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【特別企画】モバイル新潮流! W-ZERO3登場でマイクロソフトが抱く夢
2005年11月15日
2800万人のインフォメーションワーカーに捧ぐ
“W-ZERO3(ダブリューゼロスリー)”『WS003SH(B)』のキーパーソンへのインタビューも今回で3回目。通信キャリアの(株)ウィルコム、製造メーカーのシャープ(株)と続けて掲載したが、W-ZERO3はWindowsプラットフォームを搭載した初の国内市場向けスマートフォン。やはり、OSの開発元であるマイクロソフト(株)にもW-ZERO3に対する期待を伺いたいところだ。今回登場いただいたのはマイクロソフト Windows本部 兼 モバイル&エンベデッドデバイス本部 業務執行役員 シニアディレクターの佐分利ユージン(さぶりユージン)氏と、モバイル&エンベデッドデバイス本部 シニアプロダクトマネージャの石川大路(いしかわ だいじ)氏。インタビュアーは、アスキー編集人の遠藤 諭ほか。
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左から、モバイル&エンベデッドデバイス本部 シニアプロダクトマネージャの石川大路氏、マイクロソフト Windows本部 兼 モバイル&エンベデッドデバイス本部 業務執行役員 シニアディレクターの佐分利ユージン氏、アスキー遠藤 諭 |
“客”はいるけど“文化”はまだない
[アスキー遠藤]
僕は、スマートフォンが大好きで、海外では『Treo 600』(米PalmOne社)とか、『iPAQ 6315』(米Hewlett-Packard社)を愛用しているんだけど、何がいいかというと音声とPDAが合体して、なんだか喋るときに軽い緊張感が走る。喋る内容もちょっと引き締まるんですよ。それと、“知的ツールに自分の生声を流し込むような感覚”に、ちょっぴりゾクゾクする。iPAQ 6315なんかは、インテルCPUだと一層いい感じですね。まあ、とにかくそのスマートフォンがやっと日本にやってきた
[アスキー本多]
まず、スマートフォンは日本でどの程度市場規模があると予測されているのでしょう
[マイクロソフト佐分利氏]
デバイスの定義にもよりますが、日本市場は他の市場と違いビジネス端末がありません。北米では『BlackBerry』(カナダResearch In Motion社)、欧州では過去に『PSION(サイオン)』(英Psion社)があり、今ではSymbian OSベースのビジネス用携帯電話機が出ています。しかし、日本の事業者が法人向け契約として売っている携帯電話機は、ビジネスユーザーを考えて作られたものではなく、コンシューマーユーザーを考えて作られた端末となっています。こうした認識の上で、日本での市場規模はどの程度あるかというと、ビジネス端末という市場は今のところ日本にはない。しかし、我々が“インフォメーションワーカー”と呼んでいる、移動しながらパソコンなどの情報機器を利用している人口は2800万ほどと考えています
[遠藤]
“客”はいるけど“文化”はまだないと。Windowsプラットフォームのスマートフォンを広めるための戦略を教えてください
[佐分利氏]
ステップはいくつかありますが、まずメッセージングサーバーソフト『Microsoft Exchange Server』のユーザーにとってアピールが高いと思います。電子メールやコンタクトなどの情報を、スマートフォンからリアルタイムで同期ができる。モバイルメッセージも重要ですね。また、携帯デバイスに対してもWindows APIで開発できる点は、デベロッパーにとっても高いアピールがあるでしょう
[アスキー伊藤]
インフォメーションワーカーといえば、マイクロソフトの社員はまさにそれだと思うのですが、W-ZERO3が発売されたら買いますか
[佐分利氏]
Windows Mobileなどさまざまな製品に関するセミナーを社内で定期的にやってるのですが、かなり期待値は高いです。ぼくの部署はみんな買わせますよ(笑)
[マイクロソフト 石川氏]
確かにモバイルインフォメーションワーカーが多い会社ですので、興味を持つ人は多いですね。W-ZERO発表に関するメールを社内で送ったら、数百人からメールボックスがそれ一色になるほどの反応がきて。「社内販売はないのか」など、問い合わせが凄まじかったですよ
“島国”に黒船到来なのか!?
