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「コンセプトは“High Performance,High Comfortable,High Desirable”」──米マイクロソフト ハードウェア部門 人間工学専門家 ヒュー・マクローン氏が来日


2003年3月7日

マイクロソフト(株)は6日、米マイクロソフト(Microsoft)社のハードウェアデザイン&ユーザーリサーチ部門に在籍する、エルゴノミスト(人間工学専門家)のヒュー・マクローン(Hugh McLoone)氏の来日にあわせ、ハードウェア開発に関するプレス向けの説明会を同社の新宿オフィスで開催した。

ヒュー・マクローン氏
米マイクロソフト社 ハードウェアデザイン&ユーザーリサーチ エルゴノミストのヒュー・マクローン氏

マクローン氏は、キーボードやマウス、トラックボールといったパソコン向け入力デバイスのデザインおよびテストに携わるエルゴノミスト。ゲームコントローラーなどの開発には直接は関わっていないそうだが、部署間でノウハウを共有しており、『Xbox』のコントローラーやタブレットPC、スマートフォンといったデバイスの開発にも人間工学的な知見が反映されているそうだ。同氏は1996年に入社後、40種類近くの製品デザインに携わり、30以上の特許を取得している。

「ハードウェア専任エルゴノミストはマイクロソフトにしかいません」

マクローン氏によれば、米マイクロソフトにはソフトウェア担当のエルゴノミストと、ハードウェア担当のエルゴノミストが1名ずつおり、製品のデザインやアクセシビリティーテストなどを行なっている。また「マイクロソフトはハードウェア専任のエルゴノミストを置く唯一の企業」だという。

同氏によると、ハードウェアエルゴノミクスの使命は、性能がよく、快適に利用でき、欲望(所有欲)をそそるような製品を開発することだという。具体的には、「性能は品質の鍵。インストールや設定が容易なこと、正確に操作できることなどが重要となる。使い勝手については、手にぴったり合って自然な姿勢で使えることが重要。また、すぐに買いたくなるように、近づきやすいデザインや魅力的な外観も重要だ」と語った。

米マイクロソフトでは、ハードウェア設計は明確なプロセスに従って行なわれる。具体的には、製品のターゲットや利用場面を想定する“概念定義プロセス”、工業デザイナーがデザインを考える“エンジニアリングプロセス”、ハードウェアの仕様を決める“コンフィギュレーションプロセス”、デザイングループ全体での協議、ユーザーテストからのフィードバックという5段階のプロセスを経ることになる。

製品のデザインは、ポリウレタンで実際にモックアップを作成して行なわれるという。デザインプロセスは、基本デザイン作成、詳細なデザイン作成、製品化の3段階に分かれているそうだ。

マウスのモックアップ
『Wireless IntelliMouse Explorer』シリーズ開発のために作られたモックアップの数々。基本デザインモックアップ、詳細なデザインモックアップが複数作られ、よいところを組み合わせて製品に反映するという
モックアップ裏側
『Mobile Optical Mouse』基本デザインモックアップの裏側。1999年よりデザインの検討が行なわれていたようだ。「この製品は3年越しで開発しました」(マイクロソフトのハードウェア担当者)との話もある

製品のターゲットユーザーは、新しい製品を積極的に利用する“ソフィスティケートタイプ”と、楽しいデザインや色づかいを好む“ファンタイプ”、作業効率を重視する“シリアスタイプ”の大きく3つに分類されており、それぞれのタイプに合わせて、製品デザインや色づかいによる差別化が図られているそうだ。

会場では、マウス、キーボード、トラックボールそれぞれについて、エルゴノミクスの観点から、デザインコンセプトや将来の方向性についての説明も合わせて行なわれた。

「工業デザイナーを説得するためには写真が重要」

マウスの開発では、エルゴノミクス的には手に触れる部分が大きいほど使いやすくなるという。ところが、工業デザイナーにそのことを数字データで説明しても、なかなか理解が得られなかったそうだ。同氏は「『プレデター』という映画からヒントを得て、熱の転移を写真に撮ればいいのではないかと思った。早速イエローページで調べて専用のカメラを借り、マウスに触れて温度変化を写真にとって工業デザイナーに説明したところ、理解してもらえるようになった」と、開発のエピソードを紹介した。

