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【INTERVIEW】ビジネスシーンを変革するAdobe Acrobat 8の戦略を米アドビ システムズに直撃!!


2006年10月13日

11月17日に発売される『Adobe Acrobat 8』は、PDFを中核とするビジネス文書ソリューションに大きな変革をもたらす。例えば、従来はエンタープライズ製品群との連携が前提とされていたレビュー機能(注釈やコメントの付与など)や入力フォーム機能(記入された情報の収集・管理など)が、OSが提供する共有フォルダーと無償配布のAdobe Reader 8(12月配布開始予定)の組み合わせでも気軽に使い始められるようになった。さらに、ウェブ会議を実現する旧名『Macromedia Breeze』が『Adobe Acrobat Connect』にリブランドされて、Acrobatファミリーの一員に加わった。

山本晶子氏ら
今回のインタビューに参加いただいた、米アドビ システムズのナレッジワーカービジネスユニット シニアプロダクトマーケティングマネージャの山本晶子氏(中央)と、アドビ システムズ(株)のナレッジワーカー部部長の米澤 香氏(右)、同じくナレッジワーカー部プロダクトマーケティングマネージャーの小圷義之(こあくつよしゆき)氏(左)

そんな大きな転換点を迎えたAdobe Acrobatファミリーについて、製品戦略と今後の方向性などを米アドビ システムズ(Adobe Systems)社のナレッジワーカービジネスユニット シニアプロダクトマーケティングマネージャの山本晶子氏にうかがった。

Adobe Acrobat 8シリーズは、仕事の環境を無理なく変える
そして道はApolloへとつながる!?

[――] まず初めにお聞きします。Adobe Acrobat 8の最大のセールスポイントは?

[アドビ] “操作性”。この一言に尽きますね。それと英語では“Discoverability”(発見可能性)といいますが、ユーザーの皆さんには“操作ガイド”でやりたいことを容易に見つけていただける、ということです。Acrobatでできることは知っているけれど、どういう手順で実現できるのかが分からないので、「チュートリアルを付けてほしい」というのは、本当に全世界のユーザーから要望がありました。

[――] Acrobat 8では、PDFのセキュリティー設定が多様化して、“扱いが緩くなった”ように思います。何か方針の変更があったのでしょうか? 以前はセキュリティーでPDFに何も変更が加えられなかったという印象がありますが。

[アドビ] 今では誰もがPDFを作ることは当たり前になりました。世の中には本当にたくさんのPDFがあって、Adobe Readerでコメントつけるとか、作ったからには何か活用したいわけです。そして、次は自分もやってみようということがどんどん広がっています。作る先が広がって、見る、作る、印刷するが当たり前になったわけです。そうした状況の中でもっともっとPDFを活用いただこうというわけです。

[――] その意味では今回のAdobe Readerでのレビューや注釈、電子署名などの権限拡大は、大変影響が大きいと思います。Adobe Readerの位置づけそのものが変わったのですか?

[アドビ] 今回、Adobe Readerを“解放”したことで、PDFを再活用する裾野が広がったと思います。PDFはすでにデファクトスタンダードになっていますので、今までのものも使えるんだという意味で、より幅広くお使いいただけると思います。その活用のシーンはビジネスはもちろんですが、一般の方にとっても、例えばスライドショーが見られるとか、旅館の予約をするのにPDFを使うといった具合です。そのシーンに応じて、コンテンツによって、見方や感じ方が異なるのではないでしょうか?

[――] Adobe Readerに限らず、Adobe Acrobat Connectの登場など、今回のリリースでは実にさまざまな点で変更がありますが、全体を通じてAdobe Acrobatファミリーはどう変わったのでしょうか?

[アドビ] “変わる”というより、“もっと広がる”とお考えいただければと思います。今回のリリースは“新しい働き方”を提案していきたいということであって、Adobe Acrobatはドキュメントベースで電子の紙というわけですが、使っている私たちは、実際には話をしながらだったり、相手の顔を見ながらだったりと、アナログ的な働き方もたくさんしています。これは無視できないことです。

「いままでの働き方を180度変えて効率よくしましょう」と言っても、うまくいかないこともあります。やり方を変えることへの抵抗感もあるでしょうし。リアルタイムの部分とオンラインの電子的なやり取りを上手に組み合わせて使って、ユーザーに易しい環境でもっと効率よく仕事をする新しいワークスタイルを提案したいと思います。広い意味では、「もっとコラボレーションを広げましょう」ということになります。