「やっと日本にも来たか」
[遠藤]
今回W-ZERO3が発売されることに対して、どのような印象を持ちましたか
[佐分利氏]
「やっと日本にも来たか」と。日本にもっと早い段階で提供できなかったのかという思いもありますが、日本で初めて出たという点でかなり画期的なデバイスです。まずは、手にフィットして、見た目より軽いなと。そして何よりギミック感が素晴らしいですよね。手応えはかなりのものです。ウィルコムの定額プランや公衆無線LANサービスとの連携といった展開も面白い。2台目の携帯電話機として買う方も多いかと思います
[本多]
国内でWindows Mobile搭載の移動機が投入されるまで時間がかかった理由として、マイクロソフトなりの分析を教えてください
[佐分利氏]
海外の端末メーカーが日本に入り込めていないのと同じ理由で、日本は独自の無線技術を採用するなど、市場のスケールが小さいという点があります。また、国内で普及した端末は二つ折りタイプで、ノキア社などが採用するキャンディーバータイプ(ストレート型)とは異なる形状だったほか、数100万画素クラスのカメラ機能や、“iモード”などキャリア独自のサービスがメインになっていることも挙げられます。これらの要因により、日本の市場は独自性の強い“島国状態”となり、入り込めなかったり出られなかったりということだったのではないかと思います。ワールドワイドでも、日本のトップメーカーが占めるシェアは1.8%程度ですし。もっとも、ここ数年で無線技術がCDMAやEVDOなどに統一化され、海外の端末も液晶やCPUなどハードウェア部分が日本のそれに近づいてきたほか、日本でもビジネス端末のアピールが増すなど、差が縮まってきたと感じています
[本多]
W-ZERO3の開発でマイクロソフトの日本法人は技術的にどのような役割を担ったのでしょうか
[佐分利氏]
日本には、マイクロソフト(株)と、マイクロソフトプロダクトデベロップメント(日本支店、本社は米国)が調布にあるのですが、マイクロソフトプロダクトデベロップメントに開発チームがあります。ここではIMEのインプットやグローバリゼーションなどについて、全言語の開発などを行なっています。今後日本の市場でWindows Mobileのニーズが高まれば、そのチームの開発領域が広めるといった可能性もあります
Windows Mobile 5.0の“3兄弟”
[遠藤]
現在、ワールドワイドでWindows Mobileを搭載した機器はどのくらいあるのですか
[佐分利氏]
約100機種です。比率は、今のところWindows Mobile for Smartphoneの方が小さいです。人気としては、QWERTYキーボード付きですね。やはり使いやすい。
[遠藤]
流行はQWERTYキーボード搭載なんですね
[佐分利氏]
特に日本語入力の場合は、キーボードがないと厳しいですね。社内でもいろいろ意見があって、世代によって若い人は片手でテンキーの入力に慣れていますし、テンキーでも先読み入力(日本語入力の支援ソフト)の発達で、少ない手数で入力できるようになりました。これからはQWERTYとテンキーが共存するのではないかと思います
[アスキー 矢崎]
移動通信機(携帯電話/PHS)に搭載可能なOS、もしくはPDA等に搭載して携帯電話の機能が使えるようになるOSとしてWindows Mobile 5.0 for Pocket PC、Windows Mobile 5.0 for Pocket PC Phone Edition、Windows Mobile 5.0 for Smartphoneという3種類の“Windows Mobile 5.0”をリリースしていますが、これらはどういった関係性を持っているのでしょう
[佐分利氏]
“Windows Mobile”はブランド名で、Pocket PCやPocket PC Phone Edition、Smartphoneは製品名です。Windows Mobileとした共通化したベース部分の上で、ターゲットに合わせて分岐する形で開発しています。
[伊藤]
Windows Mobile for Pocket PCはバージョン5.0がW-ZERO3に搭載されましたが、そのほか2つのWindows Mobileを搭載した端末は国内ではなかなか見る機会がありません。どういった違いがあるか、より具体的に教えてもらえますか
[佐分利氏]
それらは言わば“3兄弟”なんですよね。
順番に紹介しますと、まずWindows Mobile for Smartphoneですが、基本的には音声通話が主で、さらにOutlookのデータなどを確認できる“リードオンリー”のユーザー向けです。サイズ的にも現在の国内市場向け携帯電話機に近い形ですね。Office Mobileは搭載されていません
次にWindows Mobile for Pocket PC Phone Editionですが、これは文字入力がテンキーではなく、タッチパッドを使ってソフトキーで行ないます。電話の機能はダイヤラー(アプリケーション)を操作します。またOffice Mobileが搭載されており、Wordなどのファイルを読むだけでなく、編集することも可能です。そのほか“スマートダイヤル”機能により、相手の名前や電話番号を途中まで入力すると、残りの部分が自動で入力されるなど、コンタクトリストとの連携が充実しています
最後にWindows Mobile for Pocket PCですが、これは従来のWindows Mobile(Windows Mobile 2003)の機能を踏襲したもので、“クラシック”とも呼ばれています。これからは通信機能を搭載した端末、それ向けのOSが主流になるのではと考えています
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Windows Mobile for Pocket PC Phone Edition搭載端末。PDCらしい外観で、通話のアプリケーションを立ち上げて、ソフトウェアキーないしQWERTYキーボードで電話を指定してかける |
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Windows Mobile for Smartphone搭載端末。日本で売られている一般的な携帯電話機と似たような外観で、使用感もより電話らしい |
