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エイリアスが“デザイン ワークフロー セミナー”を開催――終了後に特別顧問のビル・バクストン氏にインタビュー


2003年10月11日

エイリアス システムズ(株)は7日、工業デザインや3次元CADのユーザーを対象とした“デザインワークフローセミナー”を東京のカナダ大使館において開催した。同セミナーでは、9月に販売を開始した同社の主要プロダクツであるCAID(computer-aided industrial design)ソフトウェア『Alias StudioTool 11』、新製品のレンダリングソフトウェア『Alias ImageStudio』、プレゼンテーションツール『Alias PortfolioWall 1.6』の各製品の機能紹介やAlias ImageStudioの適用事例紹介、Studio製品シリーズの北米における最新導入事例が紹介された。最後にはカナダのアイリアス・システムズ(Alias Systems)社の特別顧問ビル・バクストン(Bill Buxton)氏による特別講演が行なわれ、多彩なプログラム内容となった。

Alias StudioTool 11など新製品の機能紹介
ゲストスピーカーの講演に先立って、Alias StudioTool 11など新製品の機能紹介が行なわれた

米Alchemy社のグレイ・ホランド氏が北米での導入事例を紹介

“ナイキ(Nike)”製品のデザインなどで知られる米Alchemy社の代表、グレイ・ホランド(Gray Holand)氏は、Studio製品シリーズの北米における最新導入事例として講演を行なった。

GM出身のホランド氏は、1997年にAlchemy社を設立し、2000年にはかの米frog design社と組むなど、数々のすぐれた工業デザインを生み出しつつ、CGアニメ映画『トイ・ストーリー』のキャラクターデザインを行なうなど、さまざまな場面で活躍してきた。そして、2003年になって再びAlchemyとして活動を行なっている。

ホランド氏は、最近、最も話題となった米ナイキ(Nike)社のアイウェアを重点的に紹介した。ナイキはこのレンズだけを交換できる“Interchange”というシリーズで成功を納め、ファッションブランド一辺倒だったサングラスの中にスポーツアイウェアのブランドを確立させた。最新モデルではメタルフレームも交換できるユーザーに対してインタラクティブな製品をデザインしている、という。さらに試作中のウェアラブルパソコンなど、さまざまなデザインも披露した。同社ではそれらのデザイン課程で各Studio製品を使用しており、限られた機能を使ってその場でカーボンファイバーの自転車をデザインしてみせた。

ほんの数分でデザイン
ほんの数分で、ただの自転車の骨組みからここまでデザインしてみせた

バクストン氏が未来のデジタルデザインについて特別講演

プログラムの最後には、カナダのエイリアス・システムズ社の特別顧問のビル・バクストン(Bill Buxton)氏による特別講演“Future Design / Design the Future(未来のデジタルデザインとは?)”が行なわれた。

バクストン氏は同社の元チーフ・サイエンティスト(前主任研究員)であり、MayaやStudioToolの基礎を築いてきた人物で、Tablet PCやペンタブレットを使ったデジタルスケッチを実現するソフトウェアとして高い評価を得ている『Alias SketchBook』とAlias PortfolioWallの開発者だ。

講演では、まず、バクストン氏は、Alias SketchBookとAlias PortfolioWallの開発の経過について説明した。SketchBookは、昨年7月にデザインチームを立ち上げ、プログラムが検討され、9月にゴーサインが出た。そして10月にはβ版を出し、11月にラウンチする、という短期間に開発されたことをあかし、「これまででもっとも素早く開発できた」と語った。

講演中にバクストン氏は、実際にワイヤレス接続されたTablet PCでAlias SketchBookを使ってイラストを作成し、ホワイトボードに見立てたAlias PortfolioWallをインストールしたパソコンに転送するというデモを自ら行なってみせた。バクストン氏はこうした新たなデザインワークの有効性を示し、「6年以内にホワイトボードではなく、超薄型のアクティブディスプレーが提供できるようになり、7年以内にペーパーディスプレーが出てきます」と語った。そして、「技術が進めば、“技術”は見えなくなり、デザインのプロセスが目立ってきます。そして、技術が干渉しなくなり、デザインに軸足をおいたデザインに変わります。これはデザインスタジオを変えるだけでなく、社会をも変えることになります」と語った。

■ビル・バクストン氏インタビュー

講演の終了後、バクストン氏に単独でインタビューを行ない、Tablet PC対応のAilias SkecthBookのことや講演の内容についてさらにお話をうかがうことができた。

Tablet PCを使うバクストン氏
バクストン氏は、カナダの西側にあるエドモントン生まれ。現在はトロント在住だ。なんと自前のTablet PCが盗まれてしまい、今は借り物を使っているのだとか

[チバ] Ailias SketchBookを発想したのはどのような理由があったのですか?