Adobe Acrobat 3Dのパッケージ
Adobe Acrobat 3D Version 8のパッケージ

[――] それぞれの製品の位置付けについてお聞かせください。

[アドビ] Adobe Acrobat 3D Version 8』は製造業などでCADを使う方に特化しており、『CATIA』や『Pro/ENGINEER』のようなプロ向け3D CAD製品で作成したコンテンツをPDF化することで、CADアプリケーションを持たないユーザーとの間でも3Dコンテンツの共有やレビューが行なえます。『Adobe Acrobat 8 Professional』もプロ向けに特化していますが、対象は主にプロジェクトリーダーのように企業内で大きなプロジェクトを進める人です。社内外のベンダーなどとの共同作業をマネージメントしたり、何かレビューを起案したり、電子フォームを流したりする人がお使いになっていますね。

Adobe Acrobat 8 Standard』はパソコンを使って情報を得ている、広く一般のビジネスユーザーが対象になります。『Adobe Acrobat 8 Elements』は企業ユースのファーストステップとしてお使いいただく事が多いのですが、ほとんどのケースが半年ぐらい立つとAdobe Acrobat Standardに移行されます。最初からAdobe Acrobat Standardのところも意外に多くて、混在環境が多いのもビジネスユースでの特徴になっています。そうした中で、Adobe Readerの価値はますます上がってきていると言えます。

[――] こうした変化の影には“Apollo”(FlashとPDFを共存させるという、同社の次世代アプリケーションプラットフォーム)の存在があると思うのですが?

[アドビ] 将来のことについて詳しくお話することはできませんが、全社的な戦略として、最大のアセット(資産)であるPDFをApolloに融合させていくのは当たり前だと認識しています。

[――] ということは、Adobe Acrobat 8はApolloに繋ぐためのファーストステップということなのでしょうか?

[アドビ] そうした部分はあると思います。実際に動くものはまだありませんので、時期がきたらお知らせできると思います。

墨消し機能の追加にはハリケーン“カトリーナ”が影響

Adobe Acrobat 8 Professionalのパッケージ
Adobe Acrobat 8 Professionalのパッケージ

[――] Adobe Acrobatが6から7にバージョンアップしたとき、パフォーマンスの向上は劇的なものがありましたが、今回はいかがですか?

[アドビ] おっしゃるとおり、Adobe Acrobat 7では大変パフォーマンスが向上しました。今回も若干上がっていますが、前回ほどではないと思います。ただし、AutoCADからのPDFへの変換時間については80%向上しました。PDFの品質もよくなり、ファイルサイズは小さくなっています。また、これは来年になりますが、Adobe Acrobat 3D Version 8に関してパフォーマンスがかなり上がる予定です。

[――] Adobe Acrobat 8の新機能のひとつ、墨消し機能についてですが、これだと元のデータがなくなって困ることはありませんか?

[アドビ] この機能を加えた経緯からお話しますと、昨年、北米で“カトリーナ”という大型ハリケーンがありましたが、このときにさまざまな資料が公表される中で、“出てしまってはいけないものが多いこと”が指摘されました。この件に限らず、未成年者の情報など、個人情報保護の観点からも出してはいけない場合も多く、これらをただ単にハイライトで墨消しに見せかけても、サーチ(検索)してしまえば、見えてしまうことが問題になっていました。

墨消し機能の場合、“削除した事実が分かる”ものになり、改竄にはならない処理ができます。また、墨消しで元データがなくなるということはありません。当たり前のことですが、別名で保存して、きちんとオリジナルを管理すればよいわけです。

[――] PDFをパッケージ化する機能についてですが、この場合、パッケージしても拡張子は“.pdf”のままでしょうか? また、パッケージ化することでファイルが大きくなったりしませんか?