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Windows Mobile for Smartphoneの待ち受け画面。W-ZERO3などWindows Mobile for Pocket PC搭載端末とは異なり、日本の携帯電話機が搭載するメニューに近い印象だ |
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Windows Mobile for Smartphoneのスタートメニューを表示。MSN Messengerが搭載し、ActiveSyncでパソコンのOutlookと同期できるのは、マイクロソフト製ならでは |
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Windows Mobile for Pocket PC Phone Editionのように通話用アプリケーションを起動する必要はなく、テンキーで相手の電話番号を指定して、発話ボタンを押下するだけ |
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将来的なイメージは“ライフスタイルフォン”
なぜW-ZERO3は“Pocket PC”だったのか
[本多]
W-ZDERO3は通話機能を持っていますが、OSはWindows Mobile 5.0 for Pocket PCなのですよね? 先ほどの三兄弟の話を伺うと不思議に思うのですが、どうしてなのでしょう
[佐分利氏]
製品としてはWindows Mobile 5.0 for Pocket PCです。通話に関する機能はシャープさんが独自の物を開発し、搭載しています。これはカスタマイズが容易なWindowsの1つの優位性ですね
[石川氏]
“Today”の画面(携帯電話機でいう待受け画面)は、HTMLのようなものなので記述できるため、カスタマイズが簡単なんですよね。そういった部分でも、キャリアやメーカーがカスタマイズできるでしょう
[遠藤]
Pocket PCのトップ画面でアポイントメントがないと「仕事はありません」と表示されるんですよね。これが、デザイナーやフリーのプログラマの心臓にかなり悪いらしくて、私のまわりでは評判が悪かったのです(笑)。今回のW-ZERO3では、それが出ていないのはそんな感じでカスタマイズされていたんですね
[本多]
Windows Mobile 5.0 for Pocket PC Phone EditionでW-ZERO3を出すという選択肢はなかったのですか
[佐分利氏]
PocketPC Phone Editionの開発は、ワールドワイドで普及しているCDMA系とGSM系にフォーカスしており、PHSには対応していません。そのためW-ZERO3では、Windows Mobile 5.0 for Pocket PC Phone Editionの拡張という形をとっています。他の通信方式ならPocketPC Phone Editionで対応することも可能ですけれども
[本多]
ちなみにマイクロソフトとして、W-ZERO3は“PDA”に分類するのですか? それとも“スマートフォン”ですか?
[佐分利氏]
どちらなんでしょう(笑)。ただ、こういった物に通信機能、ワイヤレスLANなりWi-Fiなりを載せて、今後はデータ通信や音声通話がメインになりますし、どちらかというと携帯電話機寄りだと思います。ただ、これまでとちょっと違った携帯電話機として価値を提供させていただいてます
[アスキー吉川]
Windows Mobileとポータルサイトの“MSN”との関係を知りたいのですけれども、MSNのサービスは今後どのように対応していくのでしょう
[佐分利氏]
海外ではすでに展開してまして、“MSN Hotmail”や“MSN Messenger”はもちろん、ブログサービスの“MSN Spaces”も端末の画面サイズに合わせたデザインで提供しています。確証はできませんが、日本でもインストールベースの物を含めて今後対応していく可能性はあります
我々にとってもコンシューマー市場は魅力的
[吉川]
W-ZERO3ですが、“ビジネス向け”と括るのはもったいない気がしますね
[佐分利氏]
段階を踏んでいくのが大切だと思っているんですよ。“何でもできるデバイス”といって投入すると、何ができるかという点で説明しづらいんですね。明らかにパソコンとの親和性、オフィスとの親和性を重視していますし、そこを強調すべきだと思います。ITの過去を見ると、まずは企業の“プロシューマー”ベースで広がって、それがコンシューマーベースへと流れていく傾向がある。我々にとってもコンシューマー市場は魅力的なのですが、まずはビジネス層を動かしていきたいと思います
[遠藤]
シャープの“ザウルス”シリーズもそうですが、個人が買うのと違って企業が導入するには時間がかかります。個人情報保護法もあって、小さい端末を導入するなら企業とのシステムとかみ合わせる必要がある。すなわち、アスキー的な立場から言うと原動力は個人なんですよと言いたい(笑)。進化の方向としてはどのようなものを考えていますか。
[佐分利氏]
今はビジネスにフォーカスしてますが、将来的なイメージとしては、“ライフスタイルフォン”というカテゴリーを狙っていきたい。個人が仕事やプライベートで使えるマネージメントフォンにしたいです
[石川氏]
W-SIMなので。使用する端末を1台に絞る必要もないとは思うんですけどね。ビジネスで使うときはW-ZERO3のようなスマートフォンを使って、プライベートでは別の端末を使うと
[遠藤]
最後に、今後の目標などについてメッセージをいただけますか
[佐分利氏]
W-ZERO3をはじめWindws Mobileをもっとプラットフォームとして立ち上げていけるよう取り組んでいきますので、よろしくお願いします
[石川氏]
もっと面白くするために、コンテンツなどのパートナー企業とともに、モバイルソリューションやアプリケーションを盛り上げていきたいと思います。まずは買っていただいて、そういったところを見守っていただければと思います
(島 徹/編集部 伊藤咲子)
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