松下電器産業(株)と任天堂(株)は12日、DVDを用いた次世代ゲーム機の開発において提携すると発表した。
固い握手を交わす松下電器の森下社長(左)と任天堂の山内社長 |
今回の提携は、高度なCGやネットワークを活用した新世代ゲームの開発をもくろむ任天堂と、DVDをプラットフォームにデジタルネットワーク家電の推進を狙う松下電器の思惑が合致して行なわれたものとなる。
今回の提携で発表された製品・サービスは4種類。松下電器のDVDドライブを搭載する任天堂の次世代ゲーム機『dolphin』(ドルフィン:仮称)。松下電器のデジタルAV機器と次世代ゲーム機を融合させた“DVDゲームシアター”と”ポータブルDVDゲームプレイヤー”。新たなサービスを創出させるという、デジタルプラットフォームの“X-21”。
次世代ゲーム機は、13日から米ロサンゼルスで開催されるE3において、米ニンテンドーがコードネーム“dolphin”として紹介するもので、2000年末に全世界で一斉発売するという。価格は現在のところ未定。
次世代ゲーム機の概要
CPUには、PowerPCアーキテクチャーを拡張した米IBM製のカスタム・プロセッサーを採用。動作周波数は400MHz。銅配線技術を用いた0.18ミクロンの半導体プロセスで製造される。このCPUの供給について、米ニンテンドーと米IBMでは総額10億ドル(約1200億円)の契約を結んでいるという。グラフィックスについては、米ArtX社と共同で開発したフルカスタム・システムLSIを採用しており、動作周波数は200MHzとなっている。製造にはDRAMを混載した0.18ミクロンの半導体プロセスを採用している。
メモリーユニットには高速DRAM技術を使っており、メモリーバス・バンド幅は毎秒3.2GB。
DVD-ROMドライブには松下電器のDVD技術を使い、強化されたコピープロテクトを採用。DVDビデオは再生できない。ゲーム機用DVDメディアは、当初再生専用で開発しているが、ゲームによっては書き込みができるようにすることもありえるとしている。
次世代ゲーム機とデジタルAV機器の融合
“DVDゲームシアター”と”ポータブルDVDゲームプレイヤー”は、dolphinにDVD技術を融合するもの。DVDのフォーマット(DVDビデオ、DVDオーディオ)の再生が可能で、次世代ゲーム機のゲームもプレーできるという。発売は次世代ゲーム機と同時かそれ以降としている。“X-21”は、家庭用情報端末の役割を担うもので、エンターテイメント分野とクリエイティブな分野を融合した、新たなスタイルのデジタルプラットフォームになるとしている。仕様については、両社の技術を公開しあって今後検討していくという。発売時期は未定。
「新しい世界を切り開く」と語る松下電器の森下社長 |
松下電器の森下洋一社長は、「21世紀のデジタルネットワーク社会を実現するために、DVD、デジタルSTB(セット・トップ・ボックス)やデジタルビデオカメラなどの開発を行なっている。特にDVDは、2000年に6000万台の普及が見込まれ、期待されているメディア」と語り、「このDVDとネットワーク接続を生かして、新たなサービスを展開していきたい。DVDとゲームを融合することにより、DVDを応用した新たな世界が切り開けるだろう。この提携によって、両社の強みを生かし、相互に協力し合うつもりである」と述べた。かつての3DOのような純粋なゲーム機を販売するのかという質問については「販売しない」と断言した。
「ゲームの質的な転換が必要」と語る任天堂の山内社長 |
任天堂の山内薄社長は、「CD-ROMのゲームは違法コピーが拡大している。調査したところ、イタリアで60%、米国で20%もの違法コピーが横行している。TVゲーム機はソフト主導のため、ソフトのマーケットが崩れると、すべてがだめになってしまう。つまりCD-ROMでソフトを出すことは問題であり、また、日本のユーザーは今までのゲームに飽き始めているため、ゲームの質的な転換が必要である」と述べ、「これらを考えると、松下電器が推奨するDVDとネットワークを採用することで、新しいゲーム機を作るのが最も適していると判断し、今回の提携に踏み切った」と語った。
次世代ゲーム機のソフトについて山内社長は、「ソフトの開発については独自の考えを持っているため、開発は社内と任天堂のパートナーで行なう。サードパーティーにはまだ声をかけることは考えていない」と語った。