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HD編集システムの普及を加速する“Adobe OpenHD認定ソリューション”の目的と現状を、サイモン・ヘイハースト氏に聞く

――「クリエイティブ・ワークに専念できるようにしたい」


2006年3月8日

映画やビデオ、放送の分野において、“HDV”や“非圧縮リアルタイムHD”といったHD(ハイディフィニション)システムが、制作現場に大きな変革をもたらしている。高価な専用システムを使わない、パソコンベースのコストを抑えた制作環境にも、より高品質なものが求められるからだ。

サイモン・ヘイハースト氏
ビデオ/オーディオ製品管理担当ディレクターのサイモン・ヘイハースト氏

そうした中、米アドビ システムズ(Adobe Systems)社は米ヒューレット・パッカード(HP)社、米インテル(Intel)社、米マイクロソフト(Microsoft)社、米デル(Dell)社を始めとしたパートナー企業とともに、WindowsプラットフォームをベースとするHDソリューションの統合・認定プログラム“Adobe OpenHD認定ソリューション”を2005年4月に発表した(アドビ システムズのニュースリリース)。さらに今年1月には、新たに11社のパートナーを追加した。

このAdobe OpenHDの普及に取り組んでいる、同社ビデオ/オーディオ製品管理担当ディレクターのサイモン・ヘイハースト(Simon Hayhurst)氏が、プロ向けビデオ編集関連ソフトの発売開始に合わせて日本全国で開催された開発者向けイベント“Production Studio Debut”のために2月末に来日した。アドビの考える“OpenHDの理想と現状”について直接話を聞いてみた。



●ユーザーの利益を追求するための“Adobe OpenHD”

[――] Adobe OpenHD認定ソリューションのプロジェクトを始めたのには、どのような背景があったのでしょうか?

[ヘイハースト氏] まず、HDシステムを“ユーザーにとって使いやすいものにする”という私たちの信念がありました。米国では、「HDを導入したいが、きちんとシステムが動くようにするのが難しいと聞いている」、という声が多く寄せられました。これは10年前のDV登場直後の状況に似ていると思います。本当にきちんと動くHDのシステムをうまく構築できずにいるユーザーが多くいたのです。ユーザーがそんな心配なく、クリエイティブ・ワーク(制作活動)に専念できるようにしたい。それが私たちの目標でした。

[――] Adobe OpenHDパートナーはどのように結集したのでしょうか?

[ヘイハースト氏] パートナーのHP、インテル、マイクロソフト、デルと話しをした際に、“最初からきちんと動くHDシステムを一緒に作っていくのはとても大事なこと”、という共通認識があったのです。それを背景にして、前回の“NAB2005”(2005年4月に米国・ラスベガスで開催された放送事業者向け展示会)において、Adobe OpenHDの発表に至ったわけです。そのNABでの発表ではほかの映像関連企業からもいい反応を得ました。そこで1月に米国で『Adobe Production Studio』を発表(日本では1月18日発表)した際に、さらに米AJA Video Systems社、米Advanced Micro Devices(AMD)社、米Blackmagic Design社、豪Bluefish444社、米CineForm社、英Focusrite Audio Engineering社、米Huge Systems社/米Ciprico社、カナダMatrox Graphics社、米エヌビディア(NVIDIA)社、米Rorke Data社の11社がAdobe OpenHDパートナーに追加されたというわけです。

サイモン・ヘイハースト氏

[――] Adobe OpenHD認定ソリューションの取り組みは、規格を定めることを主な目的としているのでしょうか?

[ヘイハースト氏] もちろん規格や標準を作るのもひとつの取り組みではあるのですが、Adobe OpenHD認定ソリューションでは、一般の認定プログラムでは実現しきれない形でパートナーが結集することが最も重要なのです。規格化されたターンキーデスクトップシステムを提供することに主眼があるというよりも、世界中で協力してくださっているVAR(付加価値再販業者)やパートナー、ベンダーのみなさんが、顧客のニーズをきちんと満たし、“必ず最初から動作するシステム”を納入しやすく協力するのが大きな目的というわけです。

15社のAdobe OpenHDパートナーと協力することで、顧客に提供する品質をさらにグレードアップできると考えています。デルやHPから「安定したAdobe OpenHDのシステムですよ」、と言われたほうが、販売しているVARにとっても売りやすいですし、もちろんユーザーにとってもきちんとしたサポートが得られて安心できるわけです。こうした高い品質は、「午前2時の納品の締め切りに追われている時」には特に重要ですよね(笑)。

[――] 15社のパートナー以外に、今後加わってほしいと考えている企業はありますか?

