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【台湾企業レポート Vol.2】「大切なものは“人”と“勇気”」−−DATA SYSTEM IMAGING社、王齋顯総経理に聞く


1999年12月24日

DATA SYSTEM IMAGING社(DSI)は、台湾・台北に本社を置く画像処理システム専門の会社。中国語名は柏格科技股イ分有限公司となる。設立は'91年で、現在の従業員数は14名。同社を訪れた時、総経理(社長)の王齋顯氏は、ベルギーから戻って来たばかりだったという。

DATA SYSTEM IMAGING社の受け付け。中国語表記の社名を見るとわかるように、“イ分”は“人偏に分”と書く。日本語フォントにはない漢字のため、便宜的に“イ分”と表記した
DATA SYSTEM IMAGING社の受け付け。中国語表記の社名を見るとわかるように、“イ分”は“人偏に分”と書く。日本語フォントにはない漢字のため、便宜的に“イ分”と表記した



ベルギーは画像処理の分野では世界トップレベルにあるとのことで、そのベルギーで開かれていた会議に王氏は参加してきたところだった。

「ウチは小さな会社だから」と謙遜しながら話す王氏だが、年間の売上高は4000万元(約1億2780万円)に及び、純利益は30〜40パーセントという高い水準にあるという。

Data System Imaging社の総経理(社長)を務める王齋顯氏(39)
Data System Imaging社の総経理(社長)を務める王齋顯氏(39)



おむつ作りにも利用される画像処理システム
DSIの主な業務は、ICパッケージ分野における画像処理システムだ。「半導体の製造には大きく分けて前工程、後工程という2つの工程があります。我が社のシステムはこの後工程の部分に導入され、出来あがった製品を写真に撮り、その不具合を検査をするためのものなのです」と、王氏は説明する。

王氏によると、「画像処理システムは、何も半導体メーカーのみならず、色々な分野で活用することができる」のだという。だが今ひとつ把握できない記者に、「半導体を例にとって説明するからいけないんですね」と笑いながら、身近な物を例にとって解説してくれた。それは乳児用の“おむつ”。

「たとえばおむつの脇にテープがついていますよね? そのテープが曲がっていないか、長さは基準通りか、また、縫い目は曲がっていたりしないか、ギャザーは規格通りに入っているか。人間の目でひとつひとつ検査していたら人件費が掛かって大変ですが、その検査部分を機械化し、メーカーに合わせたソフトウェアを作るのが我々の会社の仕事」なのだそうだ。

こう聞けば、なるほどと納得できる。しかも、これは単なるたとえではない。DSIのシステムは、実際におむつの検査に使われているほか、飲料瓶、太陽の動きを撮影しての解析、電池の中にある液体の流れの分析など、大学関係の研究にも実際に導入されている。

DSIのシステムで検査するICパッケージが、社内に無造作に置かれていた
DSIのシステムで検査するICパッケージが、社内に無造作に置かれていた



このような画像処理システムの会社は台湾にも数社あるそうで、業界全体から見ると、DSIは決して大きな会社ではない。しかしながら、「ユニークな商品で顧客から支持を集めている」という定評があり、台湾全土に顧客を抱えている。

顧客から支持を得られるその秘密はどこにあるのかと尋ねれば、
「私たちの会社は、常に顧客のニーズに合った非常にユニークなシステムを作り出そうと努力しているためだと思います」と王氏は語ってくれた。

競合相手は? と聞いてもみたが、「今のところありませんね」と、自信タップリに否定されてしまった。

いつの間にやら社長さん?
こんな王氏が会社設立を思いたったのは、今から約8年前。王氏は、台湾の理工系大学である中原大学で電気工学を学んだ後、画像処理用カメラや画像処理ボードの貿易を営むGORMAN社という台湾の会社にエンジニアとして入社。取り扱い製品のメンテナンスなどを5年あまり担当した後、出身地である台湾南部の嘉義から高雄エリア担当の営業スタッフとして働いていた。

「1年間の営業を経験してみてわかったことがありました。それは、顧客はカメラや画像処理ボード単体だけではなく、ソフトウェアがパッケージされているものを欲しがっている」と王氏は当時を振り返る。王氏は社長にその旨を報告し、もともとエンジニアでもあったことから、顧客の求めるソフトウェアの開発をさせてほしいと申し入れたそうだ。

