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【INTERVIEW】西和彦氏がゲイツ引退を語る(後編)

2006年06月28日 00時32分更新

文● 編集部 野末尚仁/小林久

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米マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏が経営の第一線から退くと表明した背景には、ネットワークとコンピューターを巡る新たなパラダイムの誕生があったと指摘する西和彦(にし かずひこ)氏。パソコンの覇者でありながら、ネットでは苦戦を強いられているマイクロソフトは、果たして現状を打開できるのか? インタビューの後半はカリスマ不在のパソコン産業と、マイクロソフトの未来に関して伺った。

西和彦氏
西和彦氏


社会を大きく変えるアプリケーションがネット上で

[編集部] ビル・ゲイツの引退がパソコン産業に与える影響はあるのでしょうか?
[西和彦] 何もないでしょう。でも、前にも言ったけど、ビル・ゲイツが引退して金をばらまくだけの存在になるかというと、絶対そうはならない。
[編集部] ビル・ゲイツ氏が引退して、スティーブ・ジョブズも健康が心配されています。1970年代にパソコンの礎を築いてきた人々が業界を去っていくことに寂しさを感じます。
[西和彦] 年を取るからね。みんな50代だから。でも一線を退く人もいるけど、そうでない人もいるよ。生き残っていけるのは、第一線で戦い続ける人だけ。
[編集部] しかし、彼らの後を継ぐようなカリスマは業界に現われていません。例えば、グーグルには優秀なプログラマーが揃っているのでしょうが、何となく物語的でないというか、パソコン業界そのものがどこか無機的になっている印象も受けるのですが……。
ネットがテレビを飲み込む日
『ネットがテレビを飲み込む日』(洋泉社、1000円)。西氏も一部執筆を担当した
[西和彦] そうじゃないでしょう。この業界の歴史を振り返ってみましょう。

最初にCPUが登場した。ここでは、インテルのロバート・ノイスやゴードン・ムーア、AMDのジェリー・サンダースといった人物が重要な役割を果たした。

次にソフトウェアの時代が来た。マイクロソフトはWindowsを作り、ビル・ゲイツやポール・アレンが活躍した。

一方で、マイケル・デルやスティーブ・ジョブズは、ハードウェアのビジネスで成功した。

ネットの世界ではやっぱりヤフーでしょう。次にイーベイ。

ヤフーとイーベイはウェブベースだったけれども、その次にグーグルが来た。グーグルはまずサーチをやって、分散データベースを作った。

そして、iTunesが登場して、音楽から映画の販売をやっている。

特定の機能に絞り込んだハードウェアも登場しつつある。日本では“iモード”や“写メール”のようなサービスも出てきた。

つまり、戦っているパソコンという“ドメイン(領域)”で違ってきたわけ。ネットそのものが分散データベースになり、データベースオリエンテッドなパラダイムが生まれた。そして、それをパソコン以外のさまざまなネットワークアプライアンスでそれを利用する時代がやってきた。この2つが現状としてある。

そして、ここに、社会を大きく変えるようなアプリケーションが出てきている。

ひとつはSkypeに代表されるようなインターネット電話、次がストリームとiTunesが合体したようなインターネットテレビです。電話もテレビも近い将来ネットに吸収されていくでしょう。

このへんのことは、つい最近共同で出版した『ネットがテレビを飲み込む日』(洋泉社)という本の中で書きました。






パソコンはメディアであり続ける

[編集部] 西さんは月刊アスキーの創刊時からパソコンがメディアになると主張されてきました。
[西和彦] ああ、30年経って、そうなったですね。
[編集部] 実際にそうなったわけですが、携帯電話などさまざまな機器が出てくる中、パソコンは今後どうなっていくと考えますか?
[西和彦] メディアになったパソコンはどうなるのか……。メディアであり続けると、僕は思います。パソコンはユニバーサルなメディアになっていくでしょう。つまり、パソコンの上で電話が動き、テレビが動き、ウェブが動く。
[編集部] パソコンの時代は終わらないということですね。
[西和彦] 全部できるものがパソコン。これとは別にアプリケーションに特化したハードウェアが現われてくるということだと思います。

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