[バクストン氏] ソフトウェアの開発は書くことばかりではなく、もっと大事なものがあるはずだと思っていました。(工業)製品が生み出されるまでの間に、プロトタイプをすばやく形にするためのツールが必要だと思っていました。スタジオペイントという製品をもっていたので、ペイント機能の強化も重要だと思ったことも一つの要因ですね。 SketchBookはTablet PCにおいて、ペンタイプで使いこなすための初めてのソフトウェアとして認知されてきていると思います。余談ですが、私はトロント大学在学中の1977年に、作曲をするために作ったプログラムに、初めてペンベースのアノテーション(注釈)をつけるソフトウェアを開発しました。また、PDAのPalmで使われている手書き入力プログラムにグラフィティというものがありますが、あのアイデアはゼロックスのパロアルト研究所にいたときに私のアイデアが採用されたものなんです。

[チバ] SketchBookの開発に際してはどのようなことを気にかけたのでしょう?

[バクストン氏] 多くのソフトウェアのメーカーはデザインよりも機能を強化しようとばかり考えている傾向にあると思います。そういう意味では、SketchBookは、いろいろなものをいかに簡単に組み合わせ、よいデザイン、よいルック&フィールを作るか、ということを心がけました。

[チバ] Tablet PC対応ソフトの開発者として、今後、Tablet PCがどのようになっていくとお考えですか?

[バクストン氏] まず、どれを指してTablet PCというか、ということになると思います。これからはカーナビがTablet PCになっているかもしれないですし。Tablet PCの定義によって変わると思いますが、Tablet PCの普及ということはいずれやってくるだろうと思います。

[チバ] 個人的にはどのTablet PCが好きですか?

[バクストン氏] 現在、出ているいわゆる第1世代は軽量なラップトップPCを作り直しただけのものでしたので、次の世代が本来のTablet PCということになると思います。その第1世代の中で私のベスト3をあげるとすれば、エイサー、東芝、そしてHPですね。エイサーは軽くて小さいがスピードが遅い、東芝は頑丈でスピードも速いがデザインがいまいち、HPが最も気に入っていてデザインもすばらしいし、トランスメタを使っているので速い。NECのマシンはプロトタイプをさわったことがあって、薄くてデザインも優れていると感じました。まだ、製品版をさわっていないが、とても期待しています。

[チバ] 講演のデモで披露されていた、PortfolioWallとSketchBookなど、一連の製品を使うことで、デザイナーの新しいワークフローが生み出されるのでしょうか?

[バクストン氏] そうですね、大幅に変えることになると思います。たいがいのソフトウェアは、デザイナーの使い勝手とかにあまり関心を持っていないのではないかと思います。われわれは、徹底してデザイナーのニーズに耳を傾けてきました。その結果として、こういう製品ができたと思います。これらのツールを使いこなしてもらえば、デザインのワークフローもどんどん変わるはずです。

[チバ] SketchBook、PortfolioWallの連携は、デザインの仕事そのものを変える可能性があるように感じましたが、どのようにお考えでしょうか?

[バクストン氏] 製品をデザインする、ということは単に絵を描くだけではありません。デザイナーが抱えている問題は、そこに描かれている機能や状態をその場で評価することがうまくできないところにあると思います。これらのツールを使えば、そうした問題が解決できると思います。 そうすることによって、デザイナーの仕事は絵を描くだけではない、全く違う仕事になるのではないかと感じています。ちょうど、私が先ほどデモでお見せしたような仕事が、将来、デザイナーがやるような仕事になるのではないかと思います。そして、工業デザイナーの仕事はインタラクティブなデザインを行なうようになものになっていくのではないでしょうか。

バクストン氏近影
講演後は名古屋で行なわれる“世界デザイン会議”に米マイクロソフト社の方とともにゲストスピーカーとして出席する予定だ、と語ってくれた

[チバ] 最後に日本のデザイナーにメッセージをお願いできますか?

[バクストン氏] 特に工業デザイナーの方に申し上げたいのですが、スケッチをもっともっと勉強すべきだと思います。インタラクティブな作業の中でのスケッチは本を読んで学べるものではないので、どんどん書いたり、共同作業を通じて学んでいっていただきたいですね。

[チバ] 今日はありがとうございました。

(千葉英寿)


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