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著作権シンポで、「著作者自身が著作権侵害を防ぐ努力を」

1998年02月05日 00時00分更新

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 (社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は“ネットワーカーのための著作権シンポジウム”を開催した。前半は著作権の概要について、後半は実際に起こっている問題について弁護士らを交ぜたパネルディスカッションが行なわれた。

どう解釈するかが課題の改正著作権法

 前半は、インプレスグループ代表の塚本慶一郎氏が、著作権の種類や対象など概略の説明を行なった。特に同グループはインターネットや音楽に深い関わりがあり、ゲームソフトでの楽曲の使用料やネットワーク上での音楽の著作権の処理などについて、各団体で協議中であると語った。

 また改正され、1月1日より施行された著作権法についても語った。インターネットでの著作者の権利についても記述されており、「文面の解釈でいろいろな人が悩んでいる」そうだが、その一部を紹介すると、

 「九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
 イ 公衆の用に共されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置……(以下略)」

 解釈以前に解読するのが難しいという気がするが、“自動公衆送信”はインターネット上の送受信などを指し、“公衆の用に共されている……自動公衆送信装置”はサーバーのことらしい。インターネットにアクセスすることなどを“送信可能化”と言い、著作者は勝手に送信可能化されない権利をもつということだが、「極端に解釈すると、リンク先が著作物だったら、それも送信可能化、ということになるのか、僕もよくわからないが、ホームページを運営している者として(著作権法の解釈には)注目している」と語った。

迫られる現場での対応

 後半はパソコン通信NIFTY SERVEの会員の情報交換の場“フォーラム”の運営担当者(SYSOP:シスオペ)3人が実際の現場で起こった問題などについて、弁護士ら3人と討論を行なった。

 



 「モデムフォーラムでの発言の履歴が会員のホームページにそっくり転載された。発言者の名前やIDは消してあって、技術的なQ&Aだけ掲載していた。個人的にはありがたかったが、NIFTYの規約に準じて掲載をやめてもらった」(清成啓次氏)

 「自動車レースのフォーラムで、新聞社のクリッピングニュースをコピーして会議室にのせた会員がいた。速報だったのでその気持ちはわかるが、削除してもらった」(山川順治氏)

 「在宅ワーキングフォーラムで、個人の売り込みの会議室の内容が名簿業者に流れたと思われる」(金井祐子氏)

 昨年はNIFTYの会議室で中傷的な文章を掲載された女性が、書き込んだ男性会員とSYSOP、ニフティを相手に訴訟を起こしている。人権がらみの問題が日常的に起こる可能性のあるフォーラムで、シスオペの人々の判断がつきづらい問題が多そうだった。

 専門家のアドバイスとしては、フォーラムの発言の履歴のコピー、クリッピングサービスのいずれも、NIFTYや新聞社の規約に基づいて判断するべきという。NIFTYでは入手した情報の複製などを会員規約で禁じている。新聞社の場合は、そのサービスが加入者との契約によって成り立つ有料サービスなのか、Webで無料で閲覧できるものなのか、その他さまざまな要因により著作権等の侵害にあたるかどうかはケースバイケース。新聞社ではネット上で転載、引用、リンクを張る場合などは連絡してほしいとユーザーに“お願い”しているという。

 また著作権は権利を持っている本人が主張し確保するものであることから、「フリーウェアの作者は、絶対お金を払って欲しいとか権利を守りたいと思ったら、お金を払わなきゃ一定期間しか使えない仕組みにするとか、使用許諾契約を読まなきゃソフトを使えない仕組みにするとか、そういうプログラムを作るべきなんです」(明治大学法学部 夏井高人教授)。当然メーカーは不正使用できない製品を作るべきとのことだ。もちろん不正コピーをされないためにも、メーカーが試用版の配布やユーザーサポートを徹底することは重要だと思われる。

 そのほかにも、

 「企業の電子メールを管理者がチェックするのは許されるか」(山川氏)

 「法律で禁じているのは紙の信“書”の開封で、電子メールはそれにあたらない。会社の場合は、プライベートなメールを認めているのかどうかと、管理者が中身をチェックするという約束があったら違法ではない」(近藤剛史弁護士)

 「個人のホームページで、ディズニーランドで家族とミッキーが写っている写真を載せるのは違法か」(山川氏)

 「形式的には著作権違法だが……」(ACCS専務理事 久保田裕氏)

 「ミッキーの写真ばかり載せるというのは問題だが、家族の写真ならいいのではないかと思う」(夏井氏)

 「実際にディズニーに裁判で差し止めを要求されたら従うということになるかもしれませんね」(近藤氏)。

 NIFTYではインターネットがらみで今後いろいろ問題が起こりそうだというSYSOPの声もあり、個人で手軽にホームページを作れるだけに、著作権を侵す/侵される危険性は誰にでもありそうだ。(報道局 若名麻里)

問い合せ先:TEL.03-5976-5178

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