ASCII24.com

ニュース / キーパーソン

生まれ変わった画像編集ソフトの雄『Adobe Photoshop CS2』の裏側を直撃!!


2005年6月14日

Adobe Photoshop単独インタビュー

アドビ システムズ(株)は7日、イメージ編集の分野においてグラフィックデザイナーや写真家といったクリエイティブ・プロから絶対的な信頼を得ているAdobe Photoshopの最新バージョン『Adobe Photoshop CS2日本語版』(以下Photoshop CS2)を7月上旬から販売開始すると発表した。

Adobe Photoshop CS2日本語版
『Adobe Photoshop CS2日本語版』

Photoshop CS2は、クリエイティブ・ユーザーをターゲットとしたデザイン・スイート『Adobe Creative Suite 2日本語版』の中核であり、今回Photoshop CSのファイルブラウザー機能を単独のアプリケーションに格上げした『Adobe Bridge(アドビ ブリッジ)』が、Photoshop CS2をはじめACS2の司令塔としての役割を果たす。さらに画像素材をオンライン提供する新サービス“Adobe Stock Photos(アドビ ストックフォト)”も始まる。米アドビ システムズ社のデジタルイメージング シニアプロダクトマネージャの中川葉子氏ならびにアドビ システムズのマーケティング本部 デジタルイメージング&ビデオ部 フィールドプロダクトマネージャの栃谷宗央氏にPhotoshop CS2の今とこれから、そしてAdobe Bridge、Adobe Stock Photosについてお話をうかがった。

■Photoshop単体よりACSとしての開発を優先?

[――] PhotoshopがAdobe Creative Suite(以下ACS)に組み込まれ、ACS各製品との連携に力を入れていると思いますが、Photoshopは今後、単体製品としてよりもACS路線に注力する方向で開発されるのでしょうか?

[中川] いいえ、Photoshop単体としての開発は今後も続けます。ACSでのPhotoshopは、Photoshop単体を取り込んだ形でのワークフロー(作業工程)を、よりストリームラインする(作業効率を上げる)方向で開発していきます。弊社の複数製品をお使いいただいているお客様には、Photoshopを含んだ形で各クリエイティブ製品を開発し、これに付加価値をつけていきます。具体的にはAdobe Bridgeや『Adobe Version Cue』(作業工程を記録して、以前の状態に戻すことができるバージョン管理システム)、あるいは日本の市場で言えば『Adobe SING』(Adobe InDesignに含まれる外字管理システム)がそれに当たります。そういう意味で、「次のPhotoshopでこういうことを実現すると、Adobe InDesignではどうなる」と言ったことを考慮しながら開発をしていくことになります。

[――] ユーザーから見ると、単体だったり、ACSだったりと、Photoshopが目指している部分が多様化しているようで、どうも方向性が掴めないように思えてきます。改めてPhotoshopの今後の方向性についてお聞かせください。

[中川] Photoshopはこれまでもいろいろな変化をしてきました。“Type”(テキスト装飾機能)が機能強化されたり、“Paint”(ドロー系描画機能)が拡張されたり、ウェブに関連した機能をPhotoshopでやったりといったこともありました。しかし、ACSに加わったことで、例えばウェブについては『Adobe GoLive』(ウェブページ作成ソフト)でできる部分があるので、必ずしもすべての工程をPhotoshopで行なう必要はなくなりました。ACSの中では、ほかのソフトとともにトータルで拡張性のある製品(機能)を提供していくという方向性なのです。現時点でACSの中のPhotoshopという位置づけは、厳密ではないものの、写真やグラフィック・デザインにエンハンスしていくという方向性を持っていると言えます。社内でも、やはりPhotoshopはイメージ・プロセッシングなんだと再確認しており、そこのところをより掘り下げていきたいと思います。

[――] それはつまり、Photoshop単体よりも“ACSの一部”としての開発を優先するということですか?

[中川] 開発そのものは同じように進めていくとしても、優先順位が変わっていくことはありえます。Photoshop単体としてのリクエストと、ACSでのリクエストの中で、どちらがより多くのユーザーにメリットがあるかという視点で優先順位をつけていくからです。これまでもPhotoshop単体での開発において、写真にフォーカスするのか、グラフィック・デザインにフォーカスするのか、という視点からの優先順位付けがありました。それがACSの開発においては、クリエイティブ・プロという視点も加わったということです。

■日本でもアルファテスターを!

