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【特別企画】VAIO“type R”開発者インタビュー(前編)――ハードウェアの性能を引き出す新・冷却機構


2004年6月11日

ソニー(株)の“VAIO”は、この夏“Do VAIO(=バイオする)”をコンセプトに、従来の“パソコン製品のブランド”から、“高次元なAV体験を提供する製品のブランド”として生まれ変わった。デスクトップパソコンの“type R”は、新コア搭載のCPUほか高速なアーキテクチャーと、ハードウェアの性能を引き出す新設計の冷却機構を採用した、“高速仕様”のフラッグシップモデル。またビデオ編集/DVD作成の楽しみを追求したマシンとして、DVD+Rの片面2層記録が可能なDVD±RWドライブを搭載し、『Adobe Premiere』や“TMPGEnc”シリーズなど関連ソフトを充実させ、高速仕様がガッチリとそれをサポートする。

主な仕様とデザインは5月に発表されたが、現時点(6月11日現在)では、上位2機種のCPU/チップセット/グラフィックスアクセラレーターが非公開。今回は、その全貌に迫るべく、type Rの開発者およびデザイナーに、インタビューを行なった。前編では筐体デザインや冷却機構、後編(近日掲載)ではスペックや静音性、ビデオ編集/DVD作成などについて紹介する。(取材協力はソニーマーケティング(株)の直販サイトソニースタイル)

type R
type R

インタビューに参加くださった開発者/デザイナー(カッコ内は所属部署)

商品企画:
戒能 正純(かいのう まさずみ、ITカンパニー)
デザイナー:
熊野 大岳(くまの だいがく、デザインセンター)
メカニカルエンジニア:
小林 紀男(ITカンパニー)
冷却機構エンジニア:
石川 雅幸(ITカンパニー)
光ドライブ担当:
大西 孝典(ITカンパニー)
左から戒能氏、石川氏、熊野氏、小林氏、大西氏


「小穴だらけにしたくない!」発熱問題に対するデザイン部門の回答は……

“黒とスリット(細長いすき間)”は、今期のVAIO全体のビジュアルテーマであり、それを最も体現しているのがtype Rだ。type Rを語る上で真っ先に取り上げられるのは、特徴的な外形だろう。モダンな高層ビルを想起させるブラックの筐体は、正面から見てスリット状のシルバーカラーがあしらわれているところを境に、光学ドライブとCPUの熱を逃がすヒートシンクが入った上段と、それ以外のHDD/グラフィックチップ/マザーボードのチップセットなどが入った下段に、構造的に分かれている。上段と下段の間は、側面から見ると、筐体を貫くようにエアインテーク(吸気口)が設けられている。側面にぽっかり穴が空いているのだ。

この外観についてデザインセンターの熊野大岳氏は、「熱くなるマシンだと聞いたので、発熱問題に対するデザイン部門の回答として、それ(放熱機構)を強いイメージとしてまとめた」という。もちろん、この外形が採用されるまでには、さまざまな検討と議論があったと振り返る。

熊野氏と小林氏
デザイナーの熊野氏(左)、メカニカルエンジニアの小林氏(右)

「(一般的に考えられる対応策として)例えば、空気を取り入れる小穴を空けるとすると、天井が小穴だらけになってしまう。デザイナーとして、そんなデザインにはしたくなかった」。熊野氏はこだわりの姿勢を貫き、他部署との調整を図っていったという。

また、筐体の構造を担当したITカンパニーの小林紀男氏は、「ただ穴があいているだけとは違う。発熱対策なり、デザインなりをまとめてから動き出したから、このカタチになった」と、きちんとしたストーリーがあった上で創り出されたものだと強調する。

その結果、できあがった筐体は、通気性の非常に良いものとなった。CPUの熱はヒートパイプで上側に、グラフィックチップやマザーボードのチップセットなどの熱は下側にと、熱を完全に分離できた。高負荷をかけてCPUが発熱しても、筐体下側の温度上昇にはあまり影響がなく、逆にグラフィックチップなどが熱を発することによってCPUの放熱性が悪化することもないのだ。

上下2段構造について小林氏は、「上側を持っても大丈夫」と剛性にも自信を見せる。部品が実装された状態で15kg程度の重さになるため、上下の結合を強固にし、力のかかる上側部分の淵は、ひずまないよう剛性を高くするなどの対策をとっている。下側の筐体を開けて増設などを行なう場合の開閉レバーもデザイン的にうまく収めることができたという。

さらに、もうひとつの効果もあった。VAIOの光学ドライブを担当するITカンパニーの大西孝典氏は「実は私は賛成ではなかったのですが、結果的には熱処理が楽な筐体になりました。下の筐体内が高温になるような動作状態でも、筐体上部に入ったドライブの温度上昇はごくわずかなんです」と評価する。

光学ドライブは意外に熱に弱い。ドライブ自体が発熱するということもあるが、それよりも中に入れるメディアが熱から影響を受ける。特にDVDは高精度が求められ、今回は新開発の2層記録が可能なDVD±RWドライブを搭載する。メディアが高熱によって変形するようなことがあれば、高品質な書き込み性能が維持できない。

大西氏は「いつもなら、試作段階では、こんなに熱いとメディアが反ってしまう――とハラハラしているんですが、今回そういう心配とは無縁になりました」と筐体の性能に満足げだ。



正面
正面から見たtype R。非常にすっきりとした、モダンな高層ビルを連想させるデザインとカラーだ
正面(2)
FDDやメモリーカードスロットの扉は、下にスライドさせる方式。xDピクチャーカードやSDカードにも対応する
背面
背面から見たtype R。排熱用の穴は非常に多い。側面中央のエアインテークから吸った空気はすべて背面に流れる
エアインテーク
側面。エアインテークから空気を取り込み、CPUはじめ各部を冷却する
エアインテーク(2)
手をかざすと向こう側が見える
トレー
光学ドライブのトレーもブラックで統一されている
ワンタッチで開く下段サイドパネル
筐体下段のサイドパネルはワンタッチで開く。増設は非常にやりやすいマシンと言えよう
筐体上段(内側)
筐体上段のパネルをとると、12cmファンが顔を見せる。下枠が強化されていることがわかる
筐体を持ち上げる
筐体上段の下枠が強化されたことにより、このように筐体をちょっと持ち上げてもびくともしない
下側の内部
筐体下段のパネルを開けたところ。電源も、ドライバーを使わずに外すことが可能。その奥にはCPUがある
HDDを取りだす
HDDは、ブラケットを外せば簡単に着脱可能。写真のVGC-RA50には装着されていないが、本体側のHDDブラケット上部には8cmファンが装着できるようになっている
光学ドライブ
光学ドライブは上段にあるため、CPUやHDDの発熱から完全に分離されている。メディアのためにも非常に優れた筐体となった

後編へ続く



(永島和夫)


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