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【岡部通信 特約】日本の市内電話とほぼ同額の米日国際電話を発見(下)


1999年1月27日

[前回のあらすじ]

 1月23日、岡部一明氏は“日本まで1分9セント”のテレフォンカードを発見した。アメリカでは国際電話も安いが市内通話も安い。アメリカの大都市では、市内にいくら電話しても、月に11ドル強の固定料金を払うだけ。かたや日本では通常月に1550円(東京03地域の場合)の基本料金に加え、3分10円の市内通話料が必要である。

 日本の通信白書では、アメリカの都市の代表として、前述の制度の例外であるニューヨークを取り上げている。ニューヨークでは、市内通話1本ごとに約11セントの固定料金が掛かるが、どんなに長く電話しても11セントに変わりはない。ところが郵政省の通信白書では、東京が3分10円、ニューヨークが3分11セントとして、日本が世界で一番安いと結論づけている。

競争がアメリカの市内通話を無料にした

 日本でも東京電話などの地域電話会社が参入しはじめ、割安の市内電話料金を提供し始めました。NTTも月額200円を支払うことで市内通話が5分10円になる割引サービスを導入しています。結構なことです。大いに競争してください。

 アメリカでも、市内電話が無料になったのは競争があったからです。ただし、この競争は'84年のAT&T分割・長距離電話自由化や、'94年の市内電話自由化に始まったものではなく、はるか昔、今世紀初頭にすでにあった競争の時代の話です。

 アメリカで電話が早期に普及し料金も安くなったのは、かつての独占企業AT&Tが“ユニバーサル・サービス”の努力をしたからだという見方が一般にあります。しかし実際にはそうではありません。1894年から1921年にかけての地域電話競争時代に、各社が加入者獲得のために加入料や基本料金を無料にするという安値競争をしました。これが市内通話無料の原型であり、また国民各層に急速に電話を普及させた要因だったという分析が最近出てきています(例えばMilton Muellerによる“Universal Service in Telephone History”、Telecommunications Policy誌 '93年7月)。

 当時、いろんな電話会社が、勝手に自分の電話線網を市内に張り巡らしました。これを“電話産業の混乱”や“投資の重複、無駄”と見る論調がこれまで一般的でした。しかしそれは、政府に働きかけて強引に単一独占を成就したAT&Tによる独占の論理だったかも知れません。一見投資の重複・無駄に見えても、そうした激しい競争は、長期的には効率的に安価な電話サービスを“広くあまねく”普及させます。国家事業としての電話事業が推し進められた他の多くの国では、電話網の普及がなかなか進みませんでした。競争の不在が通信インフラづくりにも悪影響を及ぼすとして、第三世界のインフラづくりなどでも今、新しい手法が導入されようとしています。

中距離料金、公衆電話料金もアメリカが安い

 「しかし、中距離通話や公衆電話はアメリカの方が高いのでは」ということもよく言われるので、最後にこれについて触れておきます。

 専門的になりますが、中距離通話とはこの場合、地域電話会社が提供する(自宅電話からの)従量制通話料金、いわゆるLATA内トール・コール料金です。確かにこれは、以前は地域電話会社の独占で、アメリカの地域電話会社はこの辺を割高にすることで収入源にしていたという側面があります。しかし、'96年に通信法が改正され競争が導入されたことで、この分野も急速に値下げされました。

 というより、アラスカやハワイも含めたアメリカ全体で長距離料金が1分10セント程度になってしまったのですから、割高なLATA内トール・コール料金などブッ飛んでしまったのです。例えばPacific Bell社では、日中における114キロ以遠圏の中距離料金が、最初の1分が17セント、以後1分ごとに14セントとなっています。これでは、長距離電話会社の“いつでもどこでも1分10セント”プログラムに加入した方が安くなります。NTTの最長距離(100キロ以遠)の昼間料金は1分30円ですから、アメリカ側の方が安いことには変わりありません。

 公衆電話料金についても同じことが言えます。やはり日本より安く、また電話カードの普及で通常の(コイン利用の)公衆電話料金が意味をなさなくなりつつあります。注意すべきは公衆電話の市内通話もアメリカでは通常、固定制料金であること。例えばパシフィックベルでは1回35セントで市内かけ放題です。

日米電話料金比較

 念のため、Pacific Bell社の中距離料金とNTTの長距離料金の比較、および公衆電話料金の比較を下記に掲げておきます。



NTT料金(自宅電話、3分間)
 

8:00-19:00


19:00-23:00


23:00-8:00


市内


10円


10円
 


隣接-20km


20円


20円
 


20-30km


40円


30円
 


30-60km


50円


30円
 


60-100km


80円


60円


40円


100km-


90円


80円


60円


(週末祭日の昼間料金は19:00-23:00の料金と同じ)


 



Pacific Bell社中距離料金(自宅電話、3分間)
 

8:00-17:00


17:00-23:00


23:00-8:00


市内(0-19km)


0セント


0セント


0セント


19-32km


25セント


20セント


15セント


32-64km


36セント


29セント


22セント


64-112km


40セント


32セント


24セント


112km-


42セント


34セント


25セント


(週末祭日の昼間料金は23:00-8:00の料金と同じ)


 



NTT公衆電話料金(3分間)
 

8:00-19:00


19:00-23:00


23:00-8:00


市内


30円


30円


30円


隣接-20km


50円


50円


40円


20-30km


70円


70円


50円


30-40km


80円


80円


70円


40-60km


110円


110円


90円


60-80km


150円


110円


100円


80-100km


170円


110円


100円


100-160km


200円


120円


110円


160km-


220円


150円


130円


 



Pacific Bell社公衆電話料金(3分間)
 

8:00-17:00


17:00-23:00


23:00-8:00


市内(0-19km)


35セント


35セント


35セント


19-32km


55セント


45セント


40セント


32-64km


70セント


60セント


50セント


64-112km


75セント


65セント


55セント


112km-


90セント


70セント


70セント


(週末祭日の昼間料金は23:00-8:00の料金と同じ)

    岡部一明氏プロフィール米サンフランシスコ在住のフリーライター。'50年栃木県生まれ。'79年カリフォルニア大学自然資源保全課卒業。各種の市民団体勤務を経て、独立。著書に『パソコン市民ネットワーク』(技術と人間)、『インターネット市民革命』(御茶の水書房)『社会が育てる市民運動 - アメリカのNPO制度』(社会新報ブックレット)、『多民族社会の到来』(お茶の水書房)、『日系アメリカ人:強制収容から戦後補償へ』(岩波ブックレット)などがある。【関連記事】 【岡部通信特約】日本の市内電話とほぼ同額の米日国際電話を発見(上)

(在米ライター 岡部一明)


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