[――] 一眼レフデジタルカメラの普及に伴って、写真家にとってPhotoshopはますます重要になっています。Photoshop CS2でもCamera Rawを扱う機能など、写真家向けの機能強化が図られていますが、写真家からのフィードバックをどのように得ていますか?

米アドビ システムズ社のデジタルイメージング シニアプロダクトマネージャの中川葉子氏
米アドビ システムズ社のデジタルイメージング シニアプロダクトマネージャの中川葉子氏

[中川] 米国においては“アルファテスター”という方々がいまして、あたかも開発チームの一員のように(開発途中から)ご意見をいただいています。そのアルファテスターの半数が写真家の方で、かなりの意見が入っていると言えます。

[――] 日本の写真家の声を取り入れる可能性はありますか? また、(プロではない)ハイ・アマチュアについてはどうですか?

[中川] アルファテスターという方法が日本においてもベストフォーマットかどうかわかりませんが、何らかの方法で日本のみなさんの声も取り込んでいきたいと思います。

[栃谷] ハイ・アマチュアの皆さんの声については、一般の方になるのでどなたにどういった形でお聞きすべきか難しいところだと思います。どうやってご意見をいただくかも含め、リーチの仕方を考えていきたいと思います。

[――] 日本には数多くのデジタル一眼レフカメラをリリースしているカメラメーカーがありますが、そうした企業との連携は?

[中川] 日々、きめの細かいできる限りオープンなディスカッションをするように努力しています。私も日本に来ている折など、可能な限り意見交換しています。

[栃谷] 私の方でもかなり頻繁に各社の方々とコンタクトとっています。


■いよいよ64bit対応に

[――] 今回も数多くの機能強化が加えられていますが、これほどの数の機能を使いこなすユーザーはいるのでしょうか? 場合によっては、カテゴリーやユーザーの要求に合わせて機能をモジュール化するといった仕様は考えられないでしょうか?

[中川] モジュール化はアイディアとしてはあると思いますが、実際に(社内で)検討されているかということで言えば、それはありません。将来においてもまったく検討の余地がないということではありませんが、モジュール化といってもいろいろなやり方があると思いますので、あらかじめ十分な検討が必要になると思います。

[――] モジュール化ではありませんが、機能の切り分けという点ではAdobe Bridgeがそれにあてはまると思います。Photoshop CSの一機能だった“ファイルブラウザ”を単独のアプリケーションとしたのはどういう理由からですか? Photoshop単体のユーザーにとっては、(内部機能である)ファイルブラウザのままの方がよかったのでは?

東京・大崎のアドビ システムズの本社にて

[中川] Adobe Bridgeは、ACSの“司令塔”として位置づけています。ACSのハブ(中継基地)とするには、独立したものにする必要がありました。

[栃谷] Adobe Bridgeにできて、ファイルブラウザにはできない機能があります。例えば、Camera Rawファイルのオープンや複数処理。さらにそれを実行しながらほかの作業が行なうマルチタスク機能などです。そういう役割分担をして効率化を図ることができるのは、Adobe Bridgeが単独のアプリケーションだからと言えます。

[――] Adobe Bridgeが“司令塔”であるなら、アドビ システムズにおけるスタンダードなファイル形式だけではなく、Microsoft WordやQurakXPressといった他社製の書類など、あらゆるファイルを読み込める方がいいと思いますが。

[中川] 現在はそれらすべての書類を表示することはできませんが、方向性としてはそうあるべきだと思います。

[――] Adobe Bridgeが単体製品としてスピンアウトする(単独販売される)可能性は?

[中川] Adobe BridgeはあくまでACSの付加価値であり、ACSの“ウリ”の部分でもありますので、単独で製品化ということにはならないと思います。

[――] Adobe Bridgeは起動が遅いと感じますがいかがでしょう?

