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ソニー、ハワード・ストリンガー氏らの会長就任会見を開催――「最初にやるべきことはエレクトロニクスの復活」


2005年6月23日

ソニー(株)は23日、東京・虎ノ門のホテルオークラ東京にプレス関係者を集め、前日の22日に行なわれた第88回定期株主総会の承認を受けて、今年3月に発表されていた“新経営体制”への移行を完了したことを発表した。

フォトセッションで親しげに肩を寄せていた、ハワード・ストリンガー会長と中鉢良治社長
フォトセッションで親しげに方を寄せていた、ハワード・ストリンガー会長(左)と中鉢良治社長

会場には、新たに代表執行役会長兼CEO(最高経営責任者)に着任したハワード・ストリンガー(Howard Stringer)氏、代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに着任した中鉢良治(ちゅうばちりょうじ)氏が出席。同時に代表執行役副社長兼ホームエレクトロニクスネットワークカンパニーNCプレジデントに着任した井原勝美氏はスケジュールが合わず出席できなかった。

“サー・ハワード・ストリンガー”
ストリンガー氏は2000年に英国王室から勲章ナイト章を授与され、“サー・ハワード・ストリンガー”と紹介された。ストリンガー氏は最近、同社のHD対応リアプロジェクションTVを入手したそうで、「大変気に入っている。いろんな人に見せて回っている。自分自身がセールスマンのようだ」と絶賛した

ストリンガー氏はまず、「(自分が最高責任者になって)最初にやるべきことはエレクトロニクスの復活。そのためのビジネスレビュー(各事業の精査)を夏の終わりまでに完了し、9月に新しい経営プランを発表する。株主に対して価値を上げるためには、(リソースを)集中することが必要。コスト削減も重要だが成長することが、さらに大事なこと」と発言。これは同氏が、ソニーの米国法人で映画事業を担当した際に、徹底的なコストカットで手腕を発揮し、『スパイダーマン』のヒットで建て直しを図った過去の実績から、今後のソニーの運営においても、“まずコストカットありき”の方針を打ち出すのではないか、という観測を払拭しようとしたものと見られる。

ストリンガー氏は続けて、「ソニーの各部門がお互いのチカラを結集して組織的な力を発揮することが(現在の局面の打開に)必要。そのために、1000人もの責任者を集めて意思を結集し、事業間の壁を取り払うことを行なっている。今後は事業の焦点を絞って、開発、設計、マーケティング支援を行なっていく。そのための具体的なメッセージを今年後半に行なうつもりだ」と述べ、技術者が自分の得意分野にこもってしまう“サイロ状態”を壊してコミュニケーションを積極的に図り、交流の中から次なるヒット商品を生み出す土壌を作るという経営指針を説明した。

エレクトロニクスを軸にソニーの復興を誓う、中鉢氏
エレクトロニクスを軸にソニーの復興を誓う、中鉢氏

続いて中鉢氏が、「3月の発表以来、社員にも何度も言っていることだが、“ソニーの復活はエレクトロニクスの復活なくしてありえない”。今は嵐の中の船出という心境で、CE(家電)機器のコモディティー化、“フォーカスアタック”(従来はソニーが得意としていた製品・分野に他社が集中的に手がけてくる状態)、価格競争の激化など、逆風も多い」と同社が厳しい局面に立たされていることを示した。さらに、前会長の出井氏が2004年4月に打ち出し、実施してきた改革プラン“TR60(トランスフォーメーション60)”について、「“競争戦略”(コスト削減による価格競争力の向上)に意識が集中して、成長戦略(勝負するカテゴリーを選択して、リソースを集中投入して活路を見出す)には重点が置かれなかった」と評し、「今後はTR60を進めながらも時代に即した戦略を進めていきたい」と述べた。

具体的には、“商品力”“技術力”“オペレーション力”の3つの強化/マネージメントをモットーとし、“一貫性のキープ”“集中したこと(分野)への集中”“対話・コミュニケーションを通じて(一丸となって)取り組む”ことが、エレクトロニクスの復権に欠かせないキーワードであることを示した。

両氏の発言に共通するのは“エレクトロニクスの復活”と“コミュニケーションの徹底”。今回同席できなかった井原氏の担当する“TV事業”を核として(TV本体だけでなく、TVに接続するゲーム機やAV機器、視聴するコンテンツなどを含む)、そのTVを構成する電子部品を開発・製造する中鉢氏の“エレクトロニクス事業”が緊密な連携を取りながら、ソニーの新たな“強み”を模索していく姿勢をストリンガー氏は繰り返し発言していたのが印象的だった。


両氏の発言の後のQ&Aでは、株主総会後ということもあり、厳しい質問が次々に浴びせられた。具体的な数値目標に関する質問については、9月の発表(“経営方針説明会”が行なわれるとみられる)までは「今の時点では約束できない」とのみ答えた。

9月までにまとめるという計画について、「現在のビジネスから撤退するものが複数あるのか? 判断基準を教えてほしい」という突っ込んだ質問に対して、(経営コンサルティングにおける)“ラズベリージャムの法則”を挙げながら、「これ(集中/撤退する事業の選択)については、いろいろな仲間の知識や知恵を借りなければならない。ソニーはこれほど大きな技術や製品を抱えているので、プライオリティーを決めていく必要がある。エレクトロニクスですべての水平線を目指すことはできない(大きすぎるパンにジャムを広げると、薄くなってしまう)」と慎重に回答した。さらに別の記者から、「具体的にどこに集中するのか?」と重ねて質問されると、ストリンガー氏は「米国で雇用削減をやったときにも、私一人で決断したのではなく、多くの幹部と話し合いの上で行なった。今、ソニーは破綻したわけでも、何十億ドルもの損失を出したわけでもない。株主により高い価値を生み出すことを目指して進んでいる」と述べ、中鉢氏にマイクを預けた。その中鉢氏は「集中領域としては、“TV”、次世代DVDを含む“ビデオ(AV機器)”、“ウォークマン(携帯AV機器)”が既存領域では重点目標と考えている。もちろん、今後モバイルとITの融合もあり、新たな領域も視野に入れている。撤退領域については、過去に(社内で)話したことはないが、R&Dの中でいくつかの領域を定めて検討している。何をやる/やらないについては、今後(9月に)明確にしていく」と答えた。

いくつか答えにくい質問も飛び出したものの、最初の挨拶とは変わってQ&Aではストリンガー氏の“本音”が見え隠れする場面も数多く見られた。特に「私は独裁的な経営者ではない。中鉢さんや各事業の責任者と話し合いながら、素晴らしい会社にしていきたい」と述べたのが印象的で、この会見を通じて社内にもコミュニケーションの重要性を徹底したい考えを強調していたと思われる。

(編集部 佐久間康仁)


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