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【INTERVIEW】西和彦氏がゲイツ引退を語る(前編)


2006年6月21日

創業者が、会社に見切りを付ける瞬間を僕は知っている

米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長が、2年以内に経営の一線から退くという発表は、驚きをもって迎えられた。なぜ、ゲイツ氏はこの段階で引退を発表したのか? (株)アスキー創業者のひとりで、米マイクロソフト副社長を務めた経歴も持つ、西和彦(にし かずひこ)氏に、お話をうかがった。

西和彦氏
西和彦氏。アスキー創業者で、ゲイツ氏と個人的な親交も厚い

グーグルの存在はゲイツの蹉跌である

[編集部] ビル・ゲイツ氏が現役を退くという報道が先週ありました。この点に関して、コメントをいただくとともに、マイクロソフトの置かれた状況などに関しての見解もいただければと思っています。

[西和彦] まず、今回の発表はマイクロソフトのウェブサイトで各国語に翻訳されて発表されました。これが何を意味するか? それはマイクロソフトが自己防衛のためにやったということです。

マイクロソフトにとって一番怖いのは、ビルが辞めるという噂が広がって、株価に影響が出ることです。2年間かけて、ビルがいてもいなくてもマイクロソフトは変わらないことを世界に伝えたかったのでしょう。

いまマイクロソフトが懸念しているのは、利益は過去最高なのに、株価が低迷していることです。誰もマイクロソフトの株を買いたがらない。利益が出ているのは、世界展開をしていく中で、中国のような新しい市場が立ち上がってきたためです。つまり、新しいものではなく、古いもので儲けている。インターネットの世界では、常に新しいことが起きていて、そういったものでマイクロソフトの存在感があるかというと、ないわけ。

マイクロソフトはさまざまな分野に事業を拡大しているけれど、実質的に利益を上げているのは、Microsoft WindowsやMicrosoft Officeのような昔からある製品群です。それ以外の分野では、すでに誰かがやっているビジネスに手を染めて大きく損失を出している。お金でシェアを買っているような状態です。

「全然新しいことをしないマイクロソフトの責任は、ビル・ゲイツとスティーブ・バルマーにある」という世論を恐れているから、先手を打った。これは“ゲイツが”というよりも、“組織として”先手を打ったということです。

ゲイツ氏とバルマー氏
2006 International CESの会場でXboxの対戦をする、ビル・ゲイツ氏(左)とスティーブ・バルマー氏(右)

[編集部] つまり、ゲイツは組織の判断として、会社を退くことにしたということでしょうか。

[西和彦] そうではないと思う。彼は勝つことに意義を見出すタイプの人間です。いろいろなことを総合的に考えた上での判断だと思うけれど、本当のところは嫌になったんですよ。やってもやってもという感じでね。

ゲイツは、パソコンでは王様だったけれど、インターネットでは王様になれなかった。これは彼としては大きな蹉跌(さてつ)です。だってこれまでチャンピオンですよ。マイクロソフトは、ロータスを潰した。マイクロプロ、デジタルリサーチ、ネットスケープも潰した。でも、グーグルは潰せなかった。iPodも、Linuxも潰せなかった。ヤフーやイーベイも馬鹿にしていたけれど、潰せなかった。

つまり、マイクロソフトの前にはヤフーやイーベイ、グーグル、iTunesが立ちはだかっている。それに対してビル・ゲイツは嫌になったんでしょうね。戦うことが嫌になった。そこでレイ・オジーを呼んできた。

でも、うまくいかないかったらレイ・オジーは首になるでしょう。他の幹部とレイ・オジーがうまくやっていけるかという戦いもあるでしょう。急に業績が悪くなったら、ゲイツはきっと戻ってくるはずです。


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