縦に伸びる黒い金属製のレールに、カメラが取り付けられている。被写体のすぐ上に置いてあるルーペ状の装置が検査部にあたる
縦に伸びる黒い金属製のレールに、カメラが取り付けられている。被写体のすぐ上に置いてあるルーペ状の装置が検査部にあたる



しかし上司は、「リスクが高すぎる、これまで沢山の会社が同じことに取り組んで失敗しているのだから、無理に決まっている」と、色よい返事はくれなかった。また、家族を台北に置いたまま、台湾南部担当の営業として働くのにも無理があるように思え、王氏は思い切って会社を辞めることにした。

家族の居る台北にオフィスを構え、ソフトウェアの開発に思考錯誤しつつ、誰に習うこともなくまったく1人で始めた会社が、現在はエンジニア7人、営業2人、経理担当やアシスタントを4人抱えるData System Imaging社というベンチャー企業の前身であった。

「営業2人といっても、そのうちの1人は私ですけどね」と王氏は豪快に笑い、今ではエンジニアとしての仕事よりも営業の仕事の方がおもしろいと、こっそり耳打ちしてくれた。

14名と聞いていた従業員数だが、これでは13名ではないか。詳しく聞いてみると、王氏の奥さんがいわゆるスーパーバイザーとして、経理や事務処理を担当している4人をコントロールする立場で会社の業務に携わっているとのこと。

「小さい頃から“会社を設立して成功するんだ!”という、ぼんやりとした夢は持っていました」という。だが、「前の会社で私の主張したソフトウェアの開発をさせてくれていたら……、あのまま会社に残っていたんじゃないかと思うんですよ」と、正直なところも話してくれた。「これも神さまからの啓示だったのかもしれないですね」と語る王氏は、奥さんともどもキリスト教信者で、日曜日はどんなに仕事が忙しくても教会に顔を出すのだという。

人を大切にする、そして勇気が経営の基本
台湾には終身雇用制度という観念がまったくないため、どこの会社でも“せっかく教育したエンジニアが、数年ですぐ辞めてしまう”のが、経営者にとって悩みのタネ。

これに対処するべく、DSIではストックオプション制を採用している。研究開発をするエンジニアなど「どうしても失いたくない人材」を、経営パートナーとして迎え入れるというシステムだ。こういった制度は、台湾企業では多く用いられているそうだ。

実際にICパッケージを検品している処理工程。水平に置いたレール上でICパッケージを動かしながら、順に処理を行なっていく
実際にICパッケージを検品している処理工程。水平に置いたレール上でICパッケージを動かしながら、順に処理を行なっていく



さらに今年は、マレーシア、インドネシアのバリ島と2回も社員全員を連れて社員旅行に行くなど、社員サービスも忘れてはいない。

「経営の基本は2つあって、まずは人。いつも頑張って仕事をしてくれる部下達を粗末にしては、どんなビジネスも上手くいきません」と強調する王氏。

「そしてもう1つは“勇気”です。失敗するかもしれないから、リスクがあるからと諦めていては駄目なのです」と、王氏の経営理念を尋ねるまでもなく聞かされた感じである。

これからの企業戦略については、「台湾のIC市場は今、年100パーセントといっても過言ではない成長を遂げています。これからもこの分野でどんどん事業を広げていきたいですし、日本市場への参入も難しいとは知ってはいますが、チャレンジして行きたいと考えています」と語ってくれた。来月からは更に2人の女性エンジニアを迎えることが決まっており、DSIはどんどん大きくなっていくようだ。

台湾のビヨン・ボルグ?
最後にDSIの中国語名“柏格”について聞いてみると、「ビヨン・ボルグというテニスプレーヤーを知っていますか? あの人の名前から取ったのです」との答え。週末は仕事のことはキッパリと忘れ、5歳になる息子さんを連れてテニスコートで汗を流すという王氏は、唯一の趣味がテニスだという。

高校生の頃には市の代表選手にもなったそうで、“チャンピオン”と書かれたトロフィーが自宅の棚にピカピカ輝いていた。「今はこうして短髪ですが、当時は髪を長くしていました。ヘアバンドをして長髪をなびかせてテニスをプレーする私の姿を見て、友人達がみな“ボルグ”って呼んだものなんですよ」とニコニコと語る台湾版ボルグの胸には、まだまだ大きな台湾ドリームが詰まっているかのようだった。

(取材/文 田中維佳)


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