーを設計中だ」と述べた。

プロセッサー戦略についての質問では「プロセッサーの戦略は、1つしかない。最新技術を投入した価格競争力のあるものを出すことだ」と答えた。また米AMD社とのプロセッサー価格戦争はいつまで続くのかという質問には「その質問は私でなく(米AMDの)サンダース会長のほうが適しているだろう。価格戦争はサンダース会長が仕掛けてきていると理解している」と答え、記者団からは笑いが漏れる場面もあった。

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