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富士通日立プラズマディスプレイ、事業方針説明と新製品発表

1999年09月06日 00時00分更新

文● ケイズプロダクション 岡田 靖

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PDP専門の合弁企業、いよいよ新製品を発表

プラズマディスプレイ(PDP)は薄型の大画面ディスプレイで、原理的には少なくともCRT並みの画質を安価に実現できることから、“21世紀の本命ディスプレイ”とさえいわれ、期待されている。だが、現状ではまだコストが高く、画質もCRTに劣るところがある。特に、開発や製造ラインには多額の投資が必要で、業界をリードしている富士通でさえ、うかつに増産に踏みきれないという背景がある。そんな中、'99年4月に富士通と日立製作所の折半出資で、PDPの開発・生産・販売を行なう“富士通日立プラズマディスプレイ(株)”(FHP)を設立した。

富士通(株)は業界に先駆けてPDPの製品化を成し遂げ、現在でもトップシェアを維持している。また、(株)日立製作所は、25型SXGA対応、41型XGA対応など、高精細PDPの技術に優れている。この両社は以前から協力関係にあったが、合弁会社によって資本や開発力、製造能力を強化するのがねらいだ。

本日6日、都内ホテルにて同社が主催した“FHPプラズマフェア”で、改めて新会社の概要説明と、製品の発表が行なわれた。

PDPのトップランナーとして……

まずは、代表取締役社長の桂田透氏が壇上に立ち、事業説明を行なった。

代表取締役社長 桂田透氏
代表取締役社長 桂田透氏



4月の設立以後、7月に営業を開始、現在は順調に事業を展開しており、今後はPDPのトップメーカーとして積極的な設備投資を実施する計画だ。新規生産ラインの完成により、現在月産1万枚の生産能力を、2001年には同7万枚まで引き上げ、2003年には1500億円の売り上げを目指しているという。新ラインは現在最終検討段階で、近々発表できるとした。

今後のPDP市場としては、2000年からの日本国内でのBSデジタル放送開始をきっかけに需要が伸びると予想される(特に、2002年のワールドカップで爆発的な需要が期待される)デジタルTVに的を絞り、今までの情報表示向けの技術から、TV画像表示に適した特性を伸ばしていく方針という。

富士通日立プラズマディスプレイのロゴ
富士通日立プラズマディスプレイのロゴ



PDPが拓く未来・デジタル映像時代のホームインフラ

続いて、取締役副社長の角田義人氏が、PDPの応用分野の解説を行なった。

取締役副社長 角田義人氏
取締役副社長 角田義人氏



PDPは現在、出荷数量の大半が業務用であり、公共施設や店舗などで不特定多数が見るディスプレイとして用いられている。しかしその需要は大幅な伸びが期待できない。一方、家庭用の市場はさまざまな予測がなされているが、2001~2002年に逆転し、2003年には総需要の3分の1を占めるとFHPでは予測、今後は家庭への浸透を目指す方針だ。

FHPによる、ワールドワイドのPDP需要予測
FHPによる、ワールドワイドのPDP需要予測



近い将来、家電のデジタル化に伴い、さまざまなデジタル機器がホームネットワークに接続されるようになる。その中核には「マルチパーパスデジタルテレビ」があり、様々な情報を表示する役目を負うとされる。

そのデジタルテレビに要求されるのは
・大画面でかつ省スペースにするためのフラットパネル化
・高画質映像表示能力
・デジタル処理
などだ。

各種ディスプレイと比較すると、LCDは25型程度までで大画面化に向かない。CRTは40型以上も可能だが、大画面化に伴う重量増が問題となる。また、大画面にもっとも適しているプロジェクタは、画質が今一つという課題が残る。一方、PDPは適切なサイズで、画質もよい。これらを総合して考えると、PDPがもっとも有力な候補といえる。

