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【特別企画】モバイル真骨頂! シャープに聞くW-ZERO3の素性
2005年11月4日
ザウルスの技術の粋を集め、携帯のノウハウを加味した
シャープさんが凄かった。神がかっていた――これは、10月25日に掲載した“W-ZERO3”『WS003SH(B)』のインタビューでの、(株)ウィルコム常務執行役員 コンシューマ営業本部長の土橋 匡(つちはし ただす)氏の言葉だ。これは当然、シャープ(株)にもW-ZERO3のこだわりを伺わなければなるまい。そこで今回、“WPC EXPO 2005”会場で端末の製品の説明にあたっていた情報通信事業本部 新携帯端末事業部 商品企画部主事の廣瀬泰治(ひろせ たいじ)氏にインタビューを行なった。インタビュアーは、アスキー編集人の遠藤 諭ほか。
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左からシャープ情報通信事業本部 新携帯端末事業部 商品企画部主事の廣瀬泰治(ひろせ たいじ)氏、遠藤 諭 |
ザウルス部隊が商品を企画
[月刊アスキー 吉川]
W-ZERO3開発の布陣を教えてください。特に自分を含めた“ザウルス”ユーザーは気になるところです
[シャープ 廣瀬氏]
W-ZERO3の開発は情報通信事業本部で行なっており、当本部は当社製品ザウルスを担当していることからそのノウハウが生きています。私自身もザウルスの商品企画を経験しています。
[吉川]
携帯電話機の担当部隊は参加しましたか?
[廣瀬氏]
商品企画という意味では、ザウルスでのノウハウを中心としながら、通信機器という観点で必要な人材を確保し進めてきました
[アスキー 遠藤]
なぜ、W-ZERO3のような製品を企画するに至ったのでしょうか?
[廣瀬氏]
一般的なPDAをどう進化させていくのか考えた時に、世の中の流れとして、“放送”とか“通信”とか一歩踏み出す先はいろいろあります。しかし、“SL-C”シリーズのザウルスのユーザーの傾向をみると、PDAの用途はウェブブラウジングやメールに対する需要が一番高く、ワープロや表計算ソフトの閲覧や編集に対する需要もあります。このようにいろいろ模索すると、やはり“通信”というのがキーワードとして大きいのではないのかと思いまして。それで、ザウルスと通信カードのセット販売であるとか、ウィルコムさんとはかねてよりお付き合いがあり、その中で通信モジュールを内蔵したSIMカードを考えているという情報もありまして
海外ではビジネスマンが“当たり前”に持つ
[遠藤]
ウィルコム(当時はDDIポケット)が小型PHSモジュールを初めて公にしたのは“ワイヤレスジャパン2004”(2004年7月)でしたっけ。そもそもの話が始まったのは去年の夏から秋と考えてよいでしょうか?
[廣瀬氏]
そのくらいと記憶しています。ウィルコムさんへのインタビューでも触れられていましたが、弊社が設計した『Sidekick II(サイドキック ツー)』というGSM携帯電話機がありまして。 そういった製品を参考にしながら、お互い協力して何か作れないかと。時を同じくしてウィルコムさんが通信モジュールを内蔵したW-SIMを開発中ということもあって「W-SIMカード向けの製品をお互い考えませんか」と、ミーティングを重ねました
[遠藤]
W-ZERO3の製品発表会でウィルコムから「2005年度は10万台生産」という話がありましたが、海外に目を向けると『BlackBerry』(カナダResearch In Motion社)とか物凄い数で売れているんですよ。例えば米ガートナー社は2005年第2四半期における世界のPDA出荷台数の報告では、RIMのBlackBerryは84万台と述べられている。ということは、年間では300万台ですよね。米国で70万台、日本の市場規模に換算すると35万台は売れてもおかしくないことになります。しかも、これがBlackBerryだけだから、TreoとかO2とか、ガチャガチャガチャと計算して、50万台くらいの市場ですね。まあ、文化を作らないといけないから最初からそこまでは伸びないとすると、半分にして25万台とか? いずれにしろ、10万台というのは“控えめ”ではないかと