温度変化をとらえた写真
熱の転移を利用して、マウスのどこに手が触れているのかを撮影したもの。接していない部分は熱が移らないため、この写真では薬指、小指がマウスにあまり接していないことがわかる

ノートパソコンをターゲットにした『Mobile Optical Mouse』シリーズの開発では、「ターゲット市場として日本を想定し、ユーザーテストのために2回日本に来た。日本ではほかの国と違い、手に触れる部分が広いことよりも手の位置が自由であるものが好まれること、対称なデザインのものが好まれることが分かった」と、日本人ユーザーの嗜好にあわせて開発していることをアピールした。

『Mobile Optical Mouse』の基本デザインから製品まで
『Mobile Optical Mouse』の基本デザインモデルから製品までを並べてもらった。複数のモデルから特徴を取り入れることもあるため、同じ時期の2つのモデルも並んでいる。他社の製品に比べて横幅を広げたのが特徴だという

今後の製品については、特にホイール部分について「当初はズームホイールとしての利用を想定していたため、クリック感が出るようにしていた。今もその名残でクリック感が残っているが、今後はよりスムーズなスクロールを実現する方向に進むだろう」と語った。

「SysrqキーやInsertキーは省きたいが省けない」

キーボードの開発では、特に『Natural Keyboard』シリーズについて「親指が上を向いているほうが長時間作業しても疲れにくい。そこで親指の部分が盛り上がるように設計した」と紹介。「キーボードを中央で分けるときには、マイクロソフトだけでなく大学でも調査を行ない、今までと同じキー入力ができること、手首の快適性、受け入れられやすさなどを考えて左右のキーを割り当てた」と説明した。

『Natural Keyboard』について語るマクローン氏
『Natural Keyboard』について説明するマクローン氏

『Office Keyboard』については、「Office担当者と、Officeを使っていてどのような操作が行なわれるかを調査し、よく使われる機能のうち上位10種類をキーボードに取り入れた」こと、「紙にペンでメモするとき、右手はペンを持ち、左手はノートをめくるのに使われる。同じように、右手でマウスを操作し、左手でページをスクロールすることを考えてデザインした」ことなどを紹介した。

『Office Keyboard』
『Office Keyboard』。キーボード左側にあるスクロールホイールは、紙にメモするときにページをめくるのと同じように利用できる

記者団からの「SysrqやInsertキーをなくしたいと思ったことはあるか」という質問には、「実際、キーボードの裏側につけようかと考えたこともあるが(笑)、MS-DOSソフトウェア開発者のニーズがあるため省略することができなかった」と語る一方、「キーボードを小型化するための努力はしている。今後出てくる製品ではより小さくなるはずだ」と、マイクロソフトからコンパクトキーボードが出てくる可能性を示唆した。

「トラックボールのボールは自由に取り外して触ってもらっていい」

最後は、トラックボールの開発について。「トラックボールはユーザーと常に結びついているデバイスなので、触っていたくなるものにすることを考えた。20人に一番触感のいいものを持ってきてもらったところ、球体と複雑な感触を持つものが多いことが分かったため、それまではリングで押さえていたボールを自由にはずせるようにしたほか、本体の素材を単一のなめらかなものではなく、より複雑な感触が得られるものにした」と語った。

トラックボールを手にするマクローン氏
「ボールはこうやって自由に触れてもらえるよう、簡単に取り外せるようにしました」と語るマクローン氏

なお、日本のハードウェア部門担当者によると、現在も新しいキーボードおよびマウスの開発作業が行なわれており、「年内には新製品を発表できる予定」があるそうだ。

(編集部 阿蘇直樹)


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