画面サイズと解像度による、各ディスプレイデバイスのマトリクス
画面サイズと解像度による、各ディスプレイデバイスのマトリクス



CRT PDP LCD プロジェクタ
大型化 ×
薄型軽量 ×
高画質映像
広視野角 ×
デジタル処理 ×
磁気フリー ×
低消費電力 ×


ただし、PDPの弱点は消費電力の大きさだろう。現在、パネル単体でも250Wあまりと大きく、これをTVセットとして組み上げれば、300Wに迫るほどだ。また、一部で指摘されているが、内部のプラズマ発光がコントラストを大きく下げているなど、画質面でも改善の余地がある。さらに、価格はまだ高い。市販の42型TVセットモデルでも、ようやく100万円を切るかどうかという状況だ。価格のロードマップが示されているが、これを実現するには並々ならぬ努力が必要になるだろう。

先の需要予測には、これだけの低価格化が必要になってくる
先の需要予測には、これだけの低価格化が必要になってくる



とはいえ、PDPはまだこれから期待できるデバイスだ。大画面でもそれほど重くならないので、気軽に動かせる。「見る人が主役となって、新たなアメニティ空間の創造につながる」(角田氏)のだ。「20世紀はCRTの時代、21世紀はPDPの時代」という言葉が現実のものになるか、この合弁企業の試みにかかっているのかもしれない。

FHPのPDP製品ラインナップを紹介


最後に、設計統括部長の広瀬忠継氏が、FHPのPDP製品ラインナップを紹介した。

設計統括部長 広瀬忠継氏
設計統括部長 広瀬忠継氏



現在は以下の4種類となっている。

・42型ワイドVGAタイプ。業界の標準仕様となったスタイルで、量産開始以来7万台が出荷されている。
・42型HDTV対応(ALIS)タイプ。99年3月よりサンプル出荷をしていたが、下期から量産出荷を開始する。
・25型SVGA対応タイプ。42型のマザーガラスから2面取りできるようにし、'99年10月より量産・出荷開始。
・41型XGA対応タイプ。40型クラスで4:3は、意外と少ない。非常に高速なアドレス回路を設計し、分割駆動せずに実現した。

このうち、42型HDTV対応(ALIS)タイプと25型SVGA対応タイプは、今回が初めての量産出荷発表となった。

課題とされている低コスト化についても、パネルは新プロセスで克服し、駆動回路ではALISとシングルスキャンで規模縮小、および低電圧駆動方式の開発で克服していくという。また、性能向上・高信頼性化をさらに進め、発光効率向上で高輝度・省電力を追求、高速アドレスで高画質化(多階調・高い動画品位)を実現していく方針とした。

FHPの製品ロードマップ。当面はTV用と情報表示用の区別が残るという
FHPの製品ロードマップ。当面はTV用と情報表示用の区別が残るという



製品サンプルで応用例などを展示

発表後、会場を改めて製品サンプルの展示と懇談会が行なわれた。製品展示では、実際の利用状況に近い形のブースを設け、さまざまなディスプレイが展示された。


これは絵画ではない。PDPを応用した画像表示システムだ。油絵にあわせて表示特性を調整してあるというが、遠目には額に納まった絵に見える
これは絵画ではない。PDPを応用した画像表示システムだ。油絵にあわせて表示特性を調整してあるというが、遠目には額に納まった絵に見える




25型SXGA対応PDPモニタ。高精細で大画面ながら非常に薄い。ただし、近くで見るとわずかにドットのちらつきが認められる
25型SXGA対応PDPモニタ。高精細で大画面ながら非常に薄い。ただし、近くで見るとわずかにドットのちらつきが認められる




FHPからパネルをOEM供給し、ソニーが開発しているTVモニタ(実際に発売されているかは未確認)。放送局のスタジオを模したブースに展示されていた
FHPからパネルをOEM供給し、ソニーが開発しているTVモニタ(実際に発売されているかは未確認)。放送局のスタジオを模したブースに展示されていた




42型PDPを縦長に使うと、このような案内システムに応用しやすいという例。百貨店や駅の、柱の太さにちょうど納まるのがポイント
42型PDPを縦長に使うと、このような案内システムに応用しやすいという例。百貨店や駅の、柱の太さにちょうど納まるのがポイント



記者の質問に対し、「300万台の需要予測だが、150~500万と幅広い数字があり、その中ほどを考えたもの。そのころには、シェア30~40パーセントくらいと考えている(角田氏)」という。ちなみに現在は70~80パーセントほど。シェアは減るのだが、「このままのシェアを維持するようだったら、それなりの市場にしかならない」と冗談めかして語った。

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