[アドビ] そうです、.pdfになります。PDFの管理をいかに効率的にするか、ということで導入したもので、印刷系にももちろん使えますし、透かしや通し番号も入れられます。これまでも“結合”機能そのものはありましたが、署名のついたファイルを一緒に束ねることはできませんでした。

また、ファイルサイズが大きくなることもありませんし、最適化もできます。一発で最小化でき、細かく指定したダウンサンプリングもできます。もちろん画像が劣化して見えなくなることはありませんので、校正作業などにもお使いになれます。

Adobe Acrobat 8 Standardのパッケージ
Adobe Acrobat 8 Standardのパッケージ

[――] Mac OS X版はユニバーサル対応となりましたね。

[アドビ] Intel Macでのパフォーマンスについては現状維持です。ただし、プロの印刷向け機能が強化され、特にプリフライト(出力前のデータチェック)の部分が変わりました。

[――] これは必ずお聞きする質問のひとつなのですが、ビジネス向けとクリエイティブ向けの機能をAdobe Acrobatというひとつのアプリケーションでこなすのは厳しいのではないでしょうか? これらが別ライン、別の製品になる可能性はありますか?

[アドビ] ビジネスとクリエイティブ、どちらのマーケットも大変重要ですので、それぞれのターゲットに対して、2つの部隊で開発を進めています。一緒に開発する部分もあれば、そうでない部分もあります。また、これらを分けてしまうというプランは、いまのところはありません。

“紙の代用”になることを伝え続ける
電子会議も気軽に参加できるようになる

[――] 今回、製品のプレゼンテーションを拝見していますと、“紙”ということを連呼していたように思いますが。

[アドビ] “紙”を強調したのは、いろいろなものがどんどんオンラインになっている中で、アナログな働き方もまだまだ残っています。そこから電子の紙であるPDFに無理のない移行をしないと先に進めなくなる、ということがありました。あえて「紙を扱うように」、と再三お話をさせていただいたのも、「無理なく移行していただきたい」と考えたからです。

[――] いまだにPDFではなくWordで資料送ってくる企業や個人も多いと思うのですが、こうした方にどうやって伝えていこうとお考えですか?

[アドビ] PDFはものすごい勢いでデファクトスタンダードになってきています。Wordファイルのやり取りも現実的には減ってきているのではないかと思いますが、今後も啓発活動を続けて、「なぜPDFなのか」を伝えていかなければならないと考えています。フォーマットとして語るのではなく、PDFにしなければいけない理由をワークフローの部分で理解していただく。そうしないとPDFはただの“いちフォーマット”で終わってしまうと思います。今後も「紙のように書き込める」とか、「コメントを書く」とか、「セキュアーに署名する」とか、紙でできることはPDFでできる、「紙感覚で」というメッセージを出し続けたいと思います。

[――] PDFはプラットフォームですが、NEC(日本電気)や日立製作所は詳細なソリューションとして企業ユーザーに提供しています。そうしたベンダーと比較した際のAdobe Acrobatの強みは?

[アドビ] たとえAcrobatがバックエンドで走っていても、パートナーは独自のソリューションを前面に押し出しています。Acrobatの強みは非定型のものがうまく扱え、フレキシブルに対応できることで、ガチガチに作りこんでしまったシステムもそうでないものでも対応できるということです。つまり、「私(だけの)のソリューションが構築できる」「ユーザーレベルでカスタマイズできる」ということです。

[――] その場合、逆に言えば与えられてやることが多い仕事の人にとってはツライところがあるのでは?

[アドビ] 実際、レビューに参加したり、電子署名を付与というのはそれほど難しいことではないと思います。それに、自分からレビューを起案したり、自分からウェブ会議を招集したりと、もっと作業の効率化を図った方が、社内での評価も上がるかもしれませんよ。

Adobe Acrobat Connect Professionalの画面
Adobe Acrobat Connect Professionalの画面

[――] ウェブ会議というと『Adobe Acrobat Connect Professional』ですね。こうしたウェブ会議のソリューションは既存のものがたくさんありますが、どこが強みと言えますか?

[アドビ] やはりFlashを使うところが強いと思います。大規模導入もできますが、専用端末などを用意する必要がありません。電話とメールとネットワークさえあれば、すぐに始められるんです。社内の場合は誰か呼ぶ人があれば(Adobe Acrobat Connectのサーバーを立ち上げた人が1人いれば)、参加するためにAdobe Acrobat Connectのライセンスは必要ありませんので、気軽に参加できます。そこが他社とは大きな違いですね。さらに、Adobe Acrobat Connectの持ってるAPIでVoIPで音声を繋いだりと、拡張性があります。

もちろんMacにも対応していますので、社外のデザイナーとの校正作業なども問題なく行えるわけです。今後はAdobe Creative Suiteにも組み込まれていくと思います。



(千葉 英寿)


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