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レコード会社がやりたかったサービス“着うた”

2002年12月26日 18時51分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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レーベルモバイル(株)は、KDDI(株)のau携帯電話向けにボーカル入り楽曲配信サービス“レコード会社直営♪サウンド”を12月3日にスタートした。今回は同サービスに参加しているレコード会社である(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントデジタルネットワークグループSME Network部長の今野敏博氏と東芝EMI(株)ニューメディアグループ課長の山崎浩司氏に、レコード会社から見たサービスの概要についてお話を伺った。

同サービスは、CD音源を元に作られた15~30秒程度の楽曲データ(モバイルサウンド)を、“EZweb”から携帯電話端末にダウンロードして、着信音やアラーム音に設定したり、携帯電話端末で再生して楽しめるというもの。サービスカテゴリー名は、従来の着メロに対し、“着うた”となっている。

レーベルモバイルは、大手レコード会社5社(エイベックス(株)、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、東芝EMI(株)、ビクターエンタテインメント(株)、ユニバーサルミュージック(株))の共同出資により運営される携帯電話向けコンテンツサービス会社。

SME今野氏 東芝EMI山崎氏
レーベルモバイルの出資会社の1つであるソニー・ミュージックエンタテインメントデジタルネットワークグループSME Network部長の今野敏博氏“レーベルモバイルの出資会社の1つである東芝EMIニューメディアグループ課長の山崎浩司氏

今回の“レコード会社直営♪サウンド”サービスには、大手レコード会社15社(エイベックス(株)、キングレコード(株)、コロムビアミュージックエンタテインメント(株)、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)テイチクエンタテインメント、(株)トイズファクトリー、東芝EMI(株)、日本クラウン(株)、(株)バップ、(株)BMGファンハウス、ビクターエンタテインメント(株)、(株)フォーライフミュージックエンタテイメント、(株)ポニーキャニオン、ユニバーサルミュージック(株)、(株)ワーナーミュージック・ジャパン)が参加している。

同社は、昨年の会社設立以降、着メロサービスを提供していたが、設立時から今回のようなCD音源ベースの楽曲配信サービス展開を見据えていたのだという。黙って待っているだけではレコード会社が期待するサービスは出てこない。そこで自分たちで始めようということになったが、レコード業界全体でのポータルを作るためには全体をまとめるべく第三者的な組織が必要だったので、レーベルモバイルという会社を興したのだという。しかし設立当初は、求めるような音質での楽曲配信が技術的に不可能であったため、当面は着メロサービスを行なっていた。

今年に入って3G携帯電話がある程度普及し、端末側の機能も向上したことから、今回ようやく同サービスの実現に至ったという。また、キャリアをKDDIに限定するつもりはなく、ソニー・ミュージックエンタテインメントデジタルネットワークグループSME Network部長の今野敏博氏は、「30秒程度で原音に近い楽曲配信サービスということを考えると、現時点ではezmovieを利用するのが唯一実現できるパターンだったというだけ。今後他のキャリア端末にも同様の機能が付けば、ぜひやらせていただきたい」と説明している。

同サービスで配信される楽曲データのファイル形式はezmovieだが、著作権保護技術を用いてエンコーディングを行なっているため、携帯電話端末にダウンロードした楽曲データは他に転送できないようになっている。またエンコーディングには、コンテンツホルダーのみに配布される専用ツールが必要なため、一般ユーザーは楽曲データを自作できない。同サービスの提供に当たり、レコード会社側が最も配慮したのがこのコンテンツ保護(違法コピー防止)機能で、KDDIとの話し合いの中でも重要なポイントとなったという。音楽に限らず画像なども同じで、コンテンツを守らなければビジネスは成り立たない。これはレコード会社だけではなくコンテンツホルダー全体の気持ちだろう。

携帯電話の音楽配信におけるビジネスサイクルを変えたい

レコード会社が着うたサービス展開を望んだのは、携帯電話の音楽配信ビジネスにおいて、着メロサービスとは異なるビジネスサイクルを作るためだという。着メロサービスは、JASRAC((社)日本音楽著作権協会)に着メロ曲の著作権料を支払えば誰でもビジネスを行なえる。このため、現在JASRACの著作権使用料は着実に伸びているが、この着メロに関する著作権料は作曲者などの著作者に支払われるもので、歌っているアーティストや、その曲に投資/宣伝しているレコード会社には回らない。一方今回の着うたサービスは、曲の原盤を持っている側の許諾が必要となるため、すでに原盤を持つレコード会社でなければビジネス展開は難しい。「なぜわれわれが着うたをやりたかったかというと、このサービスは基本的に曲の原盤を持っていて実際に宣伝/投資している側に利益が返ってくるビジネスだから。リターンが返ってくれば次に投資できる。そういうビジネスサイクルを作りたかった。われわれのメインビジネスに近いところまで着メロを引き戻したということ」(今野氏)。東芝EMIニューメディアグループ課長の山崎浩司氏も、「着メロ配信サービスとは、アーティストにとってもレコード会社にとっても違うビジネス。権利を保護し正当な対価を得て正当な分配をするサイクルを作る。着メロとは違った広がりを見せるだろう」と語る。

また、レコード会社としてはプロモーション要素も大きく、ボーカル入りということでその効果は着メロよりさらに上をいくという。「30秒の楽曲を聴かせるのは立派なプロモーション。携帯電話が自分でも聞いて楽しめる“ポケット試聴機”になる。新曲をいち早くダウンロードして友達に自慢するという使いかたもある。ユーザー間の口コミを使ってプロモーションできるのは理想的。着うたの配信曲は現時点では新譜が中心だが、携帯電話は10代から20代前半のユーザーが多く、その点いい見せかたができていると思う」(山崎氏)。

ビジネスとしての仕組みは整った。今後着うたが成長するためには、配信する楽曲のラインナップ編成など、いかにサービスを楽しく見せられるかという点にかかってくる。

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