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モルフィーワン計画が中止の危機? 渦中の開発者に聞く


2002年6月28日

不明朗な資金収支に批判

「自分たちの求めるパームトップPCを、自分たちで作ってしまおう」――そんな素晴らしい発想から、『Morphy One』(モルフィーワン)計画は始まった。だが1999年に始動したこの計画がいま、たいへんな危機に立たされている。完成予定時期からすでに2年が経ているのにも関わらず、実際に動く試作品さえ登場していないことに激しい批判が起きているのだ。

モルフィーワンの計画が予約者や出資者から集めた資金は約7000万円に上っており、「開発が頓挫した場合、金銭的責任はどうなるのか」といった声も上がっている。壮大なプロジェクトは今後、どこへ向かうのか。渦中の開発者、佐川豊秋氏がASCII24編集部の取材に応じ、開発が難航している原因やこれからの見通しについて語った。


弁護士同席のもとで取材に応じたモルフィーワン開発者、佐川豊秋氏

モルフィーワン計画がスタートしたのは、1999年夏。熱狂的な人気を集めたヒューレット・パッカードの名機、HP95/100/200LXシリーズの生産が中止になった年だ。同シリーズの存続を求める日本のユーザーグループの活動の中から、設計仕様を公開してオープンソースでハードウェアからソフトウェア開発までを行なおうという機運が高まった。これが1999年12月、モルフィーワンを製造する事業主体である合資会社モルフィー企画の設立へと結びついた。その中心となったのが、モルフィー企画の代表も務める佐川氏だった。

モルフィーワンは486互換のPC/ATアーキテクチャーをベースとするマシンで、コンパクトフラッシュ(CF)からDOSやLinuxを起動できる。640×200ドットのモノクロ反射型液晶ディスプレーを持ち、重さは約275g。単3乾電池で10〜20時間動作する。“ユーザー主導で開発される超小型モバイルマシン”という夢には多くの人が期待し、700人以上の人が1台8万4000円の予約金をモルフィー企画に振り込み、製品の完成を待った。

ところが、2000年内には完成する予定とされた目標時期からすでに2年が過ぎているのにも関わらず、いっこうに完成品が登場しないことから、今年に入ってモルフィーワンの公式メーリングリストなどで佐川氏への批判が上がり始める。批判の主な論点は、次のようなものだ。(1)昨年夏にDOSがブートする試作基板ができたと佐川氏から報告されたのに、実動する基板の現物を誰も見ていない(2)集めた資金をどのように使い、決算報告がどうなっているのかがまったく報告されていない(3)スケジュール遅れに対する佐川氏からのきちんとした説明がない――。

6月中旬には、出資者の有志らが佐川氏と直接面会し、現状がどうなっているのか説明をもとめる事態に発展した。この席上、集めた約7000万円のうち、残っているのは350万円であることを佐川氏が明らかにしたことから、「資金ショートで開発を継続するのは無理ではないか」という声が上がり、騒動はさらに広がった。これに対し佐川氏は6月18日、「税理士殿および顧問弁護士殿と面談した結果」として、国民金融公庫から個人保証で融資を受け、不足している資金を調達する意向を明らかにした。

佐川氏は日置雅晴弁護士の同席のうえでASCII24編集部の取材に応じ、以下のような点を明らかにした。(1)今後国民金融公庫から約300万円の融資を受け、事業を進めたい(2)現在のバージョンの試作基板上でDOSがブートしなくなり、原因分析を進めている(3)この問題をクリアすれば完成は間近で、技術的には大丈夫だと考えている。

モルフィー企画の顧問税理士と佐川氏の説明によると、同社は出資者108人から895万円、予約金として約6100万円を集め、計7000万円の資金があった。このうち、LSIやDRAMなどの部品代にすでに5200万円余を支出。ほかにCADなどの設備投資額が350万円、その他事務所の賃貸料や研究開発費などのランニングコストを使っており、4月末段階で残高は約450万円。以降、予約金の返金などもあり、現在の残高は350万円という。また、これから必要なのは、プリント基板代約100万円と外装(筐体)約300万円、組み立て約100万円、追加部品約100万円の計600万円余り。残高約350万円に、融資約300万円を追加すれば事業を進めるのは可能だとしている。


解約者が多ければ、計画断念の可能性も

日置弁護士によれば、今後の解約を申し出る人に対しては、全予約者の意向を確認し、解約希望者が少ない場合には返金可能であるが、解約者が多くなる場合には会社を清算し、モルフィーワン計画を断念せざるをえない可能性もあるという。その場合はすでに購入してある部品を換価し、現金になった分を全予約者に分配する。不足分については、法的にはモルフィー企画のただひとりの無限責任社員である佐川氏が責任を負うことになるという。

また顧問税理士は「モルフィーワンが完成して出荷されることが前提となるが、ここ1年以上のランニングコストと開発費用は佐川氏が私費を投入する形となっている。従って、予約金の返金要求が殺到するなどの取り付け騒ぎに発展しなければ、さほど倒産の危機はないと考えている」とコメントしている。


試作基板として現在の最新バージョンである『MO25』=佐川豊秋氏提供

新しく設計し直した筐体=佐川豊秋氏提供

佐川氏とのそのほかの一問一答は、次の通り。

[ASCII24] DOSがブートする試作基板を誰も見ていないという指摘があります。

[佐川氏] 昨年4月にMO19というバージョンの試作基板が完成し、7月ごろにはDOSが動きました。Borland Cで作った電池の電圧をモニターするプログラムも動いています。

[ASCII24] その後、どうして動かなくなったのでしょうか。

[佐川氏] 詳しくは話せません。ただ言えるのは、MO19のBIOSを私以外の担当者に委託していたのを、自分でその後作り直したのです。うまくいかなかった部分を全部自分で抱え込んでしまったことに、今回の原因があると思います。たいへん反省しています。

[ASCII24] 外装の筐体についても同じような問題があったと聞きますが。

[佐川氏] 外装についても、昨年夏にできあがった筐体にMO19を合わせてみたら、さまざまな部分で寸法が合わなかった。それでこれも自分で設計をし直しました。第2段階の試作品ができあがったのは、今年1月です。外装は単純にCADでお絵描きし、プロッターを利用して削り出せばいいというわけではない。できた外装に基板をはめ込んでみて、電源が通るかどうかなどさまざまな点を調べる必要があります。また量産時は型から起こすので、反転させてきちんと型が作れる構造になっているかどうかも確認しないといけないのです。

[ASCII24] 今年1月に完成した外装は問題はない?

[佐川氏] はい、ちゃんと試作基板をはめ込むことができています。

[ASCII24] 試作基板は現在どのような状況なのですか。

[佐川氏] MO19の後、いくつかテストバージョンを作った上で、昨年8月にデータが完成したのがMO25という試作基板です。これを2枚発注し、今年2月にできあがってきた。信号の波形や半導体のタイミングなどをテストした上で、BIOSのテストに入りました。RAMへのリードライトを繰り返すなどの単体動作テスト、それからメモリーへのデータのコピーやLCDモジュールへの信号、コンパクトフラッシュへのアクセスがきちんとできるかどうかといった機能テストを行ない、これもうまく行きました。そして今年のゴールデンウィークの最中、いよいよDOSのブートテストに入ったのですが、これがうまく動作しなかった。

[ASCII24] 原因は判明しているのですか。

[佐川氏] 当該の試作基板がさんざんテストを繰り返したために動かなくなったのか、あるいは別に問題があるのか。連休明けから3週間以上もテストと調整を繰り返していたのですが、途中で今回の騒ぎに突入してしまい、その対応で現在は作業がストップしています。

[ASCII24] 自分で作り直したことで、DOSがブートできなくなったのでは。

[佐川氏] 19と25では、BIOSのコンパクトフラッシュモジュール部分がかなり異なっています。また19は自動配線ツールを使って配線しましたが、基板上のスペースの節約や品質改善のために25は手作業で配線しました。しかしこの2つの点とも、DOSがブートしなくなる原因とは考えられません。他に原因があると考えています。

[ASCII24] 解決のメドは?

[佐川氏] 問題はまだ解決していませんが、私は技術的な不安は感じていません。大丈夫だと思っています。

[ASCII24] 部品の購入金額についても「高額ではないか」と批判が出ています。

[佐川氏] こうした部品については、生産が中止になったり値段が上がったり、入手も将来の予測も非常に難しく、厳しい状況でした。しかし購入した5000万円の部品については、「割安とは言えないが、不当に高く購入したともいえない」と感じられている方が多いようです。実際、DRAMについてはあの時購入しておかなければ、いまでは手に入らない部品になっていますし。

[ASCII24] 今後のスケジュールは?

[佐川氏] 私自身、きちんと外部に説明してこなかったことで今回の事態を招き、申し訳なく思っています。きちんと進行計画を立てたいと思います。計画が存続できるのであれば、これからDOSブート問題を解決し、それからさらに数枚のMO25を製造してテストを続けます。その後、量産時と同じ方法で基板、外装それぞれ10台を製造し、これをフィールドテストにかけます。これで問題がなければ、いよいよ量産に入ることになります。

(編集部 佐々木俊尚)




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