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NTTサテライト、個人向け衛星インターネットサービス“Mega Wave”を終了――新たに衛星マルチキャスト試験配信サービスを開始へ

2000年05月18日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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エヌ・ティ・ティ サテライトコミュニケーションズ(株)は18日、衛星回線を使った個人向けインターネット接続サービス“Mega Wave”を、9月30日で終了すると発表した。その上で新たに個人向けに、コンテンツのマルチキャスト配信サービス“Mega Wave Select(仮称)”を、6月1日に試験サービスとして無料で開始する。同時にこのサービスに参加するコンテンツプロバイダーの募集を開始した。

NTTサテライトコミュニケーションズ、代表取締役社長の鮫島秀一氏
NTTサテライトコミュニケーションズ、代表取締役社長の鮫島秀一氏



Mega Waveサービス終了

Mega Waveは同社が'99年1月に開始(正式サービスは'99年6月開始)した、通信衛星回線(30Mbps)をユーザーが共有する形で利用する、個人向けインターネット接続サービス。日本デジタル放送サービス(株)が提供している、衛星テレビ放送“SKY PerfecTV!”のアンテナとチューナーを利用し、パソコンにアダプターを接続して利用する。(利用者から見て)上りには通常のISPと契約した地上回線を使い、下りに衛星回線を使うことで、“500k~1Mbpsの通信速度が得られる”というふれこみだった。

しかし、NTTサテライト側の、「Mega Waveの利用形態は、高速で短時間であるから、利用者に対して時間分割式に帯域を提供できると考えていた」(同社の鮫島社長)という予想は崩れた。「一部のユーザーがときには1Mbps以上の帯域を長時間占有し、サービスに不均衡が生じた」、この結果「平日の昼間は1Mbpsのスピードが得られるが、テレホーダイ時間になるとISDNよりも遅くなるような状態」になってしまったという。

このため同社は、インターネットへの接続回線を増強したり、ユーザーあたりの利用可能な帯域を制限するなどの対策を講じたが、「平均的なユーザーが満足できるサービスを実現するためには、現在の月額3980円の10倍程度の料金を取らないと採算が合わない」という結論に達し、サービスの終了を決めたという。

Mega Waveの新規会員募集は18日17時で終了し、現在の会員には、Mega Waveへの接続機器の購入額のうち、利用期間に応じた割合で返金を行なうという。なお、現在の会員数は約6000人で、当初計画の10分の1程度にとどまっていた。なお、企業向けに提供されている『Mega Wave Pro』については継続してサービスされる。

Mega Wave Select

Mega Wave Selectは、NTTサテライトがMega Waveサービスで使用していた衛星回線を利用して行なうコンテンツ配信サービス。6月1日から、試験的にサービスが開始される。Mega Wave Selectはマルチキャストと呼ばれる技術で、あるコンテンツを同時に多数の端末に対して配信する。また、コンテンツあたり500kbpsの帯域が補償されており、ストリーミングによる映像の配信などにも適しているという。

代表取締役副社長の小山公貴氏
代表取締役副社長の小山公貴氏



現時点で配信が予定されているコンテンツには、(株)Jストリームのインターネットライブ番組、(株)ポニーキャニオンの最新ビデオクリップや映画情報、(株)ミュージック・シーオー・ジェーピーの音楽は威信サービス、株式会社ベクターのフリーソフト、シェアウェアダウンロードサービス、(株)サテライトニュースの24時間ニュース番組など、37社38コンテンツがあがっている。

同社としては、リアルタイムに視聴するタイプのストリーミングコンテンツよりも、データをパソコンにダウンロードして、好きなときに視聴するコンテンツが中心になるとみている。また、同様にプログラムのダウンロードサービスの需要も見込んでいる。これらの“番組”はコンテンツ事業者の配信スケジュールに従ってマルチキャスト配信されるわけだが、利用者はMega Wave Selectのウェブページを経由して、“番組を予約”することもできるので、配信される時間にあわせて待っている必要はない。

Mega Wave Selectのコンテンツ例。ポニーキャニオンが配信するビデオクリップサービス。中央に500kbps相当でエンコードされたビデオクリップが再生されている
Mega Wave Selectのコンテンツ例。ポニーキャニオンが配信するビデオクリップサービス。中央に500kbps相当でエンコードされたビデオクリップが再生されている



Mega Wave Selectの配信にはマイクロソフト(株)のWindows Media Technologie(WMT)が利用される。受信するためには、SKY PerfecTV!用アンテナ、SKY PerfecTV!受信機、衛星マルチキャスト配信サービス用受信機(Mega Waveのものが利用可能)、およびWindowsパソコンが必要。またユーザーからのデータはインターネット経由で送られるため、別途ISPとの契約が必要となる。

配信技術としてWMTのみがサポートされているが、これは「配信のテクノロジーでは、RealやQuickTimeも検討したが、サービスを行なった場合の配信サービスや技術的問題から、WMTを選択した」(同社インターネット営業部の田中慶彦部長)としている。ただし、将来に渡ってWMTのみという訳ではなく、「Macintoshについてもサポートしたいと考えており、QuickTimeについては技術的問題が解消すれば対応する」方針であるとした。
正式なサービス開始時期は「冬のボーナス時期には間に合わせたい」(小山副社長)という。料金については「詳細は検討中だが、基本接続料プラスコンテンツごとの追加料金という形を考えている」と述べた。目標として「1年で会員数10万人、数年で100万人、3年間で黒字化を目指す」とした。

高速性が売り物だった衛星インターネットサービスだが、IP接続サービスやCATV、ADSLなど、インターネット接続サービスが多様化・高速化する中で、わずか1年で終了表明となった。状況を考えれば当然の判断ではあるが、当初の見込みの甘さを指摘されてもしかたがない。新たに開始するサービスでは、しっかりしたビジネスモデルが必要だろう。

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