[中川] 起動が遅いということについては、私たちも認識しており、その点はまったくアグリー(同意)です。社内でもなんとかして欲しいと提案しています。これはお客様の大きな不満につながる可能性がありますので、必ずインプルーブ(改良)していきたいと思います。次のバージョンにご期待ください。

[――] Photoshop CS2自体もPhotoshop CSに比べて起動時間をはじめ、アプリケーションが重いと感じることがありますがいかがでしょう?

[中川] ベストなクオリティーで制作するためにベストな環境で制作活動を行なうユーザーの作業には、かなりの演算処理が必要になります。そのため、それだけのパワーを持っているマシンを使っていただくのが前提で作られているフィーチャー(特別な機能)もあります。ベストなクオリティーを引き出すにはそのぐらいのマシンが必要だと言うことです。

しかし、そうではないユーザーもいる(必ずしもハイパワーなマシンのユーザーばかりではない)ことは認識しています。例えば、“スマートシャープ”(ブレ写真を補正する機能)のように内部的に大量の演算をしなければならない時には、32bitシングルチャネル環境での処理では遅いと感じることもあるかもしれません。パフォーマンスをあげることについては、常に心を砕いてはいるのですが、フォトグラファーがより美しく、より繊細な写真を作り上げるには、それなりのパワーが必要だということだと思います。

[――] それはやはり“32bitの限界”なのではないでしょうか?

[中川] そのとおりですね。64bitへの対応については長期にわたって取り組んできました。今回、Mac OS Xに続き、Windows XPにも64bit対応のWindows XP 64bit Editionが出たことで、Photoshop CS2では一部の機能が64bit対応になりました。


■“Adobe Stock Photos”――フォトライブラリとしての可能性

[――] 今回新たに登場したAdobe Stock Photosサービスのビジネスプランについてお聞かせください。

[中川] まず、なぜ弊社がストックフォトサービスを手がけるかということですが、クリエイティブのワークフローをストリームラインするというのが主眼です。アプリケーションのひとつの機能として各ストックフォト・プロバイダーのアセット(資産、ここでは画像ライブラリーを指す)にアクセスできることで、グラフィック・ユーザーの作業を効率化することができます。また、弊社がストックフォト・プロバイダーとタッグを組むことで、相互にビジネスとして利益の得る環境を作ることができます。ユーザー/パートナー/アドビというコンビネーションの中でビジネス的なメリットを作り上げていきます。基本的に弊社は、ディストリビューターとしてストックフォト・プロバイダー各社の流通の部分を担います。その中でカスタマーサポートやマーケティングしていき、マージンを得るというビジネスモデルです。

[――] ストックフォト・プロバイダー側はアドビ本社との契約が必要なのですか?

[中川] そのとおりです。現在27ヵ国で交渉が進行中です。インターナショナルなサプライヤーを取り込み、この秋には米国で5〜7社の追加を検討しています。このうち30%がアメリカ以外のヨーロッパや日本を含むアジアで、この地域を広げていきたいと考えています。ストックフォト以外にも、個人の写真家と『Adobe Photographer's Directory(アドビ フォトグラファーズディレクトリ)』という連携を作ることで、そこに登録している写真家の窓口にもなります。

[――] クリエイターのためのフォトライブラリとしてだけでなく、写真家のオンライン・ギャラリーとして機能する可能性もあるのでは? そういうアナウンスが“Photoshop World”(※1)であれば、より多くの参加が期待でき、写真家にとっても楽しいものになりますね。

※ Photoshop World 11月9日〜10日の2日間、Adobe Photoshop World(アドビ フォトショップワールド) Conference & Exhibitionが開催される。Photoshop Worldは、米国において年2回NAPP(National Association of Photoshop Professionals)で開催されている世界最大のPhotoshopイベントであり、今回、日本での開催が海外で初めてのものとなる。“Photoshopの伝道師”ラッセル・ブラウン(Russell Brown)氏も参加する予定だ。

[中川] もしそういうことになったら、それは凄いことですね。

[栃谷] そうでなくともPhotoshop Worldは盛り上がると思いますよ。ぜひ期待していてください。

[――] 今日はありがとうございました。

(千葉英寿)




[通常ページに戻る]
ASCII24 http://ascii24.com/
Copyright (C)1997-2008 ASCII Corporation. All rights reserved.