このページの本文へ

リキッドオーディオ・ジャパン、東証マザーズ上場記念パーティーを開催--SPEEDやモー娘。も登場

2000年02月01日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

音楽コンテンツのデジタル配信システムを開発・提供する(株)リキッドオーディオ・ジャパンは31日、東京都内のホテルにて、“マザーズ上場記念パーティー”を開催した。

同社は'99年12月22日、東京証券取引所に新設されたベンチャー企業向け株式市場のマザーズにおいて、第1号の上場企業として株式を公開。今回のパーティーはその上場を記念するとともに、音楽業界のキーパーソンが多数出席したことで、同社の強力なコネクションをアピールする結果となった。

音楽配信とCD市場はバッティングしない

パーティーに先立って開催された企業概要説明会において、同社代表取締役社長の大神田正文氏は、「6900億円と言われる音楽市場のうち、900億円がレンタル。“音楽だけが欲しい”というリスナーは、レンタルに行っていると思う」と、現在の音楽シーンを解説。

その上で、同社が提供する音楽配信について、「レンタルの市場とはバッティングするが、パッケージ(CD)とバッティングするとは思わない」と指摘。同社が音楽レーベル各社と協調体制を取っていくことを示唆した。

リキッドオーディオ・ジャパンの代表取締役社長を務める大神田正文氏
リキッドオーディオ・ジャパンの代表取締役社長を務める大神田正文氏



同社で取締役営業本部長を務める小長井千晶氏は、プロモーションの一環として、音楽ダウンロードを利用してもらいたいと説明。「プロモーションの市場ができれば、音楽市場がさらに大きくなる」という見通しを語った。

また、「海外では、ダウンロードされた楽曲のほうが、パッケージ(CD)の売上も大きい」という調査結果を披露し、音楽ダウンロードによるプロモーションによって、CDの発売と同時にチャート1位を獲得することも可能だという戦略を提案した。

取締役営業本部長の小長井千晶氏、「リキッドオーディオはもっとも多くのコーデックに対応しているほか、川上から川下まで一貫して提供することが可能」
取締役営業本部長の小長井千晶氏、「リキッドオーディオはもっとも多くのコーデックに対応しているほか、川上から川下まで一貫して提供することが可能」



当面の営業展開としては、「コンビニにキオスク端末を導入して、そのライセンス料が収入となる」(大神田氏)としている。また、「(CD購買層の中心となる)中高生はPC・インターネットやクレジットカード決済に馴染みがない。その部分で、キオスク端末などで収益をあげていく」(小長井氏)としながらも、「リキッドではユーザーに対する直接の販売は行なわない」(同)と語り、あくまでライセンス料による収入が中心であることを明らかにした。

マザーズ上場で話題となっている高株価について、大神田氏は「マザーズ1号として、高い株価がついたことは、非常に嬉しく思っている」と語るに留まった。また、売上高などについても、「2月に半期決算を発表するので、ここでは差し控えたい」とし、具体的な数字は明らかにされなかった。

SPEEDにモー娘。から、小室哲哉につんくまで--音楽業界との固い結束を強烈アピール

リキッドオーディオ・ジャパンには伊藤忠商事やNTTデータなど大手企業が出資するほか、エイベックスなどの有力レーベルから受注を果たすなど、音楽業界内外からの注目度も大きい。今回の上場記念パーティーは、同社が持つコネクションを、広くアピールする目的が大きかったようだ。

パーティーには、米リキッドオーティオ社の上級副社長で同社非常勤取締役のロバート・フリン(Robert Flynn)氏が出席。フリン氏は、「リキッドオーティオにおけるビジョンの一つは、グローバルなネットワークを築くこと」と前置きした上で、「日本の音楽産業は世界で第2位。その日本における音楽配信は、米国よりも素早く進むと思っている」と語り、同社の今後に対する期待感を表明した。

ステージ上にて花束を贈呈された、米リキッドオーティオ社のロバート・フリン氏
ステージ上にて花束を贈呈された、米リキッドオーティオ社のロバート・フリン氏



“音楽製作者としての立場”でスピーチを行なった小室哲哉は、「20年間音楽業界で働いてきて、今回は3回目の大きな衝撃。1回目がアナログレコード、2回目がCD、そして3回目がインターネットです」と語り、音楽業界の関係者もインターネット配信に大きな期待を抱いていることを明らかにした。

