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“パソコンの父”アラン・ケイ氏が和田小学校を訪問――プログラミング言語“Squeak”でアイデアを具現化する授業を見学


2005年6月20日

父の日の翌日にあたる20日、“パソコンの父”“ダイナブック構想の提唱者”として知られるアラン・ケイ(Alan Kay)氏が、東京・杉並の区立和田小学校を訪れ、パソコンとプログラミング言語“Squeak(スクイーク)”を使った小学5年、6年生の授業を見学した。ケイ氏は米ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)社のHP研究所シニア・フェロー。今回の訪問は、日本ヒューレット・パッカード(株)がCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、2004年3月に124台のノートパソコンを和田小学校に寄贈するとともに、プログラミング言語“Squeak”をレクチャーするべくボランティアでSqueaker(スクイーカー、Squeakのエキスパート)を派遣し、授業に役立てる活動を実施していることから実現したという。

全校生徒が集まった体育館に現われたアラン・ケイ氏
全校生徒が集まった体育館に現われたアラン・ケイ氏

給食の時間を前にした正午には、全校生徒が体育館に集まり、ケイ氏への歓迎セレモニーと記念品贈呈(小学1年〜4年生の子供たちによる絵や作文)が行なわれた。ケイ氏は生徒に向かって、「すばらしい小学校に招かれて光栄です」と感謝を述べた後、「まず、私たちみんながどれほど幸せか思い出してみてほしい。衣服も、食べ物も十分に与えられ、医者にかかることもできる。しかし、世界のいろんな国の人たちは、そんな幸せを得られていない。飲み水さえ不足している子供たちもいる。今は(学校や家庭に)インターネットやパソコンがあるので、皆さんが恵まれない子供たちを助けることができるかもしれない。単に自分が学ぶだけでなく、もっと下の子供たちに教えることを考えながら勉強してほしい。この先2、3年で世界中の子供たちと(遠隔地で)話し合いながら、一緒に勉強できるようになるでしょう。世界には20億人の子供がいる。その子供たちがつながれば、今とは違った国が作れるかもしれない。“こどもの国”です。子供たちは大人(の視点や常識、発想)と違った勉強ができる。20億人の子供が学ぶことができれば世界を変えることができる」と述べ、学ぶことの本当の意味を子供たちに伝えた。

生徒たちから記念品を贈られるアラン・ケイ氏
生徒たちから記念品を贈られるアラン・ケイ氏

さらに、「最初にインターネットやパソコンを発明した人は、そういう未来像を描いて開発した。技術は自分たちのためだけでなく、みんなのためを思って発明したもの。自分を助けてくれた人に感謝するということは、人を助けてあげることでしか表わせないのです」とまとめ、パソコンを学ぶことが単に技術を習得するのではなく、将来何か役に立つ発明や発見の一助になることを子供たちに期待して、スピーチをまとめた。



区立和田小学校の横山 正校長
区立和田小学校の横山 正校長

和田小学校では5年生と6年生の総合学習の時間を年間50時間弱使って、プログラミング言語“Squeak”によるプログラム学習を行なっている。学校でのパソコン授業というと、電子メールやウェブブラウザー、ワープロソフトなどの操作手順を学び、メールの送受信や情報の検索/閲覧、文書の作成方法やウェブサイトの作り方を学ぶのが一般的だが、これはパソコンをツールとして使うための技術の習得に過ぎない。

6年生のパソコンの授業の様子
6年生のパソコンの授業の様子。班ごとに集まって、お互いの作品を見せながら完成度を上げている
アラン・ケイ氏も子供たちのアイデアが詰まった画面を熱心に眺めていた
アラン・ケイ氏も子供たちのアイデアが詰まった画面を熱心に眺めていた
5年生の授業はSqueakの使い方を学習するのが主体
5年生の授業はSqueakの使い方を学習するのが主体なので、全員が黒板を向いて授業を受けている
アニメーションを完成させた子もいた
アニメーションを完成させた子もいた

2003年1月、日本HPから和田小学校と杉並区の教育委員会にパソコンやプリンターの進呈の申し出があった際、昨年1月に京都で行なわれたSqueakを学校教育に利用する会議や、荻窪にある日本HP本社などを訪れ、パソコンの教育実践を見て、小学校でのプログラミング教育を実施するに至ったという。まだ教育2年目で、今後卒業生たちのパソコン/プログラミングへの習熟度などを確認していく必要があるとしながらも、子供が自分で考えたアイデアをパソコン上に具現化する機会を得たことについて、教育委員会委員長は日本HPやケイ氏に改めて謝辞を述べた。

午後には小学5、6年生のパソコンを使った授業がプレス関係者にも公開され、子供たちがまず自分のアイデアを紙に書き出して、それを実現するためにSqueakでオブジェクトを作成(ペイントツールで描画し、動きのルールなどを設定する)したり、オブジェクト同士の関係を条件分岐や命令などを組み合わせて作っていった。中にはアニメーションやゲームを作る子供もいたり、予想と違った動きをすることを友達同士で助け合って直したり、日本HPの社員(ボランティア休暇制度を利用して授業に参加しているという)に直接尋ねたりしている光景があちこちで見られた。


スピーチするアラン・ケイ氏

最後にケイ氏は、「コンピューターはこれまで“ツール”(道具)と考えられていた。しかし最近は“本”のような存在になれるのではないか、と考えられ始めている。大人は子供がコンピューターを使ってさえいれば、そのうち仕事にも役立つだろうと期待している。しかし、本というものを考えたとき、一番いい活用の仕方とは、アイデアを持つ人が本について語ったり、(アイデアを頭に描きながら)読んだり知ったりすること。コンピューターにも同じことが言える。“本を読む技術”を学べば、自然にアイデアが浮かぶわけではないし、コンピューターを使えるようになることがサイエンスの理解につながるわけでもない」「子供たちは生まれながらに芸術家である。子供たちには創造性の高い授業にどっぷり漬かってほしい。ただ、そこからサイエンスを学ぶには、自発的に学ぶことを期待するだけでなく、学習するアイデアを自分たちで作ること、自分の頭で生み出すことが必要。それには大人や周りの子供たちのガイダンス(指導)が重要になる。そこに導くのが学校の役割だ」と教育論を展開。



Squeakの画面
Squeakの画面

その一例として、見学した授業を引き合いに出しながら、「先ほども、ある子供が振り子のおもちゃ(5つの鉄球が吊り下げられ、一方から球を当てると、反対側の鉄球が飛び出す“慣性の法則”を体感できるグッズ)をアニメーションで表現しようとがんばっていた。まだ実際の動きとは異なる(慣性の法則に従っていない)が、もう5年生なので、アニメーション作りをきっかけに自ら進んで“慣性の法則”を学び、それを反映させれば、単なるアニメーションが“(物理)シミュレーション”になる。これこそがサイエンスのきっかけとなるだろう」と述べ、この学習の大いなる効果を期待した。

(編集部 佐久間康仁)


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