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【INTERVIEW】世界初! FMCサービスを開始した英BTの狙い――「固定電話の品質と携帯電話の利便性を融合」


2005年8月8日
BT Fusionの通話料金
BT Fusion対応端末の米モトローラ製『V560』。このモデルは、携帯電話とBT Hub間を、Bluetoothで通信する。屋外で100m、屋内では25mまで通信可能という。また、2006年に発売される機種からは、無線LAN(IEEE 802.11 b/g)による通信へと変更される予定

イギリスの固定電話会社であるBTグループ(BT Group Plc.)は、携帯電話と固定電話を融合したFMCサービス“BT Fusion”(BTフュージョン)の試験運用を6月15日に開始した。FMCとは固定(Fixed)と移動(Mobile)を融合(Convergence)させるという構想のこと。世界各国の通信事業者は新たな収入源としてFMCに注目し、“1つの端末”“1つの電話番号”“1つの請求書”を実現するサービスとして、携帯電話回線網と固定回線網の双方を利用するものや、携帯端末を使用したIP電話として多様なネットワークを利用するものなど、さまざまな企画が練られている。なかでもBTは、1つの携帯電話1つの電話番号で、携帯電話回線網と固定回線の双方を利用できるFMCサービス(前出のBT Fusion)を、世界で初めて一般向け(英国のみ)に提供することから注目を集めているのだ。

9月よりイギリスの一般カスタマー向けに提供されるBT Fusionでは、携帯電話は、米モトローラ社製の『V560』(GSM900/1800/1900MHz対応)が使用される。屋外では、英ボーダフォン社のGSM携帯電話回線網を、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)として使用する。家庭には、ブロードバンド回線に接続された専用のハブ“BT Hub”が設置されており、携帯電話はブロードバンド回線を利用したIP電話として使用される。携帯電話『V560』とBT Hub間は、Bluetoothによって通信が行なわれる。BT Hubは無線LAN(IEEE802.11 b/g)としても使用可能で、2005年からは、携帯電話とBT Hub間も無線LANによる通信が可能となる。今回はBTグループのめざすFMCとはどのようなものなのか、BTリテール・コンバージェンス・プロダクツ・チーフのライアン・ジャービス(Ryan Jarvis)氏に、これまでの試験運用の成果も含めて話を伺った。



BT Fusionの概念図
BT Fusionの概念図(BTのプレゼンテーション資料より)。屋外では、携帯電話回線網を利用する。家庭には、ブロードバンド回線に接続された専用のハブ“BT Hub”が設置されており、携帯電話はブロードバンド回線を利用したIP電話として使用される。携帯電話とBT Hub間は、Bluetoothによって通信が行なわれる。BT Hubは無線LAN(IEEE802.11 b/g)としても使用可能で、2005年からは、携帯電話とBT Hub間も無線LANによる通信が可能となる


なぜFMCを始めたのか?

[インタビュアー(安藤)] なぜ、今この時期に、BTグループはBT Fusionを始めたのでしょう?

ライアン・ジャービス氏
英BTグループ BTリテール・コンバージェンス・プロダクツ・チーフのライアン・ジャービス(Ryan Jarvis)氏。FMCA(Fixed-Mobile Convergence Alliance)の会長も務める

[ジャービス氏] それには、2つの理由があります。1つは、カスタマーのニーズ。そして、もう1つは、技術的な進歩によりFMCが可能になったことです。まず、1つ目のカスタマーのニーズについてですが、これは今に始まったことではありません。これまでもカスタマーは、携帯電話と固定電話が別れてていることに不満を感じていました。料金の請求が別々というのも不満の1つと言えます。イギリスでは、携帯電話の通話の30%は、家からかけているというデータもあります。固定電話の低価格/高品質な通話と、携帯電話の利便性を融合しようというのがBT Fusionの狙いです。



BT Fusionの通話料金
BT Fusionの通話料金(BTのプレゼンテーション資料より)。携帯電話で英国内の固定電話にかけた際の料金。BT Fusionでは、オフ・ピークタイム(一番上の行)では5分5.5ペンス=11円から、ピークタイム(上から2行目)でも5分15ペンス(30円)からと他の携帯電話を利用する際よりも割安になる。BT Fusionの契約は、基本通話時間が月100分通話のBT Fusion 100が月額9.99ポンド=2000円、基本通話時間が月200分のBT Fusion 200が月額14.99ポンド=3000円。対応携帯電話とBT Hubは、無料で提供される。ただし、BT Fusionを利用するには、このほかにBTの固定電話(月額10.50ポンド=2100円から)と、BT ブロードバンド・サービス(月額17.99ポンド=3600円から)を契約している必要がある。なお、1ポンドは約200円

[ジャービス氏] 2つ目の技術的な側面ですが、ここにきてようやくFMCを始める技術的な条件が整ったからです。BT Fusionでは、携帯電話とBT Hubの間の通信に、UMA(Unlicensed Mobile Access)という技術仕様を採用しています。この仕様は、英BTなどの欧米の通信事業者やメーカー14社で標準化を進めたものです。また、米モトローラ社やフィンランドのノキア社、韓国のサムスン電子社などの携帯電話メーカーとの協業も進んできたこともあります。

[安藤] FMCに対応する最初の機種であるV560は、BT Hubとの通信にBluetoothを使用しますが、なぜ無線LANではなくBluetoothなのでしょうか?

[ジャービス氏] なぜかと言えば、無線LAN対応機種の登場を待つ必要はない、と判断したからです。BT Hubは、Bluetoothと無線LANのいずれにも対応しています。そして、カスタマーにとっては、通信技術がBluetoothなのか無線LANなのかは、あまり関係のないことだと思います。

また、現時点では、無線LANに対応した携帯電話は、高価格の機種に限られています。さらに、無線LAN使用時のバッテリーの持ち時間も、あまり長くありません。こうした問題点は、来年までには解決されると思います。ですから、当面はBluetoothを使い、来年発売される機種からは無線LANを利用する予定です。



5年後に10億ポンドの売上が目標

[安藤] 現在、試験的に利用している400人のカスタマーの反応はどうでしょう?

[ジャービス氏] 非常にいい反応を得ています。特に、携帯電話回線網から、ブロードバンド回線網へとシームレス移行した際に(筆者注:電話をかけながら屋外から屋内に移動する際に)、音声が、よりクリアーになるという感想が多いですね。また、BT Hubの利用可能範囲は屋内で約25mですが、これも“十分”との評価をえています。

[安藤] 不満の声はありますか?

[ジャービス氏] 利用者を400人に限定し、十分なサポート体制を構築した上での試験運用ですので、いまのところ不満の声は、ありませんね。

[安藤] 9月からの本格的なサービス開始に向けて、一般のカスタマーの反応はどうでしょう?

[ジャービス氏] まだ、ニュースリリースを出したでけで、一般カスタマー向けの宣伝はしていません。しかし、6月の発表以後、BTのウェブサイトで事前登録者を募集していますが、7月末時点で1万5000人が登録しています。

[安藤] 正式サービス開始後の加入者数は、どれくらいが目標でしょうか?

[ジャービス氏] 加入者数の目標は公表していません。ただ、5年後にBT Fusionの売上高が、10億ポンド(約2000億円)という目標は掲げています」(筆者注:英BTグループの2005年3月期の総売上高は186億ポンド(約3兆7200億円)のため、総売上高の5%程度を目標にしていることになる)



無線LANのホットスポットも使用できるようにする

[安藤] BTは、2001年に携帯電話回線網を売却したため、携帯電話は、英ボーダフォンのインフラをMVNOとして利用しています。FMCサービスを開始するに当たり、この点は、どのように影響していますか?

[ジャービス氏] 私が会長を務めるFMCA(Fixed-Mobile Convergence Alliance)の会員企業、たとえば日本の東日本電信電話(株)やKDDI(株)、アメリカのAT&Tなどは、グループで固定電話回線網と携帯電話回線網の両方を持っています。これらの企業は、グループ内で、固定電話と携帯電話のどちらを優先させるかといった点で綱引きをしている段階です。BTは、固定回線網しかありませんから、こういったことは気にしないでFMCを進めることができます。

[安藤] BT Fusionは、最終的には、どういうものになるのでしょうか?

[ジャービス氏] BT Hubは1台につき6台のBT Fusion対応の携帯電話を登録できます。同時に通話できるのは3台ですが。また、他人の家にあるBT Hubも利用できます。将来は、屋外でも、携帯電話回線網だけでなく、無線LANのホットスポットを使用できるようにする計画です。現在、BTグループは、英国内で“OPENZONE”という無線LANのホットスポットを7800ヵ所開設しており、この数をもっと増やす予定です。このホットスポットでも、BT Fusionのサービスが利用できるようになります。つまり、屋外でも、無線LANを介した通話ができることになります。

BT Fusionの将来の概念図
BT Fusionの将来の概念図(BTのプレゼンテーション資料より)。将来は、BTが展開している無線LANのホットスポット“OPENZONE”を通じて、BT Fusionが利用できるようにする。ホットスポットが無いところでは、携帯電話回線網を使用する

(安藤 怜)


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