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Kissは国民的一眼レフ、単一機種で年内45%のシェアを目指す――EOS Kiss Digital X発表会から

2006年08月24日 20時06分更新

文● 編集部 小林久

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キヤノンから発表された『EOS Kiss Digital X』。レンズ交換式一眼レフデジタルカメラで現在トップクラスのシェアを誇る、キヤノンが放つエントリー向け機種だ。キヤノンマーケティングジャパン(株)の専務取締役・芦澤光二(あしざわ こうじ)氏は「9月から12月の3ヵ月の累計で、45%の国内シェア獲得を目指す。これは異例の数字だが、できると思っている」と話す(現在のシェアに関しては非公表)。家電メーカーの参入や、老舗メーカーの個性的な製品で、活性化しつつある国内の一眼レフ市場。果たしてそのポジションをさらに強固なものにできるのだろうか? 同氏のプレゼンをまとめた。

芦澤氏
発表会場で強気のシェア目標を披露したキヤノンマーケティングの芦澤氏(写真左)。同氏は歌手の美空ひばり、作家の司馬遼太郎、自動車のカローラといったビッグネームを挙げながら、Kissをそれに匹敵するブランドに育て上げたいと話した

100万台市場構築のために「交流戦はウェルカム」だ

この夏、これまで一眼レフを開発してこなかったソニー(株)や松下電器産業(株)が同市場に参入した。これらニューカマーの登場に対して、芦澤氏は“Welcome 交流戦”と表現する。「野球もセリーグだけではつまらない、パリーグも入って観客動員を増やさないといけない」「ソニーやパナソニックの参入で、一眼レフ市場が再び100万台の大台に乗るのが前倒しになるのではないか」。

一眼レフの市場は1981年に125万台を売り、頂点を迎えた。デジタル一眼レフの登場により、驚異的なV字回復を果たしつつあるが、「いまのところ66万台」(芦澤氏)とかつての販売台数には届いていない。さまざまなメーカーが参入することで競争が激化しても、市場全体が盛り上がることに意味がある。国内外でトップシェアを誇っているキヤノンの自信もほのめかす発言だ。

EOS Kiss Digital Xは、1993年に初代のEOS Kissが発売されて以来、10世代目のEOS Kissとなる。芦澤氏は「EOS Kissが、おじさん・セミプロ・高価格という一眼レフカメラのイメージを変えた」と話すが、実際EOS Kissの購入層は30~40代が7割で、女性率も非常に高いという。用途として最も多いのは「家族の記念写真」を撮ること。「当時高価だった写真に写った子供のころの自分を見ると、親の愛情を改めて意識する。当時の写真はモノクロだったけれど、今はカラーで美しく、鮮明に思い出を残せる時代になったのです」(芦澤氏)

Kissの半数はコンパクトからのステップアップ
年齢層は30~40代と低く、女性率も高い

また、EOS Kiss Digitalの購入層は約半数がデジタルコンパクトカメラからステップアップした層だ。続く32%はアナログの一眼レフカメラを利用していて、デジタルに切り替えていこうという層になる。芦澤氏は「Kiss Digitalはデジタル一眼の拡大に貢献した」とコメントするとともに、「10世代目は国民的な一眼レフを目指す」と意欲を述べる。

デジタルカメラ全体の市場が成熟化する一方で、デジタル一眼レフの市場は新規参入企業の登場や、既存カメラメーカーの個性的な製品投入で大きな活気を見せている。そんな中、EOS Kiss Digital Xは、撮像素子の画素数向上など、きわめてオーソドックスな進化を遂げた。扱いやすく、小型軽量なボディーなど従来製品から受け継いだ、十分な魅力は持つが、一方で派手さはあまりなく、価格設定も競合に対して決して安価とは言えない。もしEOS Kiss Digital Xが市場で受け入れられるとしたら、それは初代EOS Kiss以来、キヤノンが取り組んできた“Kiss”のブランドに「果たして信頼感があるか?」という問いに、消費者が「イエス」と答えたことになるのではないかと筆者は考える。

キヤノンは1987年に“EOS”ブランドを立ち上げたことで、それまで25%程度だった一眼レフ市場におけるシェアを33%とし、1993年の“Kiss”でそれを40%台に向上させた。そして、2003年の“Kiss Digital”発売以降は全体の50%を占めるほど成長している。ソニー、ペンタックス、ニコン、若干層は異なるが松下が新製品を発表し、これにキヤノンが加わったことで、オリンパス以外の主要メーカーの製品が出そろったことになる。果たして、EOS Kiss Digital Xの登場で、Kissは国民的な一眼レフとなるのか? 各社の動向などにも注目しながら、年末商戦を見守っていきたい。

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