[ヘイハースト氏] もちろん新たに参加いただく余地はありますが、すでにMatrox、AJA、NVIDIAなど強力なパートナーに参加いただいています。ソニー(株)にもシステム側から協力いただいています。最初から突っ走るよりも、少しづつ成果を積み重ねていくことがいいと思うのですが、今後はカメラ(カムコーダー)のメーカーなどにも目を向ける必要があると考えています。



●変革期にきている放送業界

[――] Adobe OpenHDの採用に関して、放送、映像制作側の反応はいかがですか?

[ヘイハースト氏] ビジュアルエフェクト専門のプロダクションで、米フォード・モーター社や米Pacificare Health Systems社をクライアントとする米The Basement社には、随分活用いただいており、最も高い品質で成功した事例です。ほかにも何社かにご採用いただいていますが、まだ多くは発表できない状況です。Adobe OpenHDを使っているかどうかはユーザーは意識する必要がなく、私たちとしてもシステムを売り込むことを目的とはしていません。まずは誰もが正しく動作するシステムを入手できるようにして、皆さんに使っていただけるようにすることで、“クリエイターの仕事を楽にすること”が目的なんです。成功事例は時間とともにどんどん出てくると思います。

[――] 米国では映像の制作現場が様変わりしてきているのでしょうか?

[ヘイハースト氏] 放送業界は変革期にきています。ウェブは何千ものライター(筆者)が情報発信することを可能にしました。PodcastやGoogle Videoなどは、これまで知られることのなかった人がより広い地域から多くの視聴者を獲得できる環境を実現しました。今、視聴者は明確な視点を求めており、米Cable News Network社(CNN)などの大手報道機関もコンテンツソースを増やしています。放送がなくなるとは思いませんが、これまでと違うものになるのは間違いありません。それをやるのはiTMSかも知れないし、Googleかも知れません。



●Flashとビデオが生み出す新たな体験

[――] マクロメディアとの統合後、Adobe Production Studioと『Flash Professional 8』は、バンドルパッケージという形をとっていますが、今後、Flashとビデオ編集製品群の連携はどうなりますか?

サイモン・ヘイハースト氏

[ヘイハースト氏] 本当にエキサイティングな時期に来ていると思います。Flashはインターネットに接続できるシステムの98.6%で使われており、クリエイティブな機能を広範囲なデバイスに提供して、利用可能にしています。こうしたFlash再生環境を活用することで、今までにないクリエイティブな仕事ができる。新しい世界が開かれると思います。将来的には、“体を前のめりにして見る”ような、ストーリーとインタラクションできる新しいビデオ・コンテンツが出てくるでしょう。 Adobe Prodution Studioは、本質的には人々が自分のストーリーを語れるような製品であり、Flash Professionalを含む『STUDIO 8』はストーリーをユーザーが探検することができるわけです。

[――] 具体的にはFlashとビデオの連携はどのような体験を生み出すのでしょうか?

[ヘイハースト氏] これまではよりリッチで魅力的な経験であれば、誰もが飛びつきました。しかし、最先端のウェブサイトを見ていくと、それだけではないことがわかります。例えば、米BIG SPACESHIP社が手がけた映画『Underworld』のウェブサイトは、魅力的な環境でビデオを表示しているだけでなく、ストーリーを取り込んで視聴者自身が体験できます。ストーリーの見方を決めつけず、“ストーリーの宇宙”を提供しており、見る側がその中で興味ある部分を探ることができるというものです。

[――] そうしたFlashとビデオの高次元な融合がプロ向けクリエイティブ製品でも実現されるのでしょうか?

[ヘイハースト氏] 具体的な製品の将来展望については話せないのですが、昨年(2005年)の12月1日に2社で共同開発できる環境になったばかりなので、まさにこれからなんです。とはいえ、2つの製品をボックスに同梱する以上のことができたら、新しい価値が生まれると思います。今後の2〜3年は本当にエキサイティングになるだろうと思います。

[――] 日本におけるビデオ製品の今後の展開は?

[ヘイハースト氏] 日本は大変重要なマーケットだと考えています。日本のユーザーはまさに世界の最先端にいると思います。Flashやモバイルビデオを積極的に開発しているのも、活用しているのも日本です。日本のユーザーの声を聞き、大いに開発に反映させていきたいと考えています。



(千葉英寿)


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