また、「価値ある原盤を作るということで、我々は自分がアーティストだと改めて思い出すことができる」と語り、製作者としてのスタンスをアピール。その上で、「ハイテク技術は人を気持ちよくするもの(音楽)を伝えてくれる」と述べ、音楽配信に対する期待感を表明した。

小室哲哉がパーティーでスピーチするのは珍しい光景。シンセの開発に関わっていたこともあり、「素晴らしい技術でリスナーに楽曲を届けるのはいいこと。技術の発展は大好き」とも
小室哲哉がパーティーでスピーチするのは珍しい光景。シンセの開発に関わっていたこともあり、「素晴らしい技術でリスナーに楽曲を届けるのはいいこと。技術の発展は大好き」とも



最近はアーティストとしてだけでなく、モーニング娘。のプロデュースでも名を馳せているつんくは、「一番大事なのは、作った曲がどうやってリスナーに届くか」だと指摘。

さらに、「リスナーに届く速度がどんどん速くなるので、我々もどんどん新しい曲を作らないと取り残されてしまう」と語り、デジタル配信時代における音楽業界のあり方を示唆した。また、「リスナーと製作者の距離が近くなっていいと思う」とも述べ、音楽配信への期待を見せた。

音楽配信を“通信システム”と呼んでいたつんく、「通信システムの向上に、できる限りの応援をしていきたい」
音楽配信を“通信システム”と呼んでいたつんく、「通信システムの向上に、できる限りの応援をしていきたい」



つんくらがスピーチをする後ろには、SPEEDにモーニング娘。という人気グループをはじめ、鈴木あみに浜崎あゆみという今をときめく人気アイドルがズラリと勢ぞろい。レコード会社や大手プロダクションなど、音楽業界がリキッドオーティオの音楽配信システムに大きな期待を抱いていることが見て取れた。

小室哲哉の後ろにおとなしく並んでいたモーニング娘。だが、この後のミニライブではスパーク!
小室哲哉の後ろにおとなしく並んでいたモーニング娘。だが、この後のミニライブではスパーク!



また、パーティーのステージには藤原紀香やラモス瑠偉も登場し、出席者に花束を贈呈。来賓には、同社上場時の幹事証券会社であった日興證券(株)の竹田取締役副社長や、大手レコード会社東芝EMI(株)の斎藤正明代表取締役社長、エイベックス(株)の依田巽代表取締役社長が次々と登壇し、同社の持つ強力なコネクションが披露された形だ。

他の列席者とともに、シャンパンを開けた藤原紀香。登場時には会場からどよめきも
他の列席者とともに、シャンパンを開けた藤原紀香。登場時には会場からどよめきも



祝辞を述べる、東芝EMI(株)の斎藤正明代表取締役社長
祝辞を述べる、東芝EMI(株)の斎藤正明代表取締役社長



豪華ゲストの登場に加え、スピーチの後にはミニライブも開催されるなど、同社の上場記念パーティーは、この不景気には珍しいほどの盛況振りを見せた。

つんくを横に、真剣な表情を見せる大神田社長。後ろには島袋寛子(SPEED)と浜崎あゆみの姿が。若干31歳の大神田氏は、マザーズ上場時の記者会見で見せたおとなしいヘアスタイルとメガネ姿から大変身し、ツンツンヘアーで登場した
つんくを横に、真剣な表情を見せる大神田社長。後ろには島袋寛子(SPEED)と浜崎あゆみの姿が。若干31歳の大神田氏は、マザーズ上場時の記者会見で見せたおとなしいヘアスタイルとメガネ姿から大変身し、ツンツンヘアーで登場した



マザーズ上場と高株価で話題を呼んでいた同社だが、ネットバブルとも揶揄されている現状において、ある意味バブルの名に恥じない大掛かりなパーティーを開催できたことには、同社に対する音楽業界の期待感が込められているとも言える。このパーティーが日本のネットベンチャーにとって伝説となるのか、それとも時代の徒花として記憶されてしまうのか。

いずれにしても、出席者の中から聞こえてきた「リキッドなんとかって会社は、結局何をやってるの?」という声を払拭する意味では、今回のパーティーは成功だったのかもしれない。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン