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【INTERVIEW】まずは「絵を出す」という作業が大変なんです――K10Dの開発者に聞く(前編)

2006年12月04日 23時27分更新

文● 聞き手 小林 伸/撮影 岡田清孝

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デジタル一眼レフカメラメーカーの開発者を直撃する本企画。今回は、ペンタックス(株)の『PENTAX K10D』(2006年9月発表)を取り上げる。3月に行なわれた“Photo Imaging Expo 2006”で参考出品された本製品は、ペンタックスとしては久々の中級機。競合ひしめく10万円台前半1000万画素機のカテゴリーに満を持して投入される1台だ。7月に発売された『PENTAX K100D』の上位機となり、今までのようなマイナーチェンジモデルではなく、フルスクラッチの新機種となる。

K10D
K10D

機種ラインアップの上下関係が今ひとつすっきりしなかった“*ist”シリーズに対して、K100Dとのクラス分けを明確に打ち出してきたのも特徴。K100Dが実現していたCCDシフト方式のボディー内手ぶれ補正(SR)はもちろん、ごみ取り機能(DR)や、新開発画像処理エンジン“PRIME”(プライム)を搭載。このクラスとしては破格の22bit A/Dコンバーターを使用し、DDR2メモリーによる高バス帯域化も図るなど、デジタル回路の大幅な強化も行なわれている。ボディーもヘビーデューティーに耐えうる防塵・防水設計とした。

まさに盛りだくさんの機能を備えたK10D。人気機種のK100Dに続くモデルということもあり、その開発にはさまざまなプレッシャーもあったはずである。今回は、K10Dの開発陣にそのあたりの話も聞いてみた。

PENTAX K10Dの開発陣
PENTAX K10Dの開発陣。前列左がイメージングシステム事業本部第一開発部の平井 勇氏、右が第二開発部の森下 茂氏、後列左が堀田 智氏、後列右がマーケティング統括部 製品企画室の畳家 久志氏


まずは「絵を出す」という作業が大変なんです

[――] K10Dでは、撮像素子がようやく1000万画素の大台に乗ったわけですが、新しいCCDを使いつつ、評判の良かった絵作りを継承するのは大変だったのではないですか?
平井氏
CCDハード画質を担当した平井勇氏
[平井] 1画素あたりの受光面積が狭くなっているので、感度は従来のCCDよりひと絞りぶん不利になっています(ISO 100~1600相当)。これは高感度のノイズに影響してくる部分ですが、K10Dではそのあたりを充分検討したうえで、当社が理想とする“フィルムライクな画質”を目指してきました。確かに、感度を上げていけば徐々にノイズが増えてきますが、そのノイズが自然に見えるように心がけています。特に配慮したのは、画像処理でノイズを不自然に潰した“デジタルライクな絵”にならないようにすることです。作られた印象の絵ではなく、できるだけ自然な絵で撮影できるようにするため、細かなチューニングを行なっています。
[――] K100Dは、*ist DS2やDL2と同じ有効600万画素のCCDを採用していました。スペック競争という点を考えなければ、同じCCDを使い続けたほうが安定した絵が得られるというメリットがあると思います。しかし、今回はまったく新しいCCDです。従来機とはまったく異なるアプローチが必要だったのではないでしょうか?
[畳家] 他社も同様だと思うのですが「こんな状況でスケジュール通りに開発できるのか?」というぐらい、ギリギリまで試行錯誤を行ないます。
[平井] 新規のCCDでは、まず絵を出すところまでが苦しい作業になりますね。基準感度(ISO 100相当)で、ある程度の絵を出すということなら、それほど時間はかかりませんが、そこから感度を2段、3段と上げていくと、ある感度に達したところで、極端に悪い絵が出力されてしまいます。ここからが大変で、何が原因なのかを特定して、例えば、基板を作り変えるといったトライ&エラーの繰り返しになります。ファームウェアはこれと並行して開発されていますので、それぞれの開発グループがいろいろとやりとりしながら、徐々に画質のレベルアップを目指していくのです。この作業が済んで、ようやくチューニングの作業に入れるわけです。


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