[廣瀬氏]
海外では、PDAに通信機能を内蔵するという流れが加速しており、移動機全体の市場からしても、その割合は年々高くなっている。それらをビジネスマンが当たり前に持つという世界が、すでに作られているんですよ。前述の海外向けの端末を担当している隣のグループは、常に忙しそうですね(笑)
[遠藤]
そのあたりの熱さがビシビシと伝わってくるわけですね。Sidekick IIも好調なわけですね。ボクなんか、やっと自分が個人的に理想と考えていた世界がやってきたと。PDAで喋ると何がよいのかというと、これ1台にコミュニケーション手段を統一したというキッチリした気持ちよさがある。もっというと、こういうのが出てくるとビジネスの分野では“声はオマケ”になっていくわてですよ。そのために1台持つのはバカバカしいということになるのです
大画面液晶&キーボードありきのデザイン
主役はウェブブラジングとメール
[遠藤]
この画面とキーボードのスライドができたから端末を作りたくなったと勘ぐりたくもなるんですが(笑)。W-ZERO3で特徴的なのは、やはりこの画面とキーボードですよね
[廣瀬氏]
W-ZERO3は当初から大画面液晶とキーボードありきだったんですよ。まず液晶画面ですが、パソコン向けのウェブ閲覧や長文メールのやりとりといった“データ通信”にはある程度大きくて、解像度の高い液晶画面が必要だったんです。もちろん、他の移動機との差別化という要素もありますが。そのような状況下、現行の携帯電話機のほとんどが採用している2インチ台の液晶パネルではなく、やはりザウルスで使っていたような3インチ台の液晶パネル。その中でいろいろ模索したんですけれども、やるなら解像度はQVGA(320×240ドット)でなくVGA(640×480ドット)でと考え、最終的に3.7インチのモバイルASV液晶(6万5536色表示)となったんです
[遠藤]
キーボードは、普通の携帯電話機のようなテンキーではなく、フルキーボードのほうがふさわしいと考えたと
[廣瀬氏]
確かにテンキーを支持する意見もあったのですが、W-ZERO3の商品性はウェブサイトがきっちり見られるところや、パソコンのメールをやり取りできるところにあるので、フルキーボードのほうが操作しやすいという結論になりました。このあたりは実際、ザウルスで検証してきた領域なので確信があります。最終的には、QWERTY配列でかつ親指でシフトできるというコンセプトに基づいて、親指の動きに合わせてキーを扇形に並べました。それでも押しにくいキーは大きくデザインしたり、暗がりでもキー操作しやすいようにバックライトを搭載したり、さまざまな工夫が詰まっています。ちなみにキーが光るのは、ザウルスで実現できなかったので個人的には夢でした
[遠藤]
GSM携帯電話機は液晶画面の下にフルキーボードを搭載しているタイプが多いし、ザウルスはキーボード部と画面部が別れた折りたたみタイプだし、なぜW-ZERO3はスライド式キーボードなのでしょうか
[廣瀬氏]
大画面液晶とQWERTY式キーボードを同時に実現させようとすると、本体の表面積がどうしても大きくなってしまう。Sidekickのような“ギミック性”が欲しいという意見も挙がりましたね。それで、2大要素をマージしたときに一番スマートに収まる形として、それらを重ねてスライド式キーボードにするのが最も素直だという結論になりました
[遠藤]
個人的には、このスライドするキーボード、実際には画面が上にスライドするわけですが、かなり気に入っています。もちろん、Linuxザウルスで“半ケツキーボード”とか“パンツズリ落ちキーボード”とか呼ばれるスライド式が出たときも驚いたわけですが。こういうギミックは、PDAの世界だと英国のPsion(サイオン)社とかの得意分野でしたよね。『PSION 5』(写真)の液晶を開くとキーボードが手前に滑り出て、液晶の下のほうもカラクリのように本体中央にヒンジがあるかのような安定した状態になる。あのあたりとくに好きだったとかあるのですか?
[廣瀬氏]
とくにそういうことはないです
より薄く! より強く! 調整は続く
[遠藤]
これ現物を持ってみると意外に小さいですね。PDAの標準サイズは、8×12cmだという説があって、これがポケットになんとか入るサイズだというのです。ちょうど、CDとCDシングルのサイズなのでありますが。つまり、幅が1cm狭いのですが、これが意外に利いていますね。思ったより違和感がないという人か多いようです
[廣瀬氏]
そうですね。これは、2インチクラスで解像度がQVGAの液晶パネルを搭載している携帯電話機と比較した時に、VGAの強みを考えると、ザウルスで定評のあった3インチクラスの液晶パネルを使いたいという流れの中で出たものですから。W-ZERO3のモックアップを見せて大勢の人に指摘されたのは、キーボードを閉じて縦方向に構えた時に、高さ(130mm)はあまり気にならないが、手になじまないと移動機としては認められないと。それで、液晶のフレームをできる限り狭くして、筐体のエッジをまるめて、数mmの世界で最後の最後までディスカッションしましたね
[遠藤]
採用に迷ったデザインはありますか? 例えばもっと“ガンダム”系とか
[廣瀬氏]
人によっては十分それらしいと言う人もいるのですが(笑)。デザインは最初からこれでしたね。一般的に、ほとんどの製品はやはりデザイナーが試行錯誤を繰り返すのですが、この製品については一発目のデザインから「あっ、結構悪くないね」と周囲の反応は良かった。もちろん、もう少し遊んだ案はあったのですが、やはりメインターゲットがビジネスコンシューマー層なので、ある程度の“さりげなさ”が必要と。最終的には、うまくまとまったと思います
[遠藤]
ビジネスコンシューマーという意味では、ワイシャツの胸ポケットに入るけれども、もう少し薄いとありがたいですね
[廣瀬氏]
やはり“厚み”というポイントはありますね。スライド機構を設計する上でクリアランス(ゆとり)の調整は神経を使うところで、できるだけ薄くしたいですし、きつすぎると本体に傷がつきますし。調整はまだ続いておりまして、これ(展示機)ですら最終ではありませんから。ちなみに、キーボードを閉じた際にしっかり閉まるように、磁石が内蔵されているんですよ
[遠藤]
磁石はいいですね。気持ちよくカチっと閉じる。なんか、こう片手で持っていると無意識のうちについカチカチと開閉しちゃいますよね 。今年の暮れには、地下鉄の駅とかでコレをスパンと開ける風景があちこちで見れそうですね。とにかく、この端末は“文化を作る端末”というところがいいですね。携帯をにらみ付けて親指1本でピコピコやっているのが、なんだか仕事ができない奴みたいな感じになるかもしれません
答えは“一番シンプルなところ”にあった
縦方向でも横方向でも使いやすく
[廣瀬氏]
コンセプトが決まって、デザインの大枠が決まって、商品企画として悩みどころはそこから先ですよね。「液晶面にキーは必要なの?」みたいな議論から始まって、カーソルやABボタン、OSの関係で必要なボタンなど、キーを増やして1個1個を小さくすれば当然使いにくくなりますし、限られた面積の中でどこにどういうキーを配置するか。そういったレイアウトは商品企画の担当なので、実際にこのデザインに落とすまで、何日も悩みました
[遠藤]
どうするか迷った時の、最終的な拠り所というのは?
[廣瀬氏]
一般的な移動機であるとか、この製品が搭載している機能を意識して、使用シーンを思い描きながら決めてきました。例えば、バッテリーの充電中に使うこともあるだろう。その場合にACアダプターの位置はどこがいいのだろうかとか。スタイラスの位置なんかは、縦方向、横方向に使うことを考えたら、最も取り出しやすいのはあそこ(写真参照)しかあり得ないですよね
[遠藤]
最後に、“ここは素人は気づかないだろう”的な、こだわりのポイントを教えてください
[廣瀬氏]
そうですね。例えば、キーボードを開いた状態で、画面表示が横方向に自動的に切り換わる。これはいいですよね。では、キーボードを閉じた場合に、画面は自動的にどう表示されると便利か。閉じているときに画面を縦方向に使うか横方向に使うかは、使う人によって当然異なります。そこで当初、画面表示の切り替え設定のメニューでは、キーボードを閉じたとき“横方向に表示する”“縦方向に表示する”の2択を用意する予定だったのですが、「ちょっと待てよ」と。「“直前の状態”に戻すのが一番シンプルだ」と。もう1人の商品企画担当と散々悩み、たどり着いたのは“一番シンプルな解答”でした
(編集部 伊藤咲子)
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