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「一番自然なコミュニケーションは、やはり声だ」Xbox Liveスペシャルインタビュー


2002年7月30日

米マイクロソフトにて、Xbox Liveのプロジェクトのソフトウェア開発を統括するジョン・トマソン氏(Xboxプラットフォームソフトウェア開発担当ディレクター)と、マイクロソフトのゲーム部門を長く担当し、Xbox Liveの財務責任者を務めるマイケル・モット氏(Xbox Live事業開発担当マネージャー)に、月刊アスキー編集部が単独インタビューを行ない、Xbox Liveのコンセプトや仕組みについて直撃した。

なお、8月17日(土)発売の月刊アスキー9月号では、『ゲームが見るネットの夢 〜ネットワークゲーム最前線〜』と題して、Xbox Liveのより詳しい解説記事が掲載される予定だ。

マイクロソフトの担当CTOとCFOが語る 『Xbox Live』のディープな話

[月刊アスキー編集部(以下、アスキー)] E3 2002で米国でのXbox Liveのラウンチタイトルが発表されましたが、ラインナップを見てもあまり驚きを感じませんでした。どれも人気は出そうですが、まったく新しいとか、今までになかったというゲームがなかったからです。新しいサービスを開始するにあたり、手堅く無難なタイトルを選んだのでしょうか。

ジョン・トマソン氏
ジョン・トマソン氏。Xboxプラットフォームソフトウェア開発担当ディレクター。Xbox Liveのソフトウェア開発を統括。Xbox LiveのCTO(技術担当責任者)役でもある。Windows 95の開発チームやInternet Explorerの開発などに加わり、Windows 98/2000のUI開発担当を経て現職。

[トマソン] 興味深い質問ですね。基本的に私たちの考え方では、スタート時点は小さく始めて、徐々に大きくしていこうということなのです。ですので、スタート時には小規模ではあってもハードコア的なゲームから始まって、それからより大規模なゲームに移っていきたいと考えています。サービス開始の最初の段階においては、いわゆるハードコアなゲーマー、ゲームに夢中になっているゲームファンを魅了するタイトルを揃えたいと考えています。
サービスがさらに広範になり、革命的なゲームも出てくるようになるには、一旦サービスを開始させて、いろいろなリサーチや開発を行なってからになります。ですので、一番最初のゲームタイトルというのは、既存のコンセプトを使ったゲームがどうしても多くなります。サービス開始後には革命的なゲームが出てくると思いますし、実際にそのためのプロジェクトも数多く抱えております。
さらに言えば、最初のラインナップとして揃えているゲームは本当にエキサイティングなものであると自負しております。その1つの例が、北米市場で用意している『STAR WARS GALAXIES』です。 その他に注目していただきたいのが、アメリカのテレビ番組的なエピソード風のコンテンツを持ったものです。アメリカのテレビ番組はドラマにしても何にしても、シーズン(約26週間)ごとに新しいエピソードが出てきます。そのコンセプトを使用して、例えば同じゲームでも毎週新しいエピソードが登場してくるといったものを考えています。

[アスキー] Xbox Liveではボイスチャットを重視していますが、すべてのオンラインゲームがボイスチャットに向いているわけではありません。ボイスチャットの使用はXbox Liveでは強制される仕様なのでしょうか? 実際現在ネットワークRPGを楽しんでいるプレイヤーに聞いてみると、RPGにボイスチャットは必要ないという意見が多いのですが。

[トマソン] 私たちはボイスという要素は、非常に素晴らしい可能性を持っていると確信しています。『ボイスは必ずしもおもしろいものではない』と言われるかもしれませんが、実際にオンラインゲームでボイスを使うことを、試したことのある人も少ないと思います。
ソニックチームの中さんも、私たちに対して『なぜそんなにあなた方はボイスに力を入れているのか』とたずねられたことがありました。私たちはボイスを使うことによって、ゲームの在り方を変えると説明し、中さんにも『大変だと思うが、マイクロソフトさんが本気でやればおもしろい。ぜひ共に力を合わせて頑張ってやっていきましょう』と納得していただけました。私たちがボイスに着眼しているのは、人と人がコミュニケーションを取る上で、ボイスは一番自然なコミュニケーションの媒体であるからです。ですので、ボイスを実際にゲームで使うことによって、人と人が協調する要素がゲームの中に出てくるという意味でも、やはりゲームでボイスを使うというのはエキサイティングで新しい考え方だと思います。



ジョン・トマソン氏

[鶉橋(Xbox事業部オンラインサービス統括部)] 検討を重ねた結果、一番自然なコミュニケーションはやはり声だという考えにいたりました。もともとキーボードがあるPCユーザーにとっては、オンラインゲームにキーボードを使うということは自然な発想です。しかしキーボードが必要ではなかった家庭用ゲーム機のユーザーにとっては、キーボードよりも声でのコミュニケーションのほうが自然な発想でした。私たちは家やゲームセンターで友達とゲームをするのと同じ環境を、オンラインゲームでも実現していきたいと考えているのです。

[トマソン] ゲームデザイナーがキーボードを使うかどうか、もしくはボイスをどのように使うのかを、私たちは自由に設計できるようにしております。Xboxでキーボードを使えるようにはしたいと考えていますが、それはあくまでオプションであって、Xbox Liveのキットに同梱されるようなことはありません。
 それにもしキーボードを使えるようにしたとしても、コントローラとキーボードを持ち替えるのは、非常に煩雑でユーザーのゲームの楽しみを阻害すると思っています。PCならばマウスとキーボードがあって、それだけで操作するならば簡単です。しかしゲーム機では、プレイヤーはソファに座ってコントローラを手に持ち、テレビに向かって操作することが多い。そんなときにいちいちコントローラから手を離してキーボードを入力し、またコントローラを手に取るというのは自然ではありません。

[アスキー] Xbox Liveは特定ISPに依存しないサービスとのことですが、現在のインターネット接続設定は、PCに慣れ親しんだユーザーでなければ難しいものです。ISPを限定すれば設定面の煩雑さは解消されるし、有料サービスの料金徴収をISPが代行することも可能です。なぜISPに依存しないサービスを選択したのでしょうか。

[モット] まず私たちは、すべてのISPで提供できるサービスにしようと決めました。なぜかと言えば、ゲームプレイヤーの中にはISPの選択肢がないという人もいます。誰でもXbox Liveのサービスを使えるようにと考えました。しかしこれから市場を拡大していくという観点から考えて、いろいろなISPとサービスを展開していく、もしくは接続についてISPと協力していく可能性は探っています。

[アスキー] 実際にPCでインターネット接続を設定する場合、ISPによってDNSアドレスを設定したりしなかったりと、いろいろ面倒があります。すでにブロードバンドルーターを使っているユーザーならまだしも、そうでないユーザーも少なくありません。大丈夫でしょうか。

[鶉橋] 今現在ブロードバンドユーザーは450万人ほどですが、そのほとんどがPCでの利用となっているのではないかと考えています。また米国のブロードバンドユーザーはADSLモデムが多いのですが、日本ではルーターを使用している割合が非常に多いと聞いています。ルーターがすでにセットアップされていれば、Xboxをつなぐだけでプラグイン感覚でプレイできる環境を作っていきたいと考えています。またADSLモデムを使っているユーザーの場合、ADSLモデムをPCと分岐して共有していただくか、もしくはXbox専用に回線やADSLモデムを準備していただくか。PCとの共有を考えるとADSLモデムユーザーは少し注意が必要ですね。
あるいは3つめの方法として、ADSLモデムにつながったPCをルーターに見立てて、そのPCからXboxに接続するという、少々テクニックは必要になりますが、非常にマイクロソフト的な接続方法も準備しています。接続形態は本当に種類が多いので一概には言えませんが、こちらで確認している限りでは、PS2の設定よりもXboxのほうが簡単になったなと思っております。接続設定の問題は現時点では一番簡単にできるのではないでしょうか。

[アスキー] ホスティングなどサーバーサイドの運営はマイクロソフトが請け負うそうですが、ゲームベンダーがマイクロソフト以外のホスティングを希望した場合はどうなるのでしょうか。ゲームサーバーをベンダーが独自に運営することは可能ですか。



マイケル・モット氏
マイケル・モット氏。Xbox Live事業開発担当マネージャー。Xbox Liveの財務責任者にあたり、ビジネスモデルの立案からパブリシャや流通業者、ISPとの調整などを行なう。『Flight Simulator』シリーズに深く関わってきたほか、7年間に渡ってマイクロソフトのゲーム部門を担当し、マイクロソフトのゲームサイト『Zone.com』のビジネス開発担当マネジャーなどを歴任。

[モット] 将来的な可能性の話ですが、ベンダーが独自にゲームサーバーを運営することは可能です。Xbox Liveのゲームサーバー運営には、2通りの方法あります。1つは私たちと一緒になってやっていただく方法です。パブリシャの中にはホスト運営の経験や専門のスタッフがなく、必要な準備ができていないパブリシャもあるでしょう。その場合、私たちがパブリシャと一緒になって運営できます。もう1つの方法としては、パブリシャの中には経験もありインフラもすでに持っているところもあるでしょう。その場合、一定の条件を満たしたうえでならパブリシャにまかせることも可能です。
その条件とはセキュリティの確保です。サーバーとサービス間のトラフィックがきちんとセキュアであるということを保証していただくこと。そしてもう1つ、私たちが認証と課金の情報にアクセスできることを保証していただくこと。それさえ守っていただければ、サーバーとサービス間でのホスティングや運営を独自に行なっていただくこともできます。セキュリティゲートウェイはどこにでも設置できます。これをパブリシャ側のデータセンタに設置することによって、ユーザーのXboxからデータセンタに行くトラフィックをすべてセキュアにできます。ユーザーがXbox Liveを利用する際には、まず私たちのデータセンタで認証を行ない、アクセスのための『チケット』を手に入れます。そしてXboxとパブリシャのホストや東京のデータセンタとの間でセキュアな形での通信が可能になります。

[鶉橋] セキュリティゲートウェイの運用上の条件は、非常に厳しくなります。

[トマソン] しかし私たちは、独自にホスティングするパブリシャはあまり多くはないと考えています。多くのパブリシャのとって自前でのホスティングというのは、経済的ではないからです。

[アスキー] 最後に、日本のゲーム市場は“特殊”だと思いますか? 例えばE3 2002でGame of the yearを受賞したPlayStation2用『GTA3』は、北米やヨーロッパでは3百万本以上も売れたそうですが、日本では発売されていないし(※1)、出ても人気が出るとは思えません。それにあの非常に暴力的なゲームがGame of the yearに選ばれたことは、私にはクレイジーだと感じます。またFPSは日本では『売れないジャンル』と言われています。北米ではミリオンセラーになった『HALO』も、日本ではキラータイトルになれませんでした。

※1 GTA3 PC版は日本でも発売中。

[トマソン] 確かに、私自身も日本とアメリカは異なる市場だとは思っています。しかしヨーロッパもアメリカとは異なる市場と思っています。私たちは基本的に市場を地域で分けるという考え方をしています。マイクロソフトではそれぞれの市場に応じたアカウントマネージャのチームがいて、それぞれの市場のパブリシャと一緒に仕事を行なっています。
GTA3については……、私の個人的なバイオレンスに対する考え方や好みを超えているところがあり(笑)、同じような印象があります。しかし私たちはこれから自分たちがプロジェクトとして立ち上げていこうと考えているゲーム開発を、たくさんの素晴らしい日本のパートナーと組んでやっていこうと考えています。中でも非常に優れたパートナーとしてセガがいらっしゃいますし、テクモとも『デッドオアアライブ・エクストリームビーチバレー』のようなプロジェクトも進行していますしね(笑)。

[モット] 私が思うに、それぞれの地域別、市場別にゲームの好みは変わってくると思うのです。それはマルチプレイヤーゲームでも同様です。しかしビジネスモデル的に見たときに、パブリシャは自分たちの提供するサービスを世界のどこにでも提供したいという考え方があると思います。私たちは特定の市場に特化したゲームが存在するのと同時に、世界的に普遍的なゲームも同時に提供したい。市場に特化したゲームやサービスがあれば、それを可能にするためのパートナーとの協調体制が重要だと考えています。

[鶉橋] 例えば日本やアメリカで売れているゲームはヨーロッパでも販売していますが、例えばある時期、イギリスではHALOがトップセールスであるのに、フランスではサッカーがトップセールスを記録する。そのときドイツではF1のゲームがトップだったりしました。同じ時に同じヨーロッパでもこれだけ違うのです。本来はプレイヤー個人の好みの違いなのでしょうが、市場という視点で見ると、こういう違いが浮き彫りになってきます。ネットワークゲームになった場合、国別だけでなく1人1人のユーザーに対してサービスを展開できます。地域を超えて好きなゲームに参加できるようになりますので、その意味では今までのジャンルに対する感覚もどんどん変わっていくでしょう。

[トマソン] それこそエキサイティングなことだと思いますね。



(月刊アスキー